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藪から棒に

「摩訶不思議な術を使うと言われているクジュ様、ウォル様とお見受け致します」


 突如目の前に現れた男は面で顔を隠していた。困惑を滲ませながらクジュとウォルが男を見れば男は面ごしにこちらを睨みつけた。


「だったらどうした」


 クジュが重々しく口を開けば男が身体を震わせたのがわかった。それもそうだろう。クジュの声は一句だけでもそれを聞いた人の耳に纏わりつく。真夏の茹だる暑さにも劣らない不愉快さを感じさせる纏わりつき方をもってしてクジュの声は更に人の内側へ滑り込む。粘着質なその声は聞いた者の中に潜む後ろ暗い部分をじわじわと拡張させていく。内側を暴かれているような不快感にウォルの眉間にも皺が寄る。何度聞いてもこの声には不快感を覚えてしまう。

 警戒心をあらわにし、愛想をかけらも見せようとはしないクジュに気分を害した風もなく男は面のせいで表情の窺えない顔をこちらに向けて口を開いた。もっとも、面をしているせいで開いた口は見えないが。


「それならば、我等に御同行願いたい」

「我等、ですか?」


 ウォルが首を傾げる。どこをどう見ても男は一人しかいない。それなのに男は我等と口にした。その矛盾に理解が出来ないでいるとクジュがウォルの肩を叩いた。


「ん?」


 振り返ればクジュは無言で更に後ろを指差している。背後には十人ほどが全く同じ面をつけ、それぞれに武器をも持って並んでいた。


「これは……大変ですね……」

「もう一度だけ。御同行願います」


 前方の一人が先程と全く同じ声音でそう繰り返す。クジュとウォルは顔を見合わせると両手を耳のあたりまで挙げた。


「俺達は人並み以上の戦力があるわけじゃないですからこの数を相手にするのは無理ですね」

「一対二でも怪しいがな」

「ああ、それは言えてますね」


 そう言う通りクジュとウォルの手持ちには武器のようなものは一切ない。武器を突き付けられてわずかに身体が震えているがクジュもウォルもそれには気付かないふりをして前方の男を見据えた。


「大丈夫です。抵抗しない限り危害は加えません」


 そう男が言うと同時に二人の首筋に槍が、銃が、刀が付きつけられる。そのひやりとした感覚に内心恐怖しながらもそれを表に出すことなく虚勢を張って二人は示し合わせたように溜息を吐いた。


「申し訳ありません。これも王の御意志ですので」


 本当に申し訳なさそうに前方の男は一度頭を下げると懐から縄を取り出して二人へと近付いた。

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