第7話「合格」
本日2話目です。
次は8時30頃の予定です。
「あなたには、恐怖心というものがないの?」
ナーニャがバルドに問う。
「……あれしきで死にはせん」
そっけなく言った後、少し考えて言葉を続けた。
「……まあまあだったな」
そう言う表情は険しくはなかった。
一応褒めているつもりらしい。
「偶然一本取ったからって、いい気にならないでよねっ!」
それまで黙っていたイルリアがバルドに憤然と言う。
ナーニャが負けた衝撃で茫然自失だったらしい。
「今のは手を抜いたからアレだったけど、ナーニャが本気なら負けないんだから!」
「……いい気になどなってない」
イルリアの食って掛からんばかりの勢い。
バルドは辟易した表情で肩をすくめた。
「……吸ってくる」
バルドは葉巻を吸うジェスチャーをして練習場から立ち去った。
「はあ、勝手なものですねえ」
今度はため息をつくルブリスにイルリアが嚙み付く。
「次はあなたが相手よ。ナーニャ、今度は本気だしていいからねっ!」
「ちょっと待ってください。私はレディーとはやり合わないとさっきも」
鼻息の荒いイルリアに、ルブリスが慌てて答える。
「イルリア、待って」
そんなイルリアをナーニャが止めた。
「なんでよ? ナーニャ、悔しくないの?」
ナーニャはそれに答えず、ルブリスに問いかけた。
「あなたもあの男と同じくらい強いの?」
「まあ、わたしならもう少し華麗にやりますがね」
「そう」
ルブリスの答えを聞いたナーニャはイルリアに向き直った。
「イルリア、聞いてほしい。さっきのわたしは本気だったの」
「嘘よ! だって……」
「いや、本気でやり合って負けた。正直、手も足も出なかったわ」
自分の負けを受け入れないイルリアに微笑んで言って聞かせる。
「あのバルドという男、本当に強い。それから考えればこのルブリスも恐らく手練れだわ」
「お褒めに預かり恐縮至極」
ナーニャの言葉にルブリスはうやうやしく礼をして見せた。
「試すまでもなく、合格でいいと思う。彼らに頼みましょう」
「嫌よ。わたしは認めないわ」
「イルリア。わたしの肩を持ってくれるのは嬉しい。でも目的を忘れないで」
そう言ってナーニャはイルリアの手を握った。
「あなたには大切な目的がある。その為には彼らが必要よ」
「そうですよ、イルリアさま。この方たちにお願いしましょうよ」
サラにも説得され、渋々イルリアは折れた。
「分かったわ」
イルリアはそっけなく言った。
だがまだ素直にはなれないらしい。
「細かいことを話すから、わたしたちの宿に来てちょうだい」
どうでしたか?
感想などお待ちしています。