第20話「オークロードⅢ」
先にオークロードが動く。
ブウンッ!
両手で巨大な戦斧を横からフルスイングで払った。
それをバルドがバックステップで躱す。
当たるかどうかというギリギリの位置。
バルドの鼻先を戦斧がかすめる。
ザザッ
それに怯むことなくすかさず左へ回り込んだ。
「チィッ! コシャクナアッ」
避けられてオークロードが舌打ちする。
回り込んだバルドに対応しようと体をひねる。
そこへすかさずバルドが剣を振るう。
その剣がオークロードに傷を付けた。
だが深いものではない。
すぐさまバルドの方へ振り向き戦斧を高く掲げる。
「クラエ――БЖЙШИ!!」
呪文を詠唱すると同時に戦斧を地面に叩きつける。
それは地の炸裂の呪文だった。
ドオォォォォォン!
その瞬間、あたりの地面が爆発する。
轟音と共に土砂が吹き飛び衝撃破が襲った。
「きゃああっ!」
「サラ、イルリアっ!」
ナーニャが必死にイルリアとサラを盾でかばう。
傷ついたオーク達も一緒に巻き込まれる。
ルブリスとミレアはすかさずそのオークを盾にした。
バスッ!バスッ!
オークの身体に飛んで来た岩がぶつかり喰いこんでいく。
土煙がやむと――そこにバルドが立っていた。
爆発の中心にいたにもかかわらず。
うつむいて両腕を使い顔をガードしている。
全身傷を負って血みどろだ。
そのうつむいた格好のまま――バルドは笑っていた。
「……エサの分際でやるじゃねえか」
そう言って顔を上げた瞳は金色に輝いている。
牙のような犬歯を見せて笑うバルド。
それを見たオークロードがたじろぐ。
「コノバクハツヲウケテ タッテイルトハ。イヤ、ソレヨリ ソノメダ」
そう言ってゴクリと唾を飲み込む。
「オマエハ イッタイ ナニモノ――」
「……うおおおぉぉ!」
言葉が終わらぬうちにバルドが――跳んだ。
跳躍し、両手で剣をオークロードの脳天目掛けて振り下ろす。
オークロードは必死にそれを戦斧で受け止める。
ぐわぁきぃぃん
バルドの剣が掲げた戦斧に当たり派手な音を立てた。
その勢いでオークロードの巨体が押されてよろめく。
バルドの身体も反作用で後ろに飛ばされた。
どん!
バルドは着地すると突進し、そのまま体をぶつけた。
「グハアッ」
オークロードは一瞬の間の後、口から血を吐いた。
そのままよろよろと後ろに後ずさる。
その腹にはバルドの剣が深々と刺さっていた。
バルドが剣を一気に引き抜くと血が噴き出る。
オークロードは腹を押さえながらバルドを睨みつけた。
「クラッテヤルウウウ!」
雄叫びを上げ、戦斧を投げ捨ててバルドにつかみかかる。
大口を開けてバルドの首筋に嚙み付こうとする。
だがその前に。
バルドの剣がオークロードの首筋を貫いた。
その眼から急速に光が失われていく。
「БЖЙШИ……」
オークロードは微かに何かを呟いた。
そのまま巨体が前のめりにゆっくりと倒れる。
こうしてオークロードは絶命した。
その骸から黄色い光が立ち上り、吸い込まれていった。