第3話「黒熊団」
本日3話目です。
よろしくお願いします!
イルリアの言葉にルブリスがうなずいた時、また客が入ってきた。
いかにも柄の悪そうな6人の男たちだ。
全員一目で冒険者だと分かるいでたちをしている。
そもそも冒険者というのは一般的に評判が悪い。
腕っ節にしか取り柄のない人間だと思われている。
危険な野獣や怪物を退治するために必要ではある。
だが同時にトラブルを引き起こす、いわば必要悪だ。
「おう、イルリア。募集見たぜえ。他所者限定とはつれねえじゃねえか」
先頭で入ってきた髭面の男が話しかけてきた。
2メートル近い、バルドをさらに上回る大男だ。
「ガストン、それはお前のような奴を近寄らせない為だ」
ナーニャが立ち上がり、大男に向かって言った。
「つれなくするなよナーニャ。子守りなんぞやめて俺の女になれよ」
ガストンがそう言うと周りの男たちが下品に笑う。
なかでも一番小さな男がテーブルまでやってきた。
ルブリスとバルドの顔をジロジロと眺める。
「ヒヒ、こいつらがその依頼を受けたって訳か。チンケな面だな」
かん高い声で言って笑い声を上げる。
「お頭より強い男がいる訳ないだろう。素直に俺たちに頼みな」
「キーキーうるさいわね。熊ともネズミとも組む気はないわ」
イルリアはその小男の顔をにらみつけて冷たく言い放つ。
「あはは、熊とネズミか。まさに言い得て妙ですね」
ルブリスが馬鹿にしたような表情で笑った。
なまじ顔がいいだけに余計辛辣に見える。
「てめえ、お頭が『黒熊』だと分かってそんな口きいてんのか?」
ルブリスの顔を見て小男が目を細める。
「聞いたことないですね。有名なんですか?」
「黒熊団といえばバストークで一番のギルドだ」
「へえ」
「そのリーダー、黒熊のガストンと言って知らねえ奴はこの街に居ねえ」
「なるほど。で、あなたは? 彼が黒熊だとしたらドブネズミか何かです?」
「テメエ、殺すぞ!」
小男はいきり立っていきなりナイフを取り出した。
それをルブリスに突きつける。
「俺はハリネズミのドッシュ、お頭の右腕だ。ナイフを使わせて俺の右に出る奴は居ねえ」
「これは失礼。ドブネズミじゃなくてハリネズミでしたか」
ナイフを目の前にしても全くひるんだ様子もない。
その様子にドッシュはさらにいきり立った。
「その憎たらしい面を見られねえようにしてやる!」
「ドッシュ、いい加減にしろ。そいつをしまえ」
そこへ黒熊のガストンが近づいてきて、ドッシュを諭す。
「ガキどもにからかわれて熱くなるな。しかしお前ら、いい度胸してるじゃねえか」
そう言ってガストンは座るバルドの肩に手を掛けた。
「お前ら、腕に自信があるなら俺のところへ来い。美味い飯食わせてやるぞ」