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追補5: 商業作品の分量や章立て(お寄せいただいた事例1)

 前回、ネット小説以外の書籍について分量(文字数)を、全体、章、節の単位で挙げてみました。これは既に挙げた「小説家になろう」の作品群と傾向を比較するためです。

 ですが掲載できたのは私が調べた8作品のみで、サンプル数が足りているとは到底言えません。


 しかし幸運にも活動報告に多くの事例をお寄せいただいたので、それらを紹介します。なお事例を紹介してくださったのは、下記の方々です(掲載の許可はいただいております)。


秋月 忍様 (ユーザID: 411932)

片平 久様 (ユーザID: 678843)

デリリウム・トレメンス様 (ユーザID: 447293)

結城藍人様 (ユーザID: 404778)


 この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 合わせて16例も紹介いただいたので、掲載を二回に分けたいと思います。今回は小説、次回はエッセイやノンフィクションの事例です。



※以下の事例の項番は前回からの続きとしています。

※以下の表題では著作者の名を敬称略とさせていただきます。




1.小説の事例



例9:「妻はくノ一」1巻 風野真知雄 「角川文庫」書き下ろし 2008年


ご紹介: 秋月 忍様


総ページ数=約254ページ

推定総文字数=約15万文字

ページ単位の文字数=38×17=646文字(平均600字程度)

話数=序章+5章(以下では章=話とする)

一話のページ数=序章が12ページ、1~5話の平均が約47.4ページ

一話の推定文字数=序章が7200文字、1~5話の平均が約2万8千文字


※推定総文字数、一話の推定文字数は平均600字程度と仮定して計算


ご紹介様コメント:

 時代小説界のライトノベルと思っている。一話の組み立ては38ページから58ページとまちまち。


掲載担当コメント:

 シリーズ全体は書き下ろしで全10巻、さらに新章として「蛇之巻」全3巻です。蛇之巻では渡米までしますし、ライトノベルという表現は適切だと思います。



例10:「太陽の黄金の林檎」 レイ・ブラッドベリ 「ハヤカワ文庫」翻訳 1978年(新装版あり)

※原書、各種雑誌、書き下ろし 1945年~1953年


ご紹介: 秋月 忍様


総ページ数=約266ページ

推定総文字数=約22万文字

ページ単位の文字数=42×20=840文字

話数=22話

一話のページ数=約12.1ページ(平均)

一話の推定文字数=約1万文字(平均)


ご紹介様コメント:

 文字数は、キリのいいところの大まかなカウント。


掲載担当コメント:

 一話の最小が5ページ、最大が22ページなので枚数は相当のバラつきがあります。

 元々掲載された雑誌ですが「The Magazine of Fantasy and Science Fiction」「Detective Book Magazine」「Planet Stories」「The Reporter」「The New Yorker」などだそうです。

 ファンタジー、SF、ミステリ(推理)、ニュース雑誌など、多方面の掲載は売れっ子ぶりを示しているのでしょう。

 分量のバラつきは、雑誌の種類や依頼された分量がまちまちだったからでしょうか。



例11:「阪急電車」全1巻 有川浩 「papyrus」2007年(幻冬舎)


ご紹介: 片平 久様


総ページ数=本文全249ページ

推定総文字数=約14万文字

ページ単位の文字数=40×16=640文字(ページ平均550~600字前後)

話数=16話

一話のページ数=14.8ページ(平均) 中央値15ページ

一話の推定文字数=約8000~9000文字(平均)


ご紹介様コメント:

 ちょっと変則的な連作短編。16話構成、往復8駅分のストーリー。


掲載担当コメント:

 「papyrus」は隔月刊の文芸雑誌です。そのため前回挙げた月刊のパターンに近いのかもしれません。



例12:「県庁おもてなし課」全1巻 有川浩 「高知新聞」2009年9月~


ご紹介: 片平 久様


推定総文字数=約26万~27万文字

ページ単位の文字数=40×18=720文字(平均600字程度と思われる)

話数=序章+6章(以下では章=話とする)

一話のページ数=71.2ページ(平均) 中央値74ページ

一話の推定文字数=約4万4千文字(平均)


ご紹介様コメント:

 単行本化は2011年。新聞連載期間が2009年9月1日から2010年5月4日まで、休載なしだと全245日。一日あたりの文字数は、1000~1100文字。


掲載担当コメント:

 新聞連載は一回一千文字程度と耳にしたことがあるので、おそらく標準的な量だと思われます。

 一回の文字数の縛りはキツイと思いますが、何回分を一話(一章)にするかは作家の自由にできそうですね。それが一話(一章)が長い理由かもしれません。



例13:「理由」全1巻(朝日文庫版) 宮部みゆき 「朝日新聞」1996年9月~


ご紹介: 片平 久様


推定総文字数=約40万文字

ページ単位の文字数=42×19=798文字(平均680~700字程度と思われる)

話数=21話

一話のページ数=28.8ページ(平均) 中央値29ページ

一話の推定文字数=約1万8千文字(平均)


ご紹介様コメント:

 単行本化は1998年。単行本化にあたり加筆あり。直木賞作品。

 新聞連載期間は1996年9月2日から1997年9月20日まで、休載なしだと全383日。一日あたりの文字数は、1000~1100文字。

 一話のページ数は13ページから55ページと偏差が激しい。


掲載担当コメント:

 新聞連載の場合、一回ごとを節と考えても良さそうです。その場合、節の長さは約千文字という縛りがありますが、章(話)の長さは書き下ろしのように自由にできそうです。



例14:「女たちのジハード」(集英社文庫版) 篠田節子 「小説すばる」1994年7月号~1996年8月号


ご紹介: 片平 久様


推定総文字数=約28万文字

ページ単位の文字数=41×18=738文字(平均590~600字前後)

話数=13話

一話のページ数=39.1ページ(平均) 中央値36ページ

一話の推定文字数=約1万8千文字~2万文字(平均)


ご紹介様コメント:

 単行本化は1997年。直木賞受賞作品。

 14ヶ月間の月刊誌連載、1号あたりは20,000字前後だと思われる。

 一話のページ数は31ページから63ページと偏差あり。13話中、10話は30ページ台。


掲載担当コメント:

 やはり月刊以上だと掲載一回=一話となるのでしょうね。どこかで前後編が一回入ったとしたら辻褄が合いますし。

 つまり一話あたりの最大63ページは連載2回分なのでしょう。残り12話のうち10話が30ページ台ということは、あまりバラつきがないのかもしれません。



例15:「吉原手引草」(幻冬舎単行本版) 松井今朝子 「星星峡」2005年5月号~2006年10月号


ご紹介: 片平 久様


推定総文字数=約15万文字

ページ単位の文字数=43×18=774文字(平均600字前後)

話数=17話

一話のページ数=14.6ページ(平均) 中央値14ページ

一話の推定文字数=は8000字弱程度(平均)


ご紹介様コメント:

 直木賞受賞作品。

 18ヶ月間の月刊誌掲載。掲載誌がPR誌なので、1号あたりの分量は少ない。

 ページ単位の文字数、作風の都合、詰まり気味。

 一話のページ数は11ページから27ページと多少差はあるが、17話中12話が13~15ページの範囲。


掲載担当コメント:

 同じ月刊でもPR誌というのは新たな事例として、非常に興味深く感じました。掲載間隔が同じでも、掲載誌の方向性や雑誌の総ページ数による相違がありそうです。




2.小説の事例のまとめ


 多くの場合、一話あたりの推定文字数の平均は1万文字から2万文字程度になりました。あくまで平均で個々の話では長短がありますが、平均値としてはそのくらいと考えて良いでしょう。

 このことから、


・商業小説の一話(短編集の短編、長編の一章)の長さは、1万文字から2万文字程度が平均値の可能性が高い。

・ただし短いものには5千文字を下回るものもあるし、長いものには4万文字を超えるものもある。


が言えると思います。

 つまり分量が一定の必要はありません。とはいえ前回と合わせた15例ですと、一話の平均文字数が1万~2万文字が12例、8千文字台が2例、4万4千文字が1例です。

 そのため「商業小説の一話に1万文字から2万文字程度が多い」という仮説には一定の裏付けがあると思います。


 ただし書き下ろしや掲載誌の刊行間隔など、発表形態の違いによる影響が大きいようです。

 発表形態による差は、大まかに以下だと言えそうです。


・書き下ろしは、一話ごとの長さにバラつきが大きい。

・月刊あるいは隔月や季刊など刊行間隔が長いものは、一回の掲載が一話となる場合が多い。また誌面の割り当ての関係だと思うが、一話ごとの長さが一定になりやすい。

・新聞連載は一回あたり約1千文字と殆ど固定。一話ごとの長さにバラつきが大きい。何回分を一話にするかは著作者の裁量範囲だからと思われる。


 一方「小説家になろう」ですが、媒体(=システム)による文字数や回数の制限はあまりありません。そのため「小説家になろう」で公開する際は、作品の方向性やジャンルの特長を元に一回や全体の分量を考えた方が良さそうです。


 冒頭に記した通り、次回はエッセイやノンフィクションの事例です。



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