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《そして世界は終わる》
ぼやけている。
まるでスケッチブックに描いた風景画のように、現実味の無い無造作な光景。
言い換えるならば、夢というものだろうか。
「なんだこいつは……ひぃ!?誰か!誰か助け……ぎゃあぁぁぁぁッ!!」
人々が次々と汚染者に変貌していき、汚染者となった者達が、平常な人々を襲っている。
そうして、人々は居なくなり、世界は限りなく滅亡に近付いていた。
そんな中、一人の人物に焦点が合う。
戦火の広がる最中、無防備にも膝を付き、涙を流しながら人の亡骸を抱えている。
「……感染体ェェ……あんなもの、私は認めない……絶対に、絶対に……」
その人物は言う。
心からの憎しみと憤りを込め、狂気に満ちた顔を上げながら。
「────消し尽くしてやる」
まるで、未来を暗示したかのような光景。
イノヴェミックが起こった世界では、人々はこんなにも恐ろしい顔をするようになるのだろうか。
誰が見ているかも分からない、精神の光景。
それは誰の記憶に留まることもなく、再び虚無の彼方へと堕ちていくのだった。