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▼とある青年の思い。

書いていて、すげぇ照れました。



ミナトは、今家に住んでいる幽霊だ。


狩りに出掛けた先で出会った、女の子の幽霊。


出会いは強烈。何せ浮いていて、尚且つ全体的にほんのり透けていたからだ。(姿を見るまで、少し声が透き通る響きをする不思議な人だな程度しか思わなかったし。)



村まで逃げて、一安心したと思ったら、また後ろにいて叫び声をあげたら、


『その大声、森だとともかく、ココだと近所迷惑だよ〜?』



馬鹿正直に手で口を押さえて叫んだ俺に、彼女はケラケラっと笑って自己紹介を始めた。



それが、俺とミナトの最初のちゃんとした会話だった。



それから二ヶ月後――



朝、微睡みの中からぼんやり意識が浮上してくる。


その意識の中で、


『必殺、乙女のお目覚めアタック!!』


「ゴファッ!」



鳩尾に衝撃と激痛が走った。





朝ごはんを食べたあと、日課になってきた狩りのために森へ出掛けた。


また【雪ウサギ】を捕まえに来たのだが、頭をチラつくのは今朝のミナトの姿。




柔らかな色をしたセミロングのふわふわした髪、長い睫毛で囲われた焦げ茶色の瞳、桜色に染まった唇、朝日を浴びて輝く白い肌、薄い布地に包まれた豊富な胸元、丈の短いそれから伸びる細い足。


それらを思い出すだけで鼓動が速まり、顔が赤くなる。



「…あ゛〜、何してんだろ、俺。」


頭を抱えて、その場に座り込んだ。




いくら年が近いって言っても向こうは年下だし、しかも幽霊だ。


そのような感情を抱いても、結局は報われない。



そうと分かっていても、やはり巡らせる思考はミナトばかりで…。


いつも皆に向けてくれる笑顔を独り占めしたい、柔らかそうな唇に触れてみたい、その細い肩を抱き締めたい…



「やっぱり、恋…なのかな。」



叶わない恋と言うのは、こんなにも切なくて苦しくて、でも仄かに甘いモノも含んでいて…。


考えれば考えるほど分からなくなっていって、頭の中がこんがらかる。



「……狩り所じゃないよ…。」


『何が狩り所じゃないって?』


「そりゃ…って、ミナト!?」


『よっ、頭まで抱えて、何かお困りのようだねリュシオル君。まさかとは思うけど、恋のお悩みとか~?クククッ。』


ドキッと胸が高鳴った。さ、さっきの独り言聞かれてた?


『おや、図星?…そうだなぁ、フローリアさんとか綺麗な金髪だし、スレンダーで美人だよねぇ。』


?、…何でフローリアの話しになったんだ?


兎も角、俺の独り言は聞かれてないみたいだ。…良かった。


「フローリア、確かに最近美人になったよね。」


『お、何々リュシオル兄さん、フローリアさん狙ってるの?』


「狙ってるって言うか……ん~、寧ろ妹に近いかな?いつお嫁に出てもおかしくない自慢の妹…って感じ。」


『……リュシオル、それは妹を思う兄貴じゃなくて、娘を思う父親の心境よ。しかも、あんた若干親バカ思考ね。』


何故かミナトが落ち込んで、こう言ってきた。……そうかな?フローリアに対する想いは、家族に近いのは本音なんだけど、何か不味いこと言ったかな?



『…まあ、良いか。リュシオル!今日の昼御飯は、私特製の野菜と卵のサンドイッチだよ。…ここに置いておくから、痛まない内に早めに食べてね。』


じゃあね。っと言って、ミナトは姿を消した。…家に帰ったのだろう。



「もうお昼か。」


悩みに悩みまくっていたら、かれこれ数時間ああしていたのか…。仕事しないと。



しっかし、ミナトが作ってくれたお弁当。……あ、愛妻弁当みたいで、なんか照れるな。


ニヤニヤと口元が緩む。



サンドイッチを食べながら思う。


ミナト、この気持ちを君に伝えたら、きっと君は断るだろう。自分は幽霊だからって言って。



でも俺は、君の事が…。



その思いは、青空の中に溶けていった。





王道展開にしてみました。



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