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《始まりはここから》
目を覚ました時、彼の世界は激変していた。
見覚えのない身体。
見覚えのない光景。
そして。
“身に覚えのある力”。
それだけで、彼は確信した。「結局、何も変わらないんだ」、と。
呆然としていた彼は町に出るものの、その風貌の違いから卑劣な迫害を受けた。だが、彼は人々を恨むことはしなかったらしい。
それが贖罪になるのなら。
それが運命だというのなら。
彼は甘んじて、人々の憤慨の心を受け止めるつもりだった……彼女と、出会うまでは。
「大丈夫?」
彼女は優しげな言葉と共に、その華奢な手を差し出して、彼に微笑んでくれた。
それこそ、最初の出会い。
いずれ、革新という名の滅亡に向かう世界で交わされた、一番最初の邂逅だった。
「初めて見る顔だよね?君、名前は?私の名前は────」
彼女の屈託の無い笑顔に突き動かされるように、彼はその手を握り返し、こんな言葉を返す。
「俺に名前は無い……だって俺は────支配者の欠片なんだから」