ー2ー
心の奥底に追いやった痛みが、
闇と共に
ムクムクと頭をもたげる。
真っ黒でいびつな感情が心一杯に広がる。
自分にそんな感情があることを認めたくなくて、
彼女は今日も心の痛みを無視する。
現実から目を背け、
架空の現実に入り込む。
悲劇のヒロインぶれたらどんなに楽だろう。
何も求めず、何も感じず、
ただ運命だけを呪って生きていけたら、
どんなに楽だろう。
だけどそんなことは出来ない。
心が傷ついても、
自分が必要ないと感じても、
彼女は笑顔で生きている。
その笑顔の奥に潜む、
悲しさには誰も気がつかないけれど……
雪のように静かで真っ白だった心に少しずつ広がっていく、
黒い滲み。
どれだけ彼女が嫌がっても、
その滲みは留まるところを知らずに、
じわじわ広がっていく。
真っ白な部分が少しずつ減っていく恐怖。
どうすることも出来ない恐怖。
真っ白な部分が少しでも残るようにと、
彼女は祈る。
ただ祈る……
落込んだ気分のまま朝がやってくる。
彼女はゆっくりと布団から出て、
出かける支度をする。
無理やり明るく振舞い、
夜には落込んだ気分を抱えて
寒さに耐える。
抜け出したいと思っても、
一人では踏み出せない一歩。
雲の間から差し込んでいた。
神々しい光。
唯の光だという人も居るかもしれない。
でも、
彼女にはそれは天から差し込む一筋の光に見えた。
それによって何かが変わるということではないけれど、
それによって悪いことが起こるわけではない。
ただ、彼女にとっては、
心が洗われるというだけ……
大切な人が去っていく。
このまま
今のままで変わりたくない。
変わっていくのが怖い。
でも
人は変わっていくものだ。
彼女も頭では分かっている。
感情がついていかない。
ツキン
ツキン
と心が痛む。
彼女はその痛みに笑顔をのせる……
人によって幸せの定義はさまざまだ。
自分が幸せだと思っていることが
ある人は幸せに感じない。
それはしょうがないことだ。
でも
自分が幸せだと思うことを人に押し付けるのは間違っている。
そう思われることが彼女は
悲しい。
寂しい。
苦しい。
悔しい。