《交わした約束》
記憶か、もしくは夢か。
そんなことを考えるのも、段々と馬鹿らしくなってきた。
何故ならこの光景は……あまりに鮮明だからだ。
広がる風景も、聞こえる音や声も、何もかも鮮明に現れ過ぎている。
だからこそ、断定せざるを得ない。
記憶か夢か、そんな曖昧な現象ではなく……自分が見ているこの世界は、間違いなく現実である、ということを。
「────迷っているの?」
声が聞こえる。
流れるような髪が風でなびき、温かく甘い香りが漂う。
それだけで例の少女がやって来たことを感じて、何となく安心感を抱いたものだ。
そうだ。
自分は、彼女のことを知っている。
間違いなく知っている人物だ。
それなのに……その顔だけがぼやけて見えない。
「大丈夫、私は君の味方だよ。例え誰が何と言おうと、私はずっと君の味方でいるから、だから……」
この会話も、知っている。
とても暖かかった。
孤独しか知らなかった自分にとって、彼女の言葉が、彼女の想いが、彼女の存在が、何もかもが温かくて、とても嬉しかった。
そして。
続けざまに、彼女はこう呟くのだ。
「────私のことも絶対に裏切らないで?」
裏切る?
誰が?誰を?
少なくとも自分はそんなことはしない。
万が一、彼女の意思に反することがあったとしたら、それは何よりも彼女の為に……。