第95話 中国主席と会談 2019.12
ここは、中国共産党の本拠地、最高指導者である主席の執務室がある勤政殿。
翌日、リリィさん一行は、勤政殿の近くの庭に転移した。前回、モラルの低い病原菌を撒いた男を寝かせた庭だ。大きな庭石の横に転移魔法陣を設置しておいたのだ。
しばらくすると、SPと思しき、屈強な男たちが現れて囲まれた。
リリィ
「よろしければ、ご案内いただけるかしら?」
やがて、男たちの後ろから秘書官と名乗るものが現れた。
秘書官
「ようこそ、いらっしゃいました。リリィさま、主席がお待ちです。こちらにどうぞ。」
リリィ
「ありがとうございます。」
秘書官に続いて、一行は付いていく。
着いた先は広い応接室に長いテーブルが置いてある部屋だった。
テーブルの端に主席と思しき者が座った。
テーブルの反対側に椅子がひとつあり、そこにリリィが座った。一行はリリィの後ろに並んだ。
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広い応接室には厳粛な空気が漂っていた。長いテーブルの端に座る主席は、冷静な表情でリリィ一行を見つめていた。
主席
「よくぞ参られた。我々に何の用か?」
リリィは落ち着いた声で応じた。
リリィ
「お時間をいただきありがとうございます。先日、病院の患者に施したのは一時的な回復措置に過ぎません。本格的な治療には至っておりません。」
主席は目を細め、静かに尋ねた。
主席
「つまり、また悪化する可能性があると?」
リリィ
「ええ。そして、それだけではありません。武漢市で発生した新しいウイルスの封じ込めが失敗していることを確認しました。このままでは世界に拡散し、パンデミックが発生します。」
主席の表情がわずかに険しくなる。
主席
「封じ込めが失敗している、だと? 我々はすでに対策を講じている。」
リリィ
「残念ながら、感染拡大は止められていません。このままでは国内のみならず、世界中に広がり、多くの犠牲が出るでしょう。」
主席はしばらく考え込み、秘書官に目配せをした。
主席
「証拠はあるのか?」
リリィ
「今朝の隣接の省の病院の様子です。既に風邪症状の患者数が増えています。待合場所は満杯状態です。」
主席
「むぅ、確かに由々しき事態だ。」
リリィ
「ですが、解決策もあります。武漢細菌研究所に、新ウイルスのワクチンの試作があることを確認しています。それを量産し、速やかに配布すれば被害を抑えることが可能です。」
主席
「早くワクチンを量産しろというのか?」
リリィ
「はい。しかし、この問題は中国だけのものではありません。他国にも準備させないと間に合いません。ワクチンの承認は早くても半年はかかるでしょう。ワクチンサンプルを提供いただければ、他国でワクチン製造を加速できます。」
主席は指を組み、じっとリリィを見つめた。
主席
「つまり、我が国の研究データを他国と共有せよと?」
リリィ
「それが最善です。ワクチンの独占よりも、迅速な対応が必要なのです。主席の寛大なお心が世界に感謝されるでしょう」
主席は沈黙した。室内には緊張感が漂った。しばらくの沈黙の後、主席は静かに口を開いた。
主席
「考える時間が必要だ。我が国の科学者と協議し、最善の決断を下そう。」
リリィ
「ありがとうございます。ですが、時間がありません。迅速な決断をお願いいたします。」
主席は重々しくうなずいた。
主席
「わかった。可能な限り早急に結論を出す。」
リリィは微笑み、一礼した。
リリィ
「ご英断に感謝します。」
リリィ一行は主席の決断を待つべく、応接室を後にした。
その後、リリィたちは庭園の一角に設けられた待機室へ案内された。そこは静かで広々としており、美しい庭が窓の外に広がっていた。
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主席
「おい、あの女の言ったことの裏をとれ」
秘書官
「はっ」周りの秘書官が足早に散っていく
主席
「しかし、なんだあの女、まったく物おじしないぞ。まるで、子供を見るようにワシを見ている。そんなことができる者がいるのが信じられん。アメリカ大統領でも、ワシが睨めば、一瞬、怯む。それが自然の人間の反応だ。」
秘書官A
「おっしゃるとおりかと存じます。周りにいる者の気配もただ者ではありません。いずれの者も人ならざるものと感じます。」
秘書官B
「総理から、連絡がありました。隣接の省の病院に風邪症状の患者数が急増して満杯とのことです。」
主席
「総理のやつ、こちらから、聞かねば報告もできんのか。うすのろめ」
「女の言っていた話は、本当のことだった。しかもし、早い、確度高い。隣接の各省の病院の今の映像だけでも入手困難だぞ。方法も分からん。」
「あいつらは、極めて危険だ。だから、傍に置くことに決めた。早急に親交を深めねばならんなろ。食事でもふるまってやれ」
秘書官A
「御意」
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