トランプはお泊りの必須アイテム?
髪を乾かし、着替えを済ませた。
少女は今日着ていた純白のワンピースだけしか服を持っていなかっので、白凪がウサ耳フードのついた上下セットの、全身白で統一されたデザインのスウェットを貸してやった。
白凪はそのスウェットの猫耳バージョンで派手なピンク色の生地の物を着ている。
デザインは違うが種類は同じ、いわゆるお揃いというやつで、並んでみると姉妹のようにも見える。
脱衣所を後にしてリビングへ戻ると猛がダイニングテーブルで何かをしているのがわかった。
「たーくん何してるの?」
白凪が声をかけた瞬間、猛はびくっと肩を動かして急いで手元を隠した。
「な、ななな、ななな、なになにも!?」
「同様しすぎ」
白凪が呆れたように言う。
「どうせあれ見てたんでしょ?わかってるんだからね夜な夜なたーくんがティッシュ片手に」
「まてまて!そういうのはよくないからやめろ!」
「感動映画」
「感動映画かい!ティッシュ片手にってそういうこと!?涙拭くためね」
「え?なに想像してたの?気持ち悪い」
「お前わかってて言ってるだろ!」
「まぁ冗談はこれくらいにしておいて、この子服持ってないみたいなんだよね。だからこれ貸してあげたんだけど」
白凪の隣にいる少女に目をやると以前、白凪が着ているところを見たことがあるスウェットだった。
白凪のだから少し大きいみたいで、裾から指先がかろうじて見える程度だ。
しかしながら少女は白凪のスウェットが気に入ったみたいで嬉しそうにしていた。
猛はテーブルの上の辞書やメモ帳をまとめて整理してから少女に訊いてみた。
「んーなら明日学校休みだし買い物にでもいくか?」
「何を買うの?」
「そりゃ君の服だろうな」
「私の服、ほしい。行きたい」
「了解!」
少女はそっと笑みを浮かべて嬉しそうにしたので、猛も内心喜びを抱いていたが、少し感情を表にだすのは気恥ずかしかったので軽く頷いて応答した。
「私も行く♪」
とそんな二人の会話を羨ましく思ったのか白凪が腕を振ってアピールしてきた。
「お前も行くのかよ」
「当たり前だよ♪私は監視役だからね♪」
恐らく拒否したところで無理やりにでも白凪はついて来る。
そう思った猛は「わかった」と軽く返事をして話を終わらせた。
「ところでたーくん辞書なんか開いて何してたの?」
白凪が不可解な面持ちで訊いてくる。
いきなり問われた質問に狼狽しつつも何か言い訳をと思考を巡らせる。
別にやましいことをしているわけではないのだが、今その真相を話すときではないと判断したのか頭の毛を掻きながら
「勉強」
と最もらしい返答をした。
だが、それだけであたふたと慌てていたのだとは到底思えなかった白凪は、腑に落ちないと言った様子で怪訝そうに猛を凝視していた。
「じーーーーーーーーーーーーーーーーまっ、いいや。」
しかしそれは人間であるゆえに暫時であって恒久ではない。
すぐに元の様子に戻るとソファーの隣に並べられた自分の荷物の方へと移動した。
そして何かを探しているのか、キャリーバッグの中をゴソゴソとあさりはじめた。
「なにやってるんだ?」
猛は椅子から立ち上がり白凪の方へ歩み寄ろうとすると
「あった!!」
いきなり大きな声をだして右手を掲げた。
その手に握られていたのは長方形の小さな箱だ。
「と、トランプ?」
猛はその箱を見つめながら呟く。
「チッ、チッ、チッ」
人差し指を左右に振りながら口で擬音をつける。
「スペード、クローバー、ハート、ダイヤの4種各13枚の計52枚とジョーカーが2枚の合計54枚を1セットとするプレイングカード別名西洋かるたとも言う」
「うん。トランプだね」
「そうトランプ」
「なんだったの今の茶番」
「いいじゃん♪それよりこれで遊ぼうよ」
「えぇ。もうこんな時間だぞ」
猛は壁にかかった時計の方に視線をやる。
時刻は23時を少し過ぎた頃だ。
白凪も猛と同様、時計を見たが別にたいした反応はなく小さな箱からカードを出し始めた。
「今日はこれからだよ♪」
と満面の笑み。
「いやもぅ今日終わっちゃうんだけどね」
「こまかいことはいいの♪じゃあババぬきしよっか」
「しょーがねーな。おーい君もやるだろ?」
猛はソファーに腰掛けてリビングの入り口に立っている少女を呼ぶ。
「わからないけど…やりたい」
少女は恥ずかしげに言ってソファーの方へと歩んできた。
そして白凪と同じく床へ腰を下ろす。
白凪は少女にババぬきの説明をすると言ったのでさせてみたら「ババをひいたら負け」と言っただけだったので全く伝わらなかった。
(初めてだからそのババがなにかもわかんねぇだろ)
呆れた猛は白凪の代わりに説明することにした。
できる限りわかりやすいように頑張ってみたらなんとか伝わったみたいでなんだか少女もやる気満々になってくれた。
「わかった。ロイヤルストレートフラッシュが一番強いんだ」
「まって全然伝わってなかった!なんの話をしているのかな!?俺ポーカーなんて教えてませんけど!?」
「だって…は、白凪さんが言えって」
「白凪でいいよ♪」
白凪が笑って少女に言うと少女は頷いて「わ、わかった…白凪」と少し恥ずかしそうに笑いかえした。
「え?なに今のボケは放置するの?いいんだけどね。なんか二人いい感じに仲良くなってるし」
「裸の付き合いってやつ♪」
白凪が各々の前にカードを配っていく。
そしてジョーカーを一枚ぬいた計53枚を全て配り終え、全員が数字の揃ったペアカードを真ん中に集めた。
各自、手に残った数枚のカードを握っている。
「さぁ、私たちの戦争を始めましょう」
白凪の妙にかっこいい声でババぬきが始まった。
次回来週水曜日更新
どうでもいいけど。【、】がないと中国語みたいですね。