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55/56

55.最終ランキング

 その日の配信の同接数は、過去最高を記録した。俺たちは改めて、自らの潔白を主張。今後はクラウドファウンディングで得た資金を元に債権者へ支払いをし、社会的責任を果たした上で、活動していくと誓った。


 そして…。


「延期になっていたランキングを発表します。一位、俺~!二位キョウ、三位がソウマで、四位カナタ、五位、シオンでした。と言うわけで、シオンが研修生に落ちて、響がメンバーに復活します!わーっ!」

「わー!」


 ソウマだけが、ハイテンションで反応した。カナタは限界が近いのか、カメラの前なのに目が死んでいる。配信まで仮眠するはずが、俺たちが行方不明になったから、寝られなかったらしい。本当に、申し訳ない…。


「じゃー響!俺の隣にきて!」


カメラをカナタと交代して、俺はマコトの隣に座った。


「響から、一言!」

「えっと…夏休みの最後に復活できて、本当に良かった。これから、YBIが東京ドームに行くまで、全力で頑張ります!高校も、辞めます!」

「マジで?!いいの?!」


マコトではなく、ソウマが大きい声を出した。マコトは隣で目を丸くして驚いている。


「うん」


 俺が頷くと、マコトは眉を下げた。


「別に辞めなくてもいいんじゃないの?活動は土日メインだし、通いでもいけるよ?ソウマとキョウも行ってるし」

「でも俺一人だけ素人だから。もっとちゃんと頑張りたくて。今やらないと絶対後悔するから、決めました!」

「そ、そうなんだ…。あ、お父さん!俺は止めました!」

「あ、俺も止めましたぁ~!」


 ソウマとマコトが、画面の前でふざけたが、俺は超本気、真剣だった。


「それで今日は、その決意表明っていうか、ここで、ピアスを開けたいと思います!」

「わー!」

「え、ここでやんの?!」


マコトには話していて、さっき一緒にドラッグストアでピアッサーを買って来たのだ。勿論、うちの学校はピアス禁止。


「じゃあまず、耳を消毒します」

「おい、マコト、響、マジかよ?!流石に針刺すとこはグロくない?!」

「じゃ、ソウマ手で隠して」

「手…?!」


ソウマが慌てている間に消毒が終わり、マコトが耳にピアッサーを装着する。


「じゃ、響、心の準備は?」


オッケーのグーを前に突き出すと、マコトはカウントをとった。眠かったはずの、カナタもキョウも、一緒にカウントを叫ぶ。


「「「「3、2、1…!」」」」

 

 ゼロで、バンッ!と、大きな音がした。痛くはないけど、音が恐ろしい……!そして、徐々にじんわり、痛くなってきた気がする…。


「じゃ、次、反対側…」


マコトは反対側も開けようと手を伸ばして来たのだが、俺はその手を掴んで止める。


「反対側は、東京ドームにいってから開けます!」

「え…?」


マコトはキョトンと首を傾げた。打ち合わせにない事だったから、驚いたようだ。でもこれは、俺が最初から決めていたこと。

 さっきの仕返しに、マコトを驚かせたのだ。それに、俺なりの決意表明でもある。


「反対側は、って、ダルマの目みたいなこと?」

「いや、絶対、さっきの音にビビったんだよ!ほら、ちょっと涙目じゃん」


マコトとソウマが、茶化すので、俺は少しムキになった。


「違うって!」

「ムキになってあやしい…」

「大丈夫、痛くないよぉ~」

「うっさい!」


モニター画面には、コメントが次々流れてくる。ほぼ、『響がんばれ!』という応援だったのだが…。


「あ、ナナ子さん、投げ銭ありがとう。『響くん、右ピアスは本気BLの意味だけど大丈夫?』だって!響、どーする?」

「え……?」


そう言えば、男の右ピアスは、ゲイのサインだって、聞いたことあるような、ないような…。でも…。


「……これは、、願掛けだから!」

「ちょっと間があった…」

「もう片方ビビってやめたで確定」

「違うって!」

「あ、響大好きさん、投げ銭ありがとう!『響くん、そんなヘタレじゃまた研修生落ちだよ』…と…、…」



そのコメントを読み上げたマコトは、一瞬、顔を曇らせる。そして急に真面目な顔をして、正面を向いた。


「どう伝えようか、迷ったんだけど…。シオンが正式にYBIを脱退することになりました。今まで、沢山応援して貰ったのに、こんな結果になってしまって、本当に申し訳ないです」


マコトは少し、時間を掛けて深々と頭を下げた。メンバーも一緒に頭を下げたあと、また正面を見つめる。


「タクミも休んでるし…。今、メンバーがここにいる五人だけになっちゃいまして。つまりですね、ランキングバトルが続けられなくなってしまいました。当面、YBIはこの五人で頑張っていこうと思ってます」

「とか言って、いきなり『新人オーディション』とかやらないよな?!」

「え、何?!ソウマくん、そんなに脅かされたいの?」


 タクミって、休んでる事になってたんだ?!

 俺も衝撃を受けている間に、画面に、沢山コメントが流れてくる。マコトは息継ぎもそこそこに、次々と読み上げていく。


「えーと『ソウマどMか』『シオンくん悲しい』うん、ごめん…。『響、かっこよすぎ!東京ドーム絶対行こうね!』ほんとかっこいいよね。東京ドーム、行こう!本気で!『響くん高校続けて!』あ、この後ちゃんと話し合うから、心配させてごめん!『マコト社長の次のイベント楽しみ』そう言われると、やるぞってなる!ありがとう…!えーと、全部読みたいんですが、そろそろ時間なので。またお会いしましょう!じゃーまたね…!」


「「「「またねー!」」」」


 最後は全員で手を振って、お別れをした。

 ようやく、長い一日が終わった。





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