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11 動揺を隠せない

安定の王道展開です。

何のひねりもなくてすみません。

 どうも、こんにちは。

 人間なのに竜の国の女官になってしまった元「村人Y」のリセ・リアルデです。

 とうとつで何の脈絡もありませんが、すこし事前解説をさせてください。


 近々確実におとずれるであろうわかれのときの餞別にと、ピクニックのさいにハシュルスルビスクルス様からウロコをいただいた、その翌朝のことです。


 あのあと、初めてお会いしたころのように――いえ、そのころ以上にベッタリとくっついてこられたハシュルスルビスクルス様と王城にもどり、食事と入浴をすませ、いつものように絵本をお読みし、添い寝のためにおなじ寝台によこになったのですが……







 …うーん、何だかみょうに息ぐるしいです。


 そりゃあ、ハシュルスルビスクルス様はもう大人と言っても差しつかえないほど大きくなられましたけど、べつにペシャンコに押しつぶされているわけではありません。

 何というか、その、だれかの腕のなかに抱きしめられているような……あれ?


 まどろんでいた意識が急速に覚醒していきます。

 寝台のうえには、私とハシュルスルビスクルス様しかいないはずなんです。

 ――では、この腕のぬしは一体なにものなんでしょうか!?


 こわくて眼をあけられず、とにかく逃げようともがくと、腹部にまわされていた腕にさらに力がはいり、ますますギュウと抱きすくめられてしまいました。

 ひ、ひいぃー!


 酸素をもとめて水面に顔を出した池のコイのように、青くなって口をパクつかせることしかできません。


「だ、だれか、たすけ」


 アワアワと声をあげて、ハッと気づきました。


 …そ、そうだ、ここはハシュルスルビスクルス様のお部屋。

 なら、近くにハシュルスルビスクルス様がおられるはず!


「ハ、ハシュ様! ハシュ様! たすけてください! 知らないひとがいますッ!」


 すると、頭上からクスッとちいさな笑い声が漏れ聞こえ、うしろからあらわになったうなじをそっとなでられたかと思うと、チュウと音をたてて吸いつかれました。


 ぅぃいいいいいやああああぁぁぁぁ!!



「…わからないかな」

「わーッ、わーッ! …って、へ?」


 ささやくように耳朶にかけられた吐息まじりのひくい声に、思わずさわぐのをやめます。



「ようやっと、きみを思いきり抱きしめられる――」


 大好きだ、リセ。ぼくのいとしい花嫁。



「…は?」


 ――…はいぃ? はなよめぇ?

 何言ってんですか、このひと。頭わいてんですか。


 …んん? でも、どうして私の名を…


 勇気を出しておそるおそるふりかえったさきにあったのは、いまだかつてお眼にかかったことのない、適度な甘さのあるシャープでりりしい端正な青年の顔面のどアップでした。


 ――ワー、アナタ、ドコノドナタデスカ?


 変な態勢のまま動揺しまくり、カチンコチンに硬直するとどうじに、心底うれしそうにやわらかく細められたきれいな緑の眼に、どうにも説明のしようがない既視感をおぼえます。

 少々クセのある純金のサラサラした髪も、見おぼえがあるようなないような…。


 …ま、まさか、このひとって、ひょっとして…


 愕然とする私の考えを読みとったのか、カッコいい路線を正道からつっ走る超絶美形さんはいちだんと愉しげにほほえみ、ととのった鼻先を肩口にうずめてきました。


「そうだよ、きみがおさがしのハシュルスルビスクルスはぼくだ。おはよう、リセ」

「え? え!? う、うえええええーーーッ!?」


 ひええぇぇ、何たることでしょうか!

 このむだにきらきらしい美青年がハシュルスルビスクルス様だとは!


 ――とまぁ、驚くのはそのくらいにして――竜態から人型になることができたということは、成人なさったということです。

 年齢と外見がまったくつり合っていませんが、竜のばあい、必ずしも実年齢イコール精神年齢ではありません。

 そう……ついに、きたるべきわかれのときがきたのです。




 …しかし、『花嫁』って何なんですかね。

 私の聞きまちがいでしょうか?

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