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第8話「依頼」

本日3話目です。

 1時間後、一行は宿屋の1室でテーブルを囲んでいた。


「これはなかなか豪勢ですねえ」


 ルブリスが周りを見回して言う。

 これだけの人数で囲めるテーブルがある部屋は中々ない。


「ここなら他に話は漏れないわ」


 イルリアが言い、皆の顔を見まわす。


「正式に依頼するわ。わたし達を手伝って」


「具体的には何をすればいいのですか?」





「その前に少し話を聞いてもらえる」


 ナーニャが話し出す。


「このバストークから北に少し行った丘に、ファルフォードという城があるのを知っている?」


「いいえ、存じ上げませんね」


「この城は今は廃城になっているが、元はファルフォード侯爵様の居城だった」


 ナーニャはイルリアの顔を見た。

 イルリアは何かを堪えるように目線を下に落とす。

 サラは労わるようにイルリアの膝に手を置いた。


「2年前、城で火事が起きた。城は焼け落ち、侯爵様とご家族もお亡くなりに」


 ナーニャは真剣な眼差しでルブリスとバルドを見る。


「火事は調理場の不手際による失火とされ、弟のギルバート公が臨時に侯爵様の後を継いだ」


「それが?」


 ルブリスの言葉にナーニャは強い口調で答えた。


「あれは失火ではない。ギルバード公が手勢を連れて城を襲い、火を放ったの」







「イルリアさまは侯爵のご息女といったところですか」


 ルブリスは少し面白そうな表情で尋ねる。

 バルドは腕を組み、目を閉じたまま聞いている。

 ナーニャがちらっとイルリアの顔を見てから頷いた。


「そうよ。私の正式な名前はイルリア=ド=ファルフォード。私は混乱の中、ナーニャとサラに守られて城を抜け出したの」


 イルリアは顔を上げ、ルブリスの目をまっすぐ見つめた。




「それは大変でしたね」


「叔父のギルバートの手で家族は私以外全員殺されたわ。父も、母も、幼い弟も」


 そう話すイルリアの表情は険しい。

 涙を堪えているのか、怒りに耐えているのか。


「私も表向きは死んだことになっています。叔父がそう発表したわ」


「あなたに生きていられると後を継げないからですか」


「そうよ。騎士団長だったナーニャの父が私とサラを逃がし、私を護るようナーニャに命じたの」





 侯爵の異母弟であったギルバートの裏切り。

 突然の襲撃を受けた侯爵一家は抵抗むなしく捕えられた。

 縛られて火を掛けられて無残に殺されたのだ。


 イルリアはその日偶然、サラと共にナーニャの家に行っていた。

 騎士団長だったナーニャの父は事態を悟り、すぐさま娘に命じた。

 イルリアを守り逃げるようにと。


 その後騎士団長は侯爵のもとへ向かい消息が途絶えた。

 おそらく侯爵を守り、戦って死んだのだろう。

 ナーニャは密かに母の実家にイルリアを連れて行った。

 それも父の指示だった。




「ナーニャの母の実家で私は身を隠していたわ。すると先日――」


 青い瞳の中で昏い怒りの炎が静かに燃え上がる。


「ギルバートが正式に父の後を継ぐと言う触れがでたの。私はそれをどうしても許せない」


「ギルバート公が侯爵位を継ぐのを阻止したいと?」


「そうよ。ギルバートが正式に爵位を継いでからそれを覆すのは容易ではないわ。だから――」


 イルリアはそこで深く息を吸った。


「その前に私が侯爵の正当な後継ぎであることを示さねばいけないの。なんとしても」

明日も2話か3話投稿予定です。

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