朝から平和な日常
13話を更新したので今回の14話は13.5話くらいで見てください。短いので…
『ピピピピピピピピピピピピ』
この音を聞くのは毎朝の日課になっている。
鬱陶しくて耳障りな音。
「…うるさいな」
猛は布団を深くかぶって耳を塞ぐ。
無論、音は鳴り続けるので気休め程度だにしかならない。
ここは黙らせるしかないと布団の隙間から何とかその音を発している携帯を手探りする。
と、何か柔らかいものに触れた。ささやかな膨らみながらしっかりと弾力はある。
それを握るようにしてみると「ひゃッ!」と可愛い声が聞こえた。
「あ………」
その後のことを俺は覚えていない。
※
「痛い…」
猛が赤く腫れた顔を手で抑えながら呟く。
今、猛は可美とともに電車で街に向かっている。目的は可美の服を買うためだ。
昼間の電車内はそこそこ空いていたので、二人は並んで椅子に腰掛けている。
猛はジーパンにTシャツというラフな格好で可美はあの純白のワンピースに白いサンダルだ。
「知らない。どこかにぶつけたんじゃない?」
可美は怒っているのかプイッと顔を背ける。
「鏡で見たけどこれ拳のあとついてない!?」
「なに?私がやったって言いたいの?」
「いや、そう言うわけじゃ……もしかして……俺さ、可美のおっぱい触っ–––––ぐふっ!」
可美が猛の横腹に一撃を放った。
「なにすんだよ!!」
「うるさい!うるさい!」
可美が首を左右に振って猛の声を妨害する。
「可美のおっぱいを触ったことはあやま––––ぐふっ!」
横腹を一撃。
「まてまてまて!本当に反省してるんだって!」
「最低!最低!」
「ごめんって!」
頭を下げて謝ったとき、ある疑問が猛の頭に入ってくる。
「…………………ん…待てよ。何でお前俺が手伸ばしたらいたんだよ」
「……そ、それは…」
「可美の布団リビングに敷いてやったよな?なんで俺の部屋にいたんだよ」
「…………」
急に俯いて黙秘する。
そう。つまりはこういう事だ。可美が俺の部屋に忍び込んで俺のベットで寝てたってこと。
それに気づかなかった俺は携帯じゃなく可美の胸に触れてしまったんだ。
「なに〜?寂しかったの〜?」
猛がニヤニヤしながらからかうように可美の肩をツンツンと突く。
「うっ!うるさい!気持ち悪い!臭い!汚い!触らないで!」
「どんだけ悪口言うんだよ!」
「うるさーーい!」
可美が両耳を塞いで猛の声をシャットアウトする。それから少し間をおいて耳から両手を離しながら小さな声を発する。
「……ひとりは………こわい…から」
寂しそうな顔。
(前もこんな顔してたな。こんな顔見たくない)
「子どもだな〜」
猛は励ますように明るく笑う。
「バカにしないでよ…本当に本当にこわいんだから」
「わかったよ!じゃあ俺がついててやるから!可美が怖いとき、辛いとき、どんなときだって俺がついててやるから」
猛が可美の頭を優しく撫でる。
可美は照れくさそうに目線を下に向けているが嫌そうではない。
猛が手を可美から離すと可美が口を動かしたのがわかった。うっすらとしか声は聞こえなくて猛は「え?」と聞き返す。
「…なんでもない」
「なんだよ!言ってくれよ!」
「ふふ。内緒」
可美はいたずらな笑みで応える。
「なんだよ〜」
猛が残念そうにすると可美が「ありがとって言ったんだよ。ばーか」と小さく呟いて笑う。
「え?今、なんか言った!?」
「な〜んにも」
「なんだよー!!!!」
次は来週の水曜日に更新します