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それは無慈悲で残酷なモノ。 レネクスside
男は、殺戮者だった。
人の絶望した顔を見ることに喜びを感じる者。
人を傷つけることを楽しむ者。
……人を殺すことに快楽を感じる者。
そして――
――――愛を、知らぬ者。
そんな彼が流した涙は、生涯にたった一度しかない。
最後の殺しをしたとき。
――“その時”だけである。
それは、彼が初めて“愛”を感じたときだった。
初めて罪を、自覚したとき。
腕の中にあるソレは、気づいたときにはもう、光を映してはいなかった。
男が死の間際に感じたのは、悲しみと、消えゆく優しい温もり。
忘れもしない、“彼女”がくれた、無償の愛――――。
――『私は、あなたを、愛しているわ』――
“彼女”は殺された。
――自分の愛する男に。