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憎い爆弾  作者: 加来間沖
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語り継ぎ

短いのですがこれで最後とします。最終回設定をし忘れていた事と、私が混乱したことが合わさり21時ごろ誤って投稿しましたが内容は同じです。

 自国の軍が殺したわけではない、敵兵が殺したわけでも無い。あの子を殺したのは原爆に他ならない。人だけでなく虫、鳥、動物などもあの日殺された。

 あの子は一瞬にして灰の中に埋もれ死にました。体は四方に散り手足は裂かれた。あの子は光に焼かれた。あの子は何を思っただろうか。しかし彼はもう喋れない。


 三日三晩寝れぬ人もいたであろう。誰が何の権威を持って彼や彼女に多くの火傷を負わせたのか。人民を恐怖に陥れて四肢を裂傷させる許可を誰から貰ったのか。一発で何万、何十万にも及ぶ大量殺人や都市機能の破壊をもらたす爆弾の使用を誰が容認したのか。

 何故、突如地獄に投げ入れて多くの苦痛をその身に負わせたのか。何故、炎の発す熱で顔をゆがませて笑顔を奪い取ったのか。最後に一目会いたかったであろうお父さん、お母さん、兄弟たちの顔を見れず孤独に瓦礫の中に埋もれ息絶えた事はいかに辛いだろうか。


 「水をください」かすれた声は私の耳から離れない。幼い子の手を握った母親が最後に発した言葉であった。幼子の手を握りそのまま息絶えた一人の戦士よ。あなたは焼かれた町を歩きここに子を届けその歩みを止めた。あなたは子を守られたのだ。しかしその先を自らの手で守ることが出来なかった母の無念は、成長し母に感謝を述べることのできない子の無念はいかに大きいであろうか。人命を奪い心と街を壊す爆弾は何故いまだ消えていないのか。私は思う多くの生命、家族、財産、生活、自由を奪い、死、患難、苦悩、飢え、危難をもたらしてはならないのだと。そしてそれをもたらすのが戦争であり、原爆であると。残虐な爆弾よ絶えてくれ。どうか平和の空気を汚し、非人道的な死を運ぶ爆弾よ無くなり恒久の平和をもたらしたまえ。


 わたしは原爆を知らない。わたしは戦争を知らない。でも祖母は知っている。祖父の働いていた小倉に爆弾が落とされる計画であった事をわたしは知らなかった。同時にそれが何を意味するかさえ私には分からなかった。だから人が人を産むことを知ったとき、祖母が標的扱いであった工場で働いていた事を知ったとき私は大きな恐怖を感じた。8月9日、小倉では米軍の暗号文一部解読(部隊番号が同一であった)により広島と同じケースが落ちることを察知した。これを受け陸軍は五式戦闘機を、海軍は零戦と紫電改を総計一〇機発進させ、工場付近では煙を立て上空から見えなくした。だから米軍の報告には雲ではなく煙が多く地上が見えないと記されている。さらに先の戦闘機発進の報告を入手し小倉上空からはなれ県外に行き、隣の県も越えたもう一つの候補であった長崎に機首を向けた。

 

 そして11時2分、暗闇を照らす光熱線が発せられ、全身を震わせるような音をだし空がないた。風はすべてを荒々しく払い、炎の塊が町に落下した。

 もし長崎でなく小倉の工場に、祖母の頭上に全てを灰にする爆弾が炸裂していたなら私はここにいない。絶対に。私は生を得れない暗い穴にいるはずであったのに、わたしはそれを免れたのだ。犠牲によって。

 だから戦争よ核兵器よこの星から、この世から、すべての世から消え失せてしまえ。あなたの存在が誰を喜ばしたのか。これら憎い戦争と憎い爆弾を生み出した荒れ果てた人の心よ清くなり二度と地に暴虐にを運ばないでほしい。


 過去に得たこと、今あることで未来が変わるのであれば私は祈る。声を発して願う。戦争の無い未来を。憎い爆弾の末裔である核兵器の廃絶を。


 憎さを憎さで返してはならない。ただ語り祈るのだ。憎い歴史があった事を後世に伝えて二度と起きないように。

五話の短編でしたが、ありとうございます。

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