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俺と異世界美少女と幼馴染と貝

藤井家のダイニングテーブルを囲んで会議が行われていた。

参加者は蓮山高校の女子の制服を着た白凪、もう一人は同じく蓮山高校の男子の制服を着た猛、そして純白のワンピースを来た異世界美少女だ。


「誰?その子」


白凪は少し怒のこもった声で怪訝そうに向かいに座る少女を指差しながら猛に問うてきた。

猛は何とか最善のいいわけを考え、この状況から一刻も早く逃げ出したい気持ちでいるのだが人間追い込まれたらそう簡単には何も思いつかないのだと今、猛が身をもって感じていた。

だから出てきた言葉がこれなのである。


「…妹」


「うそはやめて!」


(で、ですよね〜。幼馴染だもの〜。わかりますよね〜。腹ちがいの妹とかそんな虚言言ったところで信じてもらえませんよね。)


「だってたーくんの妹ならもっとシジミみたいな顔してそうだもん」


「何それどう言う意味!?シジミのみたいな顔ってどんな顔なんだよ!」


「間違えた。アサリ」


「どっちでもいいよ!」


「どっちでもよくない。シジミよりアサリの方がちょっとイケメン」


「基準がわかりません!!」


「イケメンなんだよ?嬉しくないの?」


「お前アサリに似てるって言われて嬉しいのか!?」


「いやぁーたーくんのエッチ!女の子にアサリに似てるとか言っちゃダメ!」


「なに!?女の子にアサリは卑猥な言葉なの!?シジミはいいのか!?」


「シジミはいいの」


「基準を教えてぇぇ!?」


「それより誰なの!」


「唐突!!!」


考える暇さえ与えてくれない白凪のマイペースについて行けない猛はしぶしぶ真実を口にすることにした。


「………異世界美少女」


こんな事を言って誰が信じるのかとは思ったものの他に何も思いつかなかったのだ。


「わかった」


「ぇえ!?妹のほうが現実味あったよね!?」


「異世界美少女と妹はシジミとアサリくらい違う」


「変わんねぇよ!!」


「変わるもん!」


そんなやり取りが何回か続いたが、二人も漸く諦めて話を元に戻す。


「たーくんお風呂にその子連れ込んでなにしようとしてたの!?」


「あれは…お前に見つからないようにだな」


「変なことしようとしてたんでしょ!」


「しねぇよ!!」


「うそだ!たーくんはそういうちっちゃな子が好きなんだもん!そういう子を見て興奮する人なんだもん!」


「待って!俺そんな人じゃない!」


「そういう人は『グ』と『ヘ』だけで会話ができるの知ってるもん!ゴキブリが『じょ』と『う』と『じ』だけで会話できるのと同じ」


「なに言ってんのお前!?」


「本当!くそうんこ!」


「おぃいいい!やめろぉ!!女の子がそんな汚いこと言うなぁ!」


「あっ!間違えた!」


「だろうね!女の子がそんな言葉言っちゃダメだから!」


「うんこの二乗」


「おいこら!何も変わってねぇぞ!くそとうんこかけて二乗にしただけだろ!」


猛がツッコミをいれたのを最後に白凪がいきなり黙り込んで俯き出した。


「ど、どうしたんだよ」


猛は心配になって白凪に声をかける。

やはり家に女子を連れ込んだことに怒っているのか悲しんでいるのか。

どちらにせよ悪いことをしてしまったかもしれないと胸が苦しくなった。


「……たーくん」


「ん?」


「お腹すいた」


「はぁ!?」







白凪が来ることを忘れていたので白凪の分の材料を買って来なかったため冷蔵庫に余っていた適当な物で創作料理を作ってやった。

それを異世界美少女に負けず劣らずパクパクと素早く完食した。


「お前いきなり黙るから心配したじゃないか」


「だって夜ご飯食べてなかったんだもん!」


白凪が頬を膨らませて不満そうな顔で言ってくる。

そんなとき不意に隣を見ると少女が首を傾けてスヤスヤと眠っていた。

そういえばいきなり静かになったと思ったらこういうことだったのか。

猛は無意識に声を小さくして白凪に話しかける。


「怒ってる?」


すると白凪が驚いた様子で


「なんで?」


その反応は意外だった。


「てっきり怒ってるのかと…」


「怒ってるわけじゃないけど…なんだか寂しい」


白凪は猛から目を逸らして異世界美少女に視線を向けた。

異世界美少女は起きる様子もなく、ただ気持ちよさそうに寝ている。


「寂しい…?」


「うん。たーくんが私以外の女の子と話してるとこあんまり見たことなかったから」


(誰のせいだと思ってるの?)


「それなのに見たこともない女の子を家にいれてて、なんだか私、置いて行かれちゃった様な感覚で…」


いつもの元気な白凪ではない。

俯いたまま悲しみのこもった声を発している。


「たーくん最近私とはお風呂入ってくれないのにその子をお風呂に連れ込もうとしてるし」


「それは誤解!あとお前と入ったらダメだろうが!もう高校生だぞ!?」


「あとその子ハマグリ顔だし」


「まって!新しいの出てきましたけど!?」


「味噌汁はやっぱりシジミだし」


「いきなりなんの話をしてるの!?」


「教科書とノートがワカメとかまじわけわかめだし」


「それ前俺が言ったやつだよね!?やめて!いま出さないで!」


「だから今日はたーくんの家泊まるね」


「なんでそうなるの!?話が全然つかめません!!!」


「だって私が監視しなきゃたーくんその子に変なことするもん」


「しねぇよ!!」


「するーーー!だから泊まるからね!荷物とってくる!!」


白凪は椅子から立ち上がって勢いよく走り出し、玄関を飛び出ていった。


「嘘だろ…」


こうして白凪が泊まりに来ることになったとさ。




次回は来週の水曜日です。

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