第6話「本気」
あまり反応がないので題名及びあらすじを変えました(涙)
今日は休日なのであと2話投稿してみようと思います。
7時過ぎ、8時過ぎの予定です。
応援よろしくお願いします!
ナーニャもイルリア達と同じく実戦の経験はない。
だが長年鍛えてきた剣には自信があった。
実際、今までテストして来た冒険者など相手ではなかった。
そのプライドが深く傷つけられたのだ。
確かにバルドは強い。
それは認めよう。
だがこの男の剣は我流。
基礎も何もない、戦いの中で磨かれた剣。
いわば野生の強さといっていい。
ならば長年磨かれてきた騎士の技術。
そこに勝機があるだろう。
騎士の技術にあって野性にないもの。
その一つが『突き』の技術だ。
突きは繰り出す以上に受けることが難しい。
捌くにせよ避けるにせよ高い技術が必要となる。
まして盾も無いとなると、凌ぐのは至難の技だ。
それだけに刃挽きの試合用の剣でも当たると危険だ。
だから普段の試合では決して使わなかった。
だがこの場にはサラがいる。
治癒の呪文を使うことが出来る。
しかもこの男なら。
恐らくまともに食らう事ははあるまいと感じた。
だとしたら。
捌くなり避けるなりしたところに隙が生まれるはず。
そこを狙えばいい。
「いくぞ」
ナーニャは改めて剣を握る手に力を込める。
自分の呼吸と相手の呼吸。
相手が息を吸う瞬間を捕える。
目を見て少しずつ距離とタイミングを計る。
バルドの目には全く緊張が見えない。
あまりにも自然体だ。
それに対して自分は緊張している。
剣を握る手に滲む汗でそれが分かる。
改めてしっかりと握りなおす。
――いつまでそんな目をしていられるかしら。
今だ!
ノーモーションから本気の突きを繰り出す。
右足を鋭く前に踏み出すと同時に。
相手の身体の中心線を目掛け剣を突き出した。
幼い頃から何千回と練習してきた通りに。
今まで試合でこれほど本気で突いたことはない。
だがその動きは体が覚えている。
裂帛の気合いで剣を突き出したその瞬間。
捌くのか横に避けるのかと思った矢先。
バルドが前に踏み出して来るのが目に入った。
予想もしない動きに驚くがもう止められない。
思わず一瞬目を瞑り、再び開けた時。
バルドの剣が首筋に当てられていた。
バルドを貫いたかと思った己の剣はと見ると。
服を破り、脇腹に一筋の傷を付けていた。
前に踏み出すと同時に紙一重の動きで躱したらしい。
男の目に恐れは全く無かった。
ほんの僅かで串刺しになっていたというのに。
「……今のはなかなか良かったぞ」
バルドが珍しくニヤリと笑う。
わずかに開いた口から鋭い歯がのぞく。
八重歯というより犬歯、いや牙のように見えた。
「参った。完敗だ」
ナーニャは自ら敗北を認めた。
一か八かの奥の手を躱されたのだ、認める他ない。
「サラ、治療してあげて。怪我をしている」
「あ、は、はい」
息を詰めて試合を見ていたサラ。
ナーニャに名を呼ばれて慌ててバルドに向かう。
だがバルドはそれを制した。
「……いらん」
「で、でも、血が」
見ると脇腹の部分の服に血が滲んでいた。
「……ほっときゃ治る」
「この男の最大の取り柄は頑丈さですから、大丈夫ですよ」
ルブリスがさらっと酷いことを言った。
ブックマーク、感想、評価など頂けるとやる気がでます。
ちょっと心が折れそうです。
よろしくお願いします(切実