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追補4: 「章節」家になろう!?

 出オチっぽいサブタイトル、失礼しました。今回ですが統計としてはサンプルが少なすぎることもあり、少し軽いノリで行きます。


 予告では「構成について」としていますが、元々が文字数関係を主題にしているので、今回もそちら寄りになります。ただし今回は「小説家になろう」から外、つまり一般書籍に目を向けてみようと思います。

 対象とする作品ですが、今まで触れた内容と対比したいので短編を中心にします。大長編から掌編まで一括りに論ずるのは、少々無理があると思いますし……。




1.章や節と長さ(文字数)


 あくまで個人的な意見ですが、小説の構成では区切り(場面)の意識が大切だと思います。そもそも最終的に発表する作品はともかく、創作時点では区切らないと構成を考えるのも難しいのではないでしょうか。


 そして区切り方ですが。

 各場面で何を意図しているのか、伝えたいのか。そういった意味的な纏まりを意識し、章、節、段落などとして分けることになると思います。


 「小説家になろう」の連載小説は「章」を設定できます。ならば一話が「節」、その中には段落を設けるだけで良いかもしれません。

 ですが実際には今まで見てきたように、一話の中に何らかの区切りを設ける作者様もいらっしゃいます。その場合、章、節、項、段落と表現しても良いでしょう。


 ところで書籍となっている作品は、どのくらいで章や節の区切りがあるのでしょう。まずは一般論として著名な作品を例にしてみます。

 なお「小説家になろう」で多い作品は娯楽系ですので、事例は大衆小説に該当するものから選びました。



※以下の表題では著作者の名を敬称略とさせていただきます。



例1:「鬼平犯科帳」1 池波正太郎 初出「オール讀物」(月刊誌)、1967年~1968年


 基本的には一話完結型ですが、前の話で起きた出来事は次の話に反映され登場人物の変遷も描かれます。ですから「小説家になろう」の長期連載小説に近い形式だと言えそうです。


 文庫本だと全24巻+番外編ですが、その第1巻には合計8話が収録されています。

 これが本編が284ページ、ページあたり43文字×18行=774文字なので、もし隙間無く埋まっていれば約22万文字ですが、それは当然ありません。

 仮にですがページごとの文字数を、


70%(約542文字)とした場合 → 約15万文字

60%(約464文字)とした場合 → 約13万文字


となります。

 つまり一話ごとは、平均で1万9千文字から1万6千文字となります。


 小説家になろうでは、平均の読了時間を1分間で500文字、としていますので、一話の読了時間は38分から33分です。あまり細かいところを気にせず読む人もいるでしょうから、一話を20分以下かもしれません。


 「鬼平犯科帳」第1巻の各話は、それぞれが6または7までの節番号を振られた纏まりに分かれています。そして一話の平均は6.3節なので、一話が1万9千文字なら一つの節は3000文字程度、同じく一話が1万6千文字なら一つの節は2600文字程度になります。


 そうすると「小説家になろう」の連載小説に当て嵌めるなら、


「鬼平犯科帳」の一話=「小説家になろう」の連載小説の一章

「鬼平犯科帳」の一節=「小説家になろう」の連載小説の一話


と考えるべきかもしれません。

 あるいは「鬼平犯科帳」の一話を「小説家になろう」の一つの連載小説とし、章を設けないで、


「鬼平犯科帳」の一話=「小説家になろう」の連載小説

「鬼平犯科帳」の一節=「小説家になろう」の連載小説の一話


も良さそうです。つまり月刊誌に掲載された単位を一つの作品とみなす形です。


 しかし月刊誌の掲載ごとなら、各話ごとを「小説家になろう」の短編小説と考えても良いでしょう。その場合、こうなります。


「鬼平犯科帳」の一話=「小説家になろう」の短編小説

「鬼平犯科帳」の一節=「小説家になろう」の短編小説の中の一節(区切り記号で分けられた部分)


 なお下記に「鬼平犯科帳」第1巻の文字数関連について纏めておきます。


総ページ数=284ページ(目次や後書きなど省いたもの)

推定総文字数=約14万文字(ページの最大文字数の65%が埋まっている場合)

話数=8話

一話の文字数=約1万8千文字(平均値)

一話の節数=6.3(平均値)




2.書き下ろしなら?


 対比のため、一つだけ長編書き下ろしの例を挙げます。



例2:「銀河英雄伝説」1 田中芳樹 トクマ・ノベルズ 1982年発行


 これも説明は不要だと思いますが、全10巻書き下ろしと外伝4巻(外伝はSFアドベンチャーが初出)です。

 このうち本編の全10巻は後書きで「212万文字」と明記されているので、一巻あたり21万2千文字として良いでしょう。


 「銀河英雄伝説」第1巻は、序章と続く10の章による構成です。そして序章以外は一章ごとに最小で2、最大で9の節がありました。平均すると一章あたり5.0節です。

 全体が240ページ、序章が13ページなので、序章は1万2千文字弱となります。偶然ですが切り良く10章は20万文字、一章が2万文字という推測になりました。

 したがって「銀河英雄伝説」の一節は平均4000文字程度だと思われます。


 今回も、同じように纏めてみます(括弧内の付記で同一内容のものは省略)。


推定総文字数=約20万文字(序章を除く)

話数=10話

一話の文字数=約2万文字

一話の節数=5.0


 この場合、読者は一度にどれだけ読むでしょうか。

 一冊を一度に読み切る人もいるでしょう。それなりの速読派か、休日などに一気に読むか、ですね。

 一日に一章のみ、という人もいるかもしれません。つまり、およそ十日で読み切るわけです。一度に何章かで数日、という人もいると思います。

 しかし「一度に一節のみ」という人はどの程度いるか、私は疑問に感じます。要するに、序章を除いても50回に分けて読む読書方法です。


 「小説家になろう」に掲載されている「1分間で500文字読める」という指標は、あくまで目安です。読書に慣れた人なら、倍や三倍の速度で読めるという話も耳にします(私の体感的にもそう思います)。


 序章ぬきの「銀河英雄伝説」第1巻並み、20万文字の読了時間は、


500文字/分 =6時間40分/冊

1000文字/分=3時間20分/冊

1500文字/分=2時間13分/冊


となります。

 小説を沢山読む人だと「1000文字/分」や「1500文字/分」も充分にありそうです。しかし、一般に「電子媒体上の文章は目が滑りやすい」と言われているので、そこは別途考える必要がありそうです。




3.月刊誌発の短編小説集(1980年代)


 話を短編小説に戻します。

 「小説家になろう」の長めの短編小説との比較として、「鬼平犯科帳」のような元々が月刊誌掲載の作品、それも短編集を探してみます。

 昔の作品ばかりですが、「ネット小説と対比にはネット時代前の作品が」と考えたので、敢えて選択しました。



例3:「たそがれ清兵衛」 藤沢周平 「小説新潮」1983年~1988年


 表題の短編は映画にもなっていますし、そちらでご存知の方も多いかと思います。

 なお期間が数年に渡っているのは、その間に発表した8つの短編を収録したからで、誌面の掲載は短編ごとです。


総ページ数=315ページ

推定総文字数=約15万文字

話数=8話

一話の文字数=約1万9千文字

一話の節数=5.3


 こちらは節が若干少なめですが、比較的「鬼平犯科帳」第1巻と近いように思います。



例4:「人斬り剣奥義」 津本陽 「小説新潮」1982年~1989年


 「下天は夢か」の津本陽先生です。こちらも同様に該当期間の短編を集めたものです。


話数=10話

総ページ数=267ページ

推定総文字数=約12万文字

一話の文字数=約1万2千文字

一話の節数=なし(空白区切りあり)


 こちらの特徴は、節番号が振られていないところですね。場面を分かつものとして、一行だけ空行が入るのみです。



例5:「剣法奥義」 五味康祐 「オール讀物」1981年(6編)、「別冊週刊朝日」1980年(1編)


 「柳生武芸帳」の五味康祐先生です。


話数=7話

総ページ数=268ページ

推定総文字数=約10万文字

一話の文字数=約1万5千文字

一話の節数=7.1


 この作品では、各話の冒頭で丸々一ページを使って剣法の由縁を紹介する体裁を取っています。ですので、それをプロローグと考えるなら、一話の節数は一つ増えます。



 上記を纏めると、一話は1万2千字~1万9千字、一冊に7話~10話となりました。

 ただ、少し古いのと時代小説ばかりも何かと思うので、他も調べてみます。




4.月刊誌発の短編小説集(2000年前後)


 表題どおり対象を2000年ごろとします。また、ジャンルをミステリにしてみました。



例6:「ミステリなふたり」 太田忠司 「週刊小説」1997年(1編)、「Pontoon」1998年~2000年(8編)、書き下ろし1編


 2015年に連続テレビドラマ化されていますので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。


話数=10話

総ページ数=254ページ

推定総文字数=約15万文字(二段組みなので最大値の七割とする)

一話の文字数=約1万5千文字

一話の節数=5.5


 ちなみに「Pontoon」掲載分は最初一つが20ページ、他は全て24ページです。枚数が厳密に決まっていたのか、それとも太田忠司先生が几帳面なのか……。



例7:「ベネチアングラスの謎」 太田忠司 「小説NON」1998年~2000年(7編)、書き下ろし1編


話数=8話

総ページ数=256ページ

推定総文字数=約15万文字(二段組みなので最大値の七割とする)

一話の文字数=約1万9千文字

一話の節数=5.8


 こちらも「小説NON」掲載分は一つだけ30ページ、他は全て28ページです(やっぱり太田忠司先生は几帳面なのかも?)。



例8:「新・世界の七不思議」 鯨統一郎 「ミステリーズ!」(季刊→隔月刊)2003年~2004年(7編)


 ご存知かもしれませんが「邪馬台国はどこですか?」の続編です。


話数=7話

総ページ数=307ページ

推定総文字数=約14万文字

一話の文字数=約1万9千文字

一話の節数=なし


 一話のページ数は最小で35、最大で56とバラつきが大きいです。

 他に特徴的だったのは、節の代わりとなる空白も無いことでした。場所が動かず会話だけで進むので、物理的な場面転換が無いからかもしれません。



 前項までに挙げたものも含め総括すると、時代やジャンルが変わっても分量や話数、節の傾向にはあまり差がなさそうです。




5.まとめ


 事例が少ないですが、以下が言えるかもしれません。


・時代小説やミステリの月刊連載の場合、一回あたりの分量はあまり変わらず、1万2千字~1万9千字。

・節を明示している場合、一話の中は平均5節~7節。こちらもあまり変わらない。

・ただし8作品中、2作品は一話の中で節を明示していない。


 しかし、以下の問題があります。


・調査対象が少ない。

・ジャンルが偏っている。

・個人の蔵書から選んだので、特定の傾向かもしれない。


 とはいえ適当に本棚から抜き出した作品で、意図的な選択はしていません。そのため一般的な傾向により、分量や節の数が似通ってくる要因はあると思います。


 分量に関しては、単純に「出版社の依頼する枚数は大抵同程度だから」かもしれません。ただ、そうだとしても「出版社が短編として適切な分量はこのくらいと判断している」可能性もあります。

 また節の数が一定の範囲に収まるのは「読み手が理解しやすい分け方をしているから」かもしれません。


 それと単なる空想ですが……。

 もし「書籍の短編の主流が1万~2万字なら、それらを読み慣れた人は自然と同じくらいの分量を目指すのでは?」ということです。つまり「小説家になろう」で長めの短編を書く方は紙の書籍を多く読んだ方かも、という想像です。

 長年親しんだ感覚で自然とそうなる……仮説としては魅力があるのですが、証明できるだけの根拠はありません。



 あまりスッキリしない纏めですが、無理矢理に結論付けるのも危険ですので疑問は疑問のままにしておきます。


2017年4月26日追記:

 追補5および追補6の追加に伴い、末尾を「次回とします」から「次回以降とします」に変更。


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