第90話 武漢細菌研究所探索 2019.11
クロシャは深夜、闇に溶け込むようにして武漢の細菌研究所に近づいていた。 足音ひとつ立てずに滑らかに歩く。 彼女の得意技である「認識阻害魔法」がその姿を完全に消し去っていた。 さらに、軽快な動きで、地上の影に紛れるように建物へと近づいていく。
研究所への潜入
クロシャ「この施設、セキュリティが厳しい。でも、まだまだ甘いな。」
クロシャは建物の外壁に手をかけ、身軽に研究所の窓まで移動した。 窓には厳重なロックがかかっていたが、建物内に影ドローンを召喚し中から窓を開けさせる。中に滑り込むと、独特の研究所の無機質な雰囲気があった。
内部探索
クロシャは施設内を探索しながら、「影ゴーレム」を召喚し放った。 この影ゴーレムは黄金虫ゴーレムを改良し影に溶け込む性質を持ち、狭い通路やエアダクト内の監視も可能だ。クロシャとリンクして頭の中に映像が出る。目的の部屋まで静かに進ませる。
途中、研究者たちが声が聞こえた。
研究者A「ウイルスのサンプルは、試験用に隔離エリアに移動させる予定だ。」
研究者B「実験段階で不測の事態が起きれば、外部に露出する危険があるな。」
ラボへの進入
研究所の奥に進むと、厳重に管理されたラボが現れた。扉には最新の指紋認証と虹彩スキャナーが備えられている。クロシャは影ゴーレムを使って、セキュリティシステムの配線を解析した。
クロシャ「これは魔法で簡単に突破できる。」
彼女はセキュリティーを解除。扉が静かに開き、冷たい空気がラボから流れ出てきた。
証拠の収集
ラボ内には、多くの冷蔵庫型の設備が並び、透明な試験管の中に液体が保存されている。 それらには「感染力強化」「変異型ウイルス」など、ラベルが貼られていた。
クロシャは慎重に小型ビデオを取り出して、全ての試験管や設備を撮影した。 さらに、端末にアクセスし、実験の詳細データをコピー。 データの中には、ウイルスの研究内容が細かく記されており、「空気感染向上」や「潜伏期間延長」といった記述が含まれていた。
クロシャ「これは、人為的な操作。ひたすら、凶悪な細菌を作っているのか。」
追跡者
手に箱を持った技師を発見した。ここから、物を持ち出すのは危険なはず。クロシャは不審に思い、後をつける。彼は小さな箱を手に、ロッカー室から出てきた。警備員たちに、手をふり、気楽に研究所を出ていく。クロシャは彼の後をつけて、だれにも気づかれずに外に出た。
やがて、技師は車に乗り、近くの市場に到着した。そこで技師は市場の者と話している。
「今日の分だ。珍しい種類だから、金をはずめよ」
「わかってるよ。あんたの持ってくるのは、珍品ばかりだからな。しかも、眠らせているだけで、生きがいいからな。」
技師は、箱を、市場の者に渡し、封筒をもらって、車に帰ってきた。
クロシャは、車の中に忍び込み、静かに「お花畑魔法」の銃を撃った。男は虚脱して、目の焦点が合わなくなった。クロシャは尋問をはじめた。
「何をしている」
「実験動物を市場の者に売って、金を稼いでいる」
「実験動物は、危険ではないのか?」
「危険レベルの低いラボの実験動物だ。心配いらない。」
「なぜ、心配ないと言える?」
「もう、5年もやっているんだ。今まで問題は起きていない。心配いらない。」
「なぜそんなことをする」
「ほんの小遣い稼ぎだ」
「今まで、どんな動物を渡していた」
「コウモリ、ハクビシン、サルなんかだ。みんな体の中に病原菌を持っている」
「どんな病原菌だ」
「いろいろだ。すぐに人が死ぬほどのものはない」
「その病原菌をどうする」
「その病原菌を強化し、さらにそのワクチンを開発したりしている。その繰り返しだ」
「では、もともと病原菌を持っている動物の研究をしているのか」
「いろいろだ。よそから仕入れた病原菌を強くする実験もしている者もいる。」
「その動物も市場に持ってきたのか」
「そうだ、実験に使った動物も、未使用の動物も、見た目は変わらない。いい金になる」
「それが人間に感染するとは考えないのか」
「レベルの高い隔離区域の実験動物は廃棄されている。持ち出しているのはレベルの低い実験動物だ」
そういって、男は車の中で寝てしまった。
クロシャは、男を拘束し、アジトに帰ってきた。
熱海拠点への報告
クロシャはすぐに熱海の拠点に転移し、撮影した映像と収集したデータをパーティ全員に見せた。
クロシャ「リリィ、この男がウイルスを持った実験動物を市場に放っている。自白映像と、研究所の研究データだ」
確実な証拠を手に入れられた。この研究所で、ウイルスが操作されている可能性が高い。
クロシャ「金目当てに男が市場に実験動物を売っていた。これが、誰かの意図するものかどうかは今のところ分からない。さらに、男を尋問してみる」
リリィ「他にも、同じような者がいないかも調べないとね」
クロシャ
「信じられないほど、モラルの低い者だ。細菌研究所の人間は最低だな」
リリィ
「中国政府がどのように動くか分からない。でも、見過ごす訳にもいかない。我々が勝手に処分してもいけない。告発するしかなさそうだ。中国に国際警察官がいればやりやすいのに」
ジャック
「市長や省長に報告してはどうか」
クロシャ
「細菌研究所は、国家戦略の組織だ。中央政府に権限がある。地方政府には権限がない。細菌研究所の体制を改善するのは無理だろうな。」
ガルド
「一番、上に言えばいいんじゃねえか。そしたら、ごまかせねぇ」
リリィ
「そうね。それしか、無いわね」




