恩人と黒幕
レギアンズに救われた私、朝霧未結は、ユーミリアと名乗る少女の話から一連の状況を知りました。
第一に、今から少し前に、次元唯一の生き残りを決める為に、沢山の世界が戦争を繰り広げており、その惨劇が統合戦争と呼ばれていること。第二に、ユーミリアさんはその真っ只中に位置する世界の、英雌者と呼ばれる凄い人であること。
そして……私達の世界が、統合戦争の爪跡として生まれた、フィーゼと呼ばれる力の塊によって滅ぼされたことを。
突然、こんなことを話されて簡単に納得出来るでしょうか……いえ、私は出来ませんでした。
「何で……?何で、私達がこんな目に遭わないといけないの!?誰も悪いことなんてしていないのに!!返してよ!!お母さんを、お父さんを……お姉ちゃんを……返してよぉ……ッ!!」
対して、ユーミリアさんは返す言葉が見つからなかったと言いました。
そんな私とユーミリアさんのやり取りを見ていられなくなったのでしょうか……彼女と共に、私を助けに来てくれたレギアンズのメンバーである言己が、冷徹にこう言い放ったのです。
「滅却した世界は二度と元には戻りません」
何故、その中でただ一人生き残ってしまったのかは、ユーミリアさんでも言己さんも分からないと言っていました。
ただ、それは現実味に満ちた残酷な言葉でした。
そこで私はようやく現実を目の当たりにしてしまった気がして……泣きました。
喉が枯れるまで喚きました。
涙が枯れるまで泣きました。
そして、三日三晩は目を覚まさなかったとのことです。
その後も、まるで抜け殻のようになっていた私に、ユーミリアさんはこんな提案をしてきました。
「強くなりたくないかい?理不尽な力に抗い、弱者の枠組みを脱却し、絶対的な強者と戦えるだけの力を……君自身の手で、手に入れたくはないかい?」
聞けば、ユーミリアさんにとって次元のいざこざは、直接的な関わりはないとのことでした。それにも関わらず、事情を知った彼女は英雌者として、レギアンズと共に戦う道を選んだらしいです。
彼女は、間違いなく英雄でした。
私が強く焦がれ憧れた、本物の英雌者でした。
だからこそ、私は一筋の不安を抱きながらも、彼女の発する強い光に縋るように、顔を挙げたのです。
「私でも……強くなれるんですか?」
「それは、君次第だよ。ただ、次元の規律に立ち向かいたいと言うのならば……僕が手を貸そう」
そこから、私の新たな戦いが始まりました。
レギアンズの一員として、次元の危機から世界を守る守護者として、戦うことを誓ったのです。
そして、いつの日か────私達の世界を滅ぼした黒幕を倒す為に。