第2話「イルリア」
さっそく2話目の投稿です。
1話を短く、読みやすく、展開を早くと思ってますがどうなりますか。
「いいわ、話はしてあげる。でも腕が悪ければ願い下げよ」
三人に説得されてイルリアは立ち止った。
振り向きバルドを睨む目にはまだ怒りの炎が燃えている。
「それと、それ。やめてもらえる。嫌いなの」
イルリアが厳しい口調で指さした。
その指の先にはバルドの持つ葉巻がある。
「……ふん」
バルドはつまらなさそうに葉巻を床に投げ捨てた。
それを足の裏で踏みつけて火を消す。
木の床が焦げる匂いがかすかに漂った。
「このテーブルに座って話をしましょう。ほら、バルドもここへ」
ルブリスが大げさな身振りで皆を座らせる。
この空気を少しでも和らげようというのだろう。
「何をお飲みになりますか? ミルクもあると思いますが」
「小娘だと思って馬鹿にしないで。ワインで結構よ」
「これは失礼しました」
今度はルブリスがイルリアに睨まれて首をすくめる。
バルド以外の人数分をバーテンダーに頼んで席に着いた。
「改めて紹介させてもらいます。これがバルド、礼儀知らずですが腕の立つ傭兵です」
「……バルドだ」
ルブリスがイルリア達にバルドを紹介する。
だがそのバルドはいかにも興味なさ気だ。
「バルド、こちらが依頼主のイルリアさんです」
「イルリアよ。で、こっちの娘がサラ。わたしの幼馴染みで同じ年の14歳ね」
「サラです。少しですが治癒と回復の魔法を使います」
イルリアの右に座ったポニーテールの少女が頭を下げた。
「回復魔法とは凄い。司祭さまなのですか?」
ルブリスが驚いて見せる。
この世界で治癒や回復の魔法を使える存在は貴重だ。
そもそもロクな薬もない。
重い怪我や病気は教会で祈ってもらうのが普通だ。
教会の司祭なら多少の治癒呪文が使える。
しかしそれには多額の喜捨が必要になる。
貧乏な者はおいそれと頼むことも出来ない。
だから教会に行くまでに手遅れになることも多い。
それがその場で(しかも無料で)頼めるのだ。
パーティーメンバーとして人気が高いのも当然だった。
「いいえ、そうではありません」
「それは良かった。では引く手あまたなのでは?」
「実戦は未経験ですし、仲間以外の依頼はお断りしていますので」
サラは恥ずかしそうにうつむいた。
かなり大人しい性格のようだ。
「こっちはナーニャ。護衛をしてくれてるの。17歳ね」
イルリアが左側に座った女剣士を紹介した。
「ナーニャだ。よろしく頼む」
ナーニャと呼ばれた女が頭を下げた。
立ち居振る舞いは凛々しく、騎士然としている。
格好はボーイッシュだがよく見ると美しい娘だ。
その長身はスレンダーだが胸元の膨らみは立派なもの。
頭を下げた瞬間、ルブリスの視線が胸元の隙間に走る。
そのほんの一瞬をイルリアは見逃さなかった。
「ナーニャは凄腕よ。下手に手を出すと痛い目を見るから」
「それは是非一度腕前を拝見したいものですね」
ルブリスが素知らぬ顔で社交辞令を言う。
だがナーニャはそれに真顔で返した。
「こちらからもお願いしよう。腕の立つ者でないと役に立たんのでな」
「そうね。ナーニャに敵わないまでもそこそこやってくれるぐらいでないと」
「それはナーニャさんと立ち合えという事ですか?」
二人の言葉にルブリスは嫌そうな顔をする。
「そうよ、何か問題でもある?」
「問題という訳ではありませんが、試合とはいえレディとやり合うのはちょっと……」
「最初は皆そう言うのよね。それで勝った試しはないけど」
実力を信じないルブリスにイルリアが挑発的に言う。
「この街にいる冒険者はあらかた試して不合格だったわ。それであの依頼を出したという訳よ」
「なるほど、だから他所から来た冒険者限定だったわけですか」
いかがでしょうか?
調子に乗って今日中にもう1話投稿してしまうかもしれません。
ブックマーク、評価など頂けたらきっと調子に乗りますw