キャットダンス
自分語りでもするように話した。
「たまにいるんだ。未練を残して……魂だけ無くしこの世に存在だけする猫……」
ため息を吐いた猫はゆっくり……ゆっくり……尻尾だけを動かし路地裏に入っていった。
その尻尾についていったら「お前……人か?」ともう1回言われた。
頷いた。私にニヤッとして大声で言った
「ホントか?人間か?そっか…そっか…ほんとに人間だった猫に会えた……ヤッター!!!」
と声を荒らげて言った。路地裏を抜けると人通りに出てトラ猫は『にゃー』と喉を鳴らした。
「お前、名前は?」
首を傾げた。
名前を思い出そうとすると頭が痛くなる……
「なら、見たまんまかもしれないが……『クロ』ってのはどうだ?」
すこし急ぎ足で来た猫が言った。
「とらさぁーん!待ってー」
トラと呼ばれていた。その猫は話し始めた……
「『クロ』俺は『トラ』……そして、こいつが」
「チビ!」
トラの声を遮って大声で言った
「俺は野良だが……こいつは、なんとか愛護団体っていうのが来て……」
チビと言う猫がちょっとだけ震えて言った
「とらさん、その事はもういいから……あ!今は夏川さんってところで預かってもらってるんだ!」
ぎこちない笑顔の白い子猫は私にむかって言った。
「そうか。で、トラ?はどこで生活してるんだ?」
愛想ないのは昔からだった。
笑わない私をいじめるやつなどいなかったし親もクラスメイトも先生も『笑え』と言う人はいなかった。
そのせいで学校を卒業しても笑うことは無かった……
兄が拾ってきた。猫によく似てる……
つまらないことを思い出してしまった
「路地裏やどっかの屋根かな」
と鼻を鳴らしてそう答えた。
答えた時にはもう夕暮れになっていた。
「冬だと……空が暮れるのが早いなぁ……」
当たり前のことを言ってみた。
また、路地裏に行った。尻尾が動いてこちらに来いと言われてるみたいだ。
「痛っ……」
トラにぶつかった。
「着いた……」
ここはトラと初めて会った所だ。
「お前にはお前の時間がある……人は人の時間が……猫には猫の時間が……だから、お前の時間はお前が掴み取れ!そしたら、お前は猫から人に戻れるだろう……」
そう言ったトラは『ニャー』と喉を鳴らしてまた路地裏に行った。
私も『ニャー』と喉を鳴らしながら帰ると雪が降っていた。
「ミー太、お前も帰ってたか……」
『ふぅ……』とため息を吐いて『ニャー』と喉を鳴らした