第1話「二人の男」
※「作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!」の続きを書くといいながら
アイデアが湧いたものでついつい書き始めてしまいました。
当分2本並行して書いていくつもりです。
6/30現在24話まで書いてあります。
2週間ほど1日2話投稿する予定です。
男が昼間からカウンターで酒を飲んでいる。
左手には火のついた葉巻。
無造作に伸びた灰色の髪、茶色の瞳。
まだ若いが意志の強そうな太い眉に高い鼻筋。
180センチを超える長身に薄汚れた灰色のマント。
腕の筋肉を見れば鍛え上げられているのが分かる。
小汚い服の隙間からは傷だらけの胸元がのぞく。
足元の靴は汚れ、その傍には大きな荷物。
腰から下げた大剣。
いかにも流れの冒険者といった風情だ。
ここはバストークの町の中心にある酒場。
男の顔は造作は悪くないのだが、いかにも不機嫌そうだ。
その厳つい雰囲気から誰も男に声を掛けようとしない。
客たちは余所者らしい男をただ遠巻きに眺めているだけ。
バーテンダーも離れたところに立っている。
男はつまらなさそうにフウッと煙を吐き出した。
グラスに注がれた茶色い液体を一息に飲み干す。
その時、男の背中で入り口の扉が開いた。
「バルド、お客さんを連れてきましたよ」
開いた扉から入ってきたのは銀色の髪を束ねた若い男。
歩いているだけで人目を引くだろうというような美形。
服装も清潔で洒落ている。
剣を下げているところを見ると、こちらも冒険者らしい。
その声を聞いたカウンターの男が振り向いた。
どうやらこの男に向かって投げられた言葉のようだ。
「……ルブリス、客ってそいつらか」
男は顔をしかめて銀髪の男を見た。
銀色の髪で美形の男がルブリスというらしい。
後ろには三人の女――うち二人は少女――が立っていた。
「バルド、お客に対して『そいつら』はないでしょう――」
ルブリスが大げさに両手を広げてバルドに文句を言う。
それに少女の一人が冷やかな声で被せて言った。
「行きましょう。口のきき方も知らない男に頼ることはありません」
少女はやや小柄で、見事な金髪が美しい。
人形と見まがうような整った顔立ち。
絶世の美少女といっていいだろう。
だがその青い瞳には憤怒の炎が燃えているのが分かる。
少女はそう言うや否やただちに踵を返した。
「お待ちください。彼は無愛想ですが腕は立ちますよ」
立ち去ろうとする少女に慌ててルブリスが声を掛ける。
いちいち身振り手振りがオーバーな男だ。
少女の左右に居た女たちも一緒に少女を引きとめた。
「イルリアさま、この人たち以外に頼める人は居ないんですよっ!」
金髪の少女の腕を掴んで引きとめるもう一人の少女。
年は同じくらいだが背は150センチとさらに小さい。
茶色い髪をポニーテールにした可愛い娘だ。
「とにかく話だけでもしよう。あなたには目的があるだろう?」
そう諭すように言った女は少女たちより少し年上か。
赤い髪をボーイッシュに短くまとめている。
165センチほどと背が高い。
服の上からでもスタイルがいいのが分かる。
腰には細身のレイピアを下げていた。
ハードボイルドを意識して書いていくつもりですが、ハードボイルドの定義にあまり縛られるつもりはありません。よってハードボイルドファンの皆様には物足りないかもしれませんが、生暖かい目で見て頂けると幸いです。