《出来ること》
霞が掛かった光景の中で、あの少女の断片的な言葉が飛び交う。
「私、決めたんだ。だから────見ていて欲しい」
彼女はそう言って、俺の前に立っていた。
その後ろ姿は、今まで見たことがない不思議な光で包まれていたような気がする。
だからこそ、直ぐには理解出来なかったのかもしれない。
彼女は紛れもなく、自分よりも遥かに強い光を発していたから。
「────そんなの、絶対に間違っているッ!!」
何故そこまで必死になる?
何故自分を壊してまで戦うことが出来る?
彼女を取り巻く環境や、彼女の現状は分かったつもりでいた。
だが、やはり分からない。
彼女は、一体何の為に、誰の為に戦えているのだろうか。彼女の行動の原動力は何処から生まれているのだろうか。
そんな彼女が、自分に言うのだ。
今思えば、気持ちのすれ違いは、この時から起こっていたのかもしれない。
「────君が、変えるんだよ……!」
俺の手で変える?
イマイチ要領が得られない言葉だった。
しかし。
もし俺が、自分の意志で、自分の心を変えることが出来るのならば────この歪んだ世界をより良い世界に、変えることが出来るのだろうか。