意志の動向
さて、“やるべきことが無くなった”。
実際、イムニティにはもう殆ど動ける要員は残っていない。今も支部内にはフェイズ2が虫のように蠢いている。
それに比べて、彼等の元には例の『薬』もいる筈だ。
確かに、偉吹の言う通り、今の状況を打破するには彼等の方がやりやすいのかもしれない。
レティーシャは、偉吹の横たわるベッドの近くで静かに立ち尽くしていた。
すると、入り口の外からノックの音が響き渡る。
「……どうぞ?」
中へ入ってきたのは、辻隆を先頭にしたイムニティの構成員の面々だ。
彼らは何やら強い目つきで、こちらを見ている。
「皆さん……如何致しましたか?」
彼らは言う。
革新という名の終焉が、目の前にまで迫ってきた世界で。
何かを諦める様子など毛頭もない顔で。
「支部長代理、汚染者にならずに、つーか、なれなかった奴らで相談したんすけど……聞いてくれるっす?」
今更、どうしようもない気持ちは、皆同じだ。
だが、こんな自分を、まだ支部長代理と呼んでくれるのならば……応えよう。
残されたイムニティの意志を、再びその身に宿す為に。
「……えぇ、お伺いしましょう」
────世界革新まで、残りニ日────