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塩キャラメルポップコーンに恋して

作者: 昼月キオリ

一話 映画とポップコーン

二人の出会いは映画館。

 

サリア(24)

一緒に映画を見に行く予定だった彼氏にドタキャンされ仕方なく一人で映画を見に来た。

ミニスカートのワンピースにハイヒール。


サク(27)

いつも通り一人で映画を見に来た。

メガネ。ワイシャツにテーラードジャケットにジーンズとシンプルな格好。




サリアとサクは映画館で隣同士になった。

映画の途中、ポップコーンを食べようとしていた二人の手と手が当たる。

映画を見ながら食べていた為、互いに相手のポップコーンを間違って食べてしまったようだ。

サリア「あ、ごめんなさい」

サク「俺の方こそ」

小声で謝罪し合った後、その場は黙って映画を見続けた。


映画の上映が終わった後。

始まったのは映画の感想会、ではなくポップコーン論争だった。

サリアはキャラメル、サクは塩。




サリア「ポップコーンはキャラメルよ」

サク「いや、ポップコーンは塩だ、キャラメルなど邪道だ」

サリア「塩なんて味が付いてないも同じじゃない」

サク「子どもの君には塩の良さがまだ分からないんだ」

サリア「失礼ね、私は24歳、立派な大人よ!」

サク「ほう、そのチャラチャラさは二十歳を超えているとは思えんな」

サリア「何ですってー!?」


サク「第一、君は一人で映画を観るようなタイプには見えない」

サリア「彼氏が来るはずだったけど来れなくなったの!」

サク「その様子だとドタキャンか?」

サリア「何でそれを・・・」

サク「その様子だと君が恋人を心配しているようには見えないし、

さっき映画を見終わった後に携帯が鳴り、悲しそうな目で見ていた、おそらく彼氏からだ、

連絡が来ているということは事故にあって来られなくなったとも違う、つまりドタキャンって訳だ、

違うかい?」

サリア「ぐっ・・・」


サリア"初対面なのに何でここまで見透かされなきゃならないのよ、腹が立つ‼︎"



サク「まぁ、君がこの映画館に入って来たのを見かけた時点で一人で観に来る人じゃないと分かっていたがな」

サリア「な・・・何で話してもないのにそんなことが分かるのよ?」

サク「着飾った格好をしているのに苛立った様子で映画館にズカズカ入ってくる人なんていないからな」

サリア「むっ、そうよ・・・彼、予定より楽しいことがあるとそっちを優先させる癖があるの」

サク「随分クズな彼氏だな」

サリア「悪かったわね」





二話 水と油

映画館から出た後、二人は足早で歩く。

サリア「ちょっと、何で付いてくるのよ」

サク「帰り道が同じなんだから仕方ないだろう、嫌なら君こそ他の道を通ればいい」

サリア「何で私があなたの為にそこまでしなきゃならないのよ!」

サク「まるで僕たち水と油だな」

サリア「大いに結構よ、あなたとなんて混ざり合いたくないわ」

サク「おい」

サリア「なによ・・・ゴン!!」

サリアは目の前の電柱に気付かず、頭を思い切りぶつけてしまった。

しゃがみながらおでこを押さえる。



サク「だから声をかけたんだ、全く」

サリア「いったーい・・・あんたのせいよ!!」

サク「何で俺のせいなんだ、今のは君の不注意だろう」

サリア「あーもう血が出てるわ・・・最悪」

サク「・・・ほら」

そう言ってサクはカバンからハンカチを出してサリアに渡した。

サリア「え?ありがとう・・・」


サリア"意外と気が利くじゃない"

 

サク「立てるか?」

サリア「ええ・・・」

サクが手を伸ばし、サリアがその手を取るとグイッと起き上がらせた。

サリアは思わぬところでサクの力強さを感じてしまう。


サリア"インテリ系に見えてもやっぱり男の人なのね"


サク「病院行こうか?」

サリア「これくらいへーきよ」

サク「そうか、一人で帰れるか?」

サリア「もう、どれだけ私を子ども扱いすれば気が済む・・・の・・」


歩き出しそうとしたサリアの視線の先に恋人のマークが女性と腕を組み仲良さそうに歩いていた。


サク「ん?あの男、ひょっとして君の彼氏か?」

サリア「ええ・・・」


その女性がマークの頬に口付けをする。

 

サク「どう見ても兄弟や友達ではないな、止めに行かなくていいのか?」


二人はラブホテルに入っていく。



サリア「いいわよ」

サリアは下を向いてポツリと呟いた。

サク「・・・愚痴くらいなら聞いてやってもいい」

サリア「はー・・・、そうね聞いてもらおうかしらね」

サリアは大きく息を吐くと上を向いた。涙が溢れないようにする為だ。

サク「随分素直だな」

サリア「うるさいわね」

言い返してはいるものの、その声に力はなかった。

 


 

15分後。二人は飲み屋にいた。

サリア「だからぁ!いっつもいっつもドタキャンばっかなのよー!」

サク「そうか」

 

サク"これで5回目だな"




更に三時間後。店を出たサクはタクシーを呼んだ。

サリア「このまま帰るの?」

サク「ああ、君はまだ彼氏と別れているわけじゃないからな」

サリア「真面目なのね」

サク「誠実の間違いだ」



結局その日は彼に強引にタクシーに押し込まれる形でさよならをした。

今度お礼がしたいと伝え、一度は断れたが二度お願いをして連絡先を交換した。

その時、彼の名前がサクであることを知った。





三話 友達以上恋人未満

後日。二人はレストランで食事をしていた。

サク「しかし、君も罪な女性だね、恋人がいながら僕を誘うなんて」

サリア「別れたわよ」

サク「え?その割にスッキリした顔をしてるな」

サリア「それまでは未練があったんだけどね、

別れを告げたら泣きつかれて、なんか急に冷めちゃったのよ」

サク「そうか・・・つまり、君は晴れてフリーってわけだ」

サリア「そういうことになるわね」

サク「次はもっといい男を選ぶんだな」

サリア「あら、あなたがなるとは言ってくれないのね?

サク「君みたいなじゃじゃ馬、僕はごめんだよ」

サリア「あらそう、まぁあなたみたいな塩対応な男、

セックスも塩対応そうだしちょうど良かったわ」

サク「へぇ、じゃあ試してみるかい?」

サリア「え?」

サク「僕がそっちの方も塩対応かどうか、恋人と別れたんだろう?僕も恋人がいなし何も気にする必要はないだろう?」




二時間後。

二人はラブホテルのベッドの中にいた。


サリア"う、うそ・・・凄い良かったわ・・

前戯も丁寧だったし勉強家なだけあって私の気持ちいいポイントはすぐに学習してピンポイントで攻めてくる、

こんなに気持ちいいセックスは初めてだわ"

 

サク「で?僕のセックスはどうだった?」

サリア「よ、良かったわ・・・」

サリアは恥ずかしそうに布団で顔を半分隠した。

サク「はは、それは良かった」


サリア"私たちって友達ではないわよね、かと言って恋人ってわけでもなさそうだし、

セフレってところかしら、でも、お互いそれくらいの方が気が楽よね、今はそれでいいわ、ちょうど恋愛に疲れていたところだしね"





四話 勿忘草と花言葉

サリアの家。

休みの日。友人のシイナと家で呑み会をしていた。

シイナ「え、彼、ニューヨークに転勤するの?」

シイナは友人達も交えて何度かサクに会ったことがある。

シイナにだけは彼との関係を打ち明けてある。

サリア「二年だけよ」

シイナ「ついて行かないの?」

サリア「行けるわけないじゃない、私たち、恋人じゃないんだから、それに私はフランスを離れたくはないの」

シイナ「そう・・・」



サリア「それであいつ、去り際に花束を渡して来たの」

シイナ「え!!何よ、ロマンチックな展開じゃない!」

サリア「去り際に水色の花よ?こういう時はバラの花束とかでしょ!最後まで塩対応なんだから」

サリアはテーブルに飾ってある花を見た。



シイナ「相変わらずサリアは花に関しては疎いのね」

サリア「何よ、それどういう意味?」

シイナ「勿忘草って言うのよその花」

サリア「何それぺんぺん草みたい」

シイナ「全然違うわよ笑、第一、ペンペン草は白色よ、それに知らないの?勿忘草の花言葉」

サリア「知らないわよ」

シイナ「私を忘れないで、よ」

サリア「え・・・」

シイナ「それって=俺のことを忘れないで待っててくれって意味でしょ?、サリア?ちょっと聞いてる?」

サリア「・・・ええ、聞いてるわよ」




二年後。空港。

サク「待っててくれたのか」

サリア「あなたが勿忘草なんて渡すから」

サク「花言葉知ってたのか?」

サリア「知らなかったのよ、でも、シイナが教えてくれたの」

 

サク"やはりな、

花に詳しい友人のシイナとはよく家で呑むと言っていたからもしかしたらと思っていたが"


サリア「今度はバラの花束にしてよね」

サク「君は分かりやすいな」

サリア「あなたが分かりにく過ぎるのよ」

サク「これでも、ストレートに表現したつもりだったがな」

サリア「もう、サクは相変わらず塩対応なんだから」

サク「だが、嫌いじゃないから迎えに来てくれたんだろう?」

サリア「ええ、私、今まで食わず嫌いをしていたわ、

シイナと食べた塩ソフトクリームが美味しかったの、

私、塩好きなのかもしれないって思ったわ」

サク「俺もどうやらそのようだ、先入観で甘いものは苦手意識があったが一緒にニューヨークで仕事をしていた友人にキャラメルのお菓子を食べさせられたが美味かった、俺もどうやらキャラメルが好きみたいだ」

サリア「ふふ、私たち、水と油じゃなかったみたいね」

サク「ああ、それどころか最高の組み合わせじゃないかな」


そう言って二人は手を繋いで歩き出した。





番外編 塩キャラメルポップコーン

ひょんなことから塩キャラメルポップコーンを食べたサリアとサク。


サリア「ん・・・」

サク「ん・・・」

二人はパチクリと目を合わせた。

サリア「やだ美味しい・・・」

サク「ああ、不覚にも美味しいなどと思ってしまった」

シイナ「ふふ、でしょう〜?これ食べた時にあなた達の話を思い出してね、まるであなた達みたいだなと思ったの」

サク「俺達みたい?」

シイナ「だってサリアはキャラメルみたいに甘いしサクは塩みたいにあっさりだし、

二人足してちょうどいいじゃない」

サリア「悔しいけどそうかも」

サク「ああ」

二人は塩キャラメルポップコーンをあっという間に完食したのだった。

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