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フィーカスのショートショートストーリー

ライバルへの贈り物

作者: フィーカス

 犬猿の仲、という言葉があるが、お互い作家である清水と小池はまさにその象徴だといえる。

 お互い同じ時期に小説を書きはじめ、同じ時期に賞を取り、同じ時期に出版デビューを果たした。時には「俺の方が早い」と、たった数日の早さを争うこともあった。

 どちらもジャンルが違うものを書いていたため、「俺はあいつの小説を書けない」と言いながらも、「俺の方がおもしろい」とお互い譲らない。いい意味で言えば、切磋琢磨していたのだが、近づきたがろうとはしなかった。

 お互い嫌い合っていたものの、「あいつには負けたくない」と、二人ともどんどん作品を作っていく。結果、現在では二人とも、ドラマ化や映画化がどんどんと決まるほどの作家となっていた。


 ある日、清水が倒れているところを、家族が発見した。病院で診察した結果、高血圧だという。

 命に別状はなかったが、しばらく入院を余儀なくされた。入院中は大好きだったお酒を制限され、食事も味気ないものへと変わってしまった。

 なんとか病院内でノートパソコンを使うことは許可されたが、時々手がしびれてうまくキーボードが叩けないことが多くなった。調べ物をするにも、病室内ではインターネットがつながっていなかったため、わざわざ病院内のパソコンルームまで移動しなければならない。当然、今までよりも執筆速度は落ちるようになった。


 そんなある日、清水の病状を知った小池は、清水のお見舞いをするようになった。フルーツやジュースなどの食べ物を毎回持ってくる他、原稿用紙や筆記用具、調べ物用の辞書や図鑑までお見舞いの品として清水に渡していた。

 家族は「ライバルなのに親切ね」と感心し、毎回お礼をしていた。それを知った他の作家も、小池へお見舞いをするようになった。


 小池は他の作家仲間と一緒にお見舞いすることもあり、気になった作家仲間の一人が小池に言った。

「それにしても、あれほど仲が悪かったのにお見舞いに行くなんて、本当は心配だったんですね。さすが、作家のかがみです」

 しかし小池は首を振った。


「心配? そんなこと、した覚えなんて全然ないよ。あいつ、高血圧なんだろ? だからもっと悪くなるように敵に塩を送っているのさ」

「敵に塩を送る」の使い方ってこうですかわかりません!

 実際は糖分たっぷりなんで「当分いらん!」とか言われそうですが。

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― 新着の感想 ―
[一言]  女性にありそうな世界ですよね。   にっこり笑って、隣にいるのに、実際は嫌いとか(笑)
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