第89話 世界のシンクタンクに呼びかけ 2019.11
国連本部にて、アンサ事務総長の挨拶の後、リリィはスピーチを始めた。
「世界にはシンクタンクという民間組織が1000か所もあると聞いています。この組織の皆さんにも、世界平和について一緒に考えていただけたらと思っています。そこでコンテストを開催することにしました」
リリィは、世界に向けてのテレビ放送のカメラに向けて、続けた。
「今回のテーマは、新型ウイルスが発生してパンデミックが広がるのをどう防ぐか、そして巨大隕石群の接近にどう対応するか、の二つです。上位10チームには総額1億ドルの賞金を用意しました。期間は2か月です。ふるってご参加ください」
その後、リリィは自身のSNSアカウントを通じて同様のメッセージを発信した。彼女の発言は瞬く間に拡散され、各国のシンクタンクや研究者たちの間で話題となった。
世界各国の反応
アメリカでは、ワシントンにある大手シンクタンクが早速動きを見せた。彼らは、AIを活用した感染症モデリングと、隕石回避のための宇宙航行技術の開発を目標に掲げた。代表者は、「このようなグローバルな課題に取り組む機会を与えてくれたリリィ氏に感謝します」とコメントした。
ヨーロッパでは、EU連合が主導する形で複数のシンクタンクが連携し、パンデミック予防のための国際協力ネットワーク構築を提案。ドイツの代表者は、「リリィさんのコンテストは、各国が一致団結するための素晴らしいきっかけです」と述べた。
アジアでは、日本、中国、インドを中心に、各国のシンクタンクがそれぞれ独自のアプローチで挑戦。特に中国では、AIを活用した感染拡大予測システムの開発が進められ、インドでは、隕石回避のためのロケット技術の研究が加速した。
アフリカや中南米でも、小規模ながら革新的なアイデアを持つシンクタンクが集まり、パンデミックと隕石対策に向けたプロジェクトが始動した。アフリカのある研究所では、地域社会での感染症予防教育プログラムを提案。中南米では、隕石の衝突エネルギーを分散させる技術を研究する動きが見られた。
11月末 ニューヨークの拠点、
リリィ
「コンテストの回答が、続々ときているけれど、予想以上の反響ね。」
ジャック
「そうだね。ここで、注目したいのは、中国とロシアのシンクタンクだよ。数は少ないけれど回答をくれている。出来はあまりよくないけれどね。ここは入賞させてコネを作ろうと思う。」
リリィ
「なるほど、なかなか近づけなかった。中国国内に入れる口実になるわね。まず、中国のシンクタンクに接触しましょう。」
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中国国内は、数少ないコンビニボーソンが上海市にあった。市長が独自路線で誘致したからだ。上海コンビニボーソンの駐車場でリリィ一行は結界と認識阻害魔法をかけて転移した。
中国のシンクタンクとの出会い
空は澄み渡り、大気の変化を感じさせる都市の中心部にある高層ビルの一角で、中国のシンクタンク「白龍研究所」の代表たちと会談が行われた。
白龍研究所の代表である陳教授は、リリィたちを笑顔で迎えた。
陳教授
「遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。我々の研究所は小規模ですが、世界の平和に貢献したいという思いは強いです。」
リリィ
「こちらこそ、貴重なお時間をありがとうございます。陳教授、御社の回答について詳細を伺いたいです。」
陳教授は少し緊張した様子で資料を広げながら、自信を持って説明を始めた。
陳教授
「パンデミックに対して、我々は地方ごとの早期警戒システムを提案しています。AIとドローンを使って感染の広がりをリアルタイムで監視し、封じ込めることができます。隕石に関しては、地上に設置した大型レーザーを使って軌道を修正する構想です。」
ジャック
「技術的な課題はどうですか?例えば、レーザーの出力や実現可能性について。」
陳教授
「確かに課題はありますが、核融合炉のレーザー技術が加われば可能性はあると考えています。実験施設を設ける資金があれば、さらに実現に近づくでしょう。」
リリィ
「素晴らしい提案です。ぜひとも詳細を詰めさせていただきたいと思います。また、私たちも技術支援を検討します。」
陳教授は目を輝かせて頷いた。
リリィ
「まずは、パンデミックの問題について、プロジェクトを組みましょう。例えば、中国国内で、新型ウイルスが発生するケースを想定し、それを初期の段階で封じ込める作戦を考えて下さい。あたらしいテーマとして依頼します。報酬は1000万ドルです。1カ月でお願いします」
こうして、リリィたちは中国のシンクタンクとの関係を深め、共に平和のための新たなプロジェクトに取り組む一歩を踏み出した。
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ドローンによる監視システムの研究
陳教授の提案
陳教授「パンデミックの封じ込めには、感染拡大を正確に把握し、迅速に対応するシステムが必要です。我々の研究では、AIとドローンを活用して地方ごとの監視を効率化する方法を提案しています。」
スクリーンにシステムの概略図を投影し、以下の構成要素を説明した。
AI統合プラットフォーム
データ収集地域の医療機関、環境モニタリングシステム、個人端末からの健康データを集約。
分析と予測感染の可能性があるクラスターを特定し、リスク評価を行う。
ドローンネットワーク
高速移動地方や遠隔地に配置されたドローンが、感染エリアを定期的に飛行して監視。
空中検査ステーションセンサーで空気中のウイルス濃度を測定し、異常を検知。
緊急対応医薬品や防護具を迅速に輸送。
市民向けアプリケーション
ユーザーの健康状態をAIに報告。
接触者追跡と感染リスク通知を提供。
技術的な課題と解決策
ジャックが陳教授の説明を聞きながら質問を投げかけた。
ジャック「ドローンの監視システムは魅力的ですが、飛行時間やセンサー精度、データ処理能力など、いくつかの技術的課題があります。これらをどう克服する予定ですか?」
陳教授「素晴らしい指摘です。現在考えている解決策は以下の通りです。」
飛行時間の延長
長時間飛行可能なエネルギー効率の高いバッテリーを導入。
太陽光パネル搭載型ドローンを開発。
センサーの精度向上
ナノテクノロジーを活用し、空気中のウイルス濃度を測定する高感度センサーを開発。
温度や湿度などの環境データも収集可能に。
データ処理能力の強化
クラウドコンピューティングで即座に解析可能。
ドローンにエッジコンピューティング技術を搭載。
通信の安定化
地域ごとに通信網を整備。
遠隔地でも安定した通信を実現する異世界技術を応用。
実験施設の設立
陳教授「これらの技術を統合するための専用実験施設が必要です。施設では、AIモデルの訓練、ドローン試験飛行、センサー調整を行います。」
リリィ「中国国内は広大です。新型ウイルスが発生する可能性のある地域に絞って、そこを重点的に進めていただければと思います。」
陳教授「なるほど、重点地区の選別ですね。わかりました。早速取り掛かりましょう。」
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実証実験ということで、陳教授に小型のドローンを10000台手渡して、中国全土に設置するように、お願いして、中国から撤退した。中国政府の監視の目を避けるためである。
ドローンは、中国の製品なので、撤去させられることはないと判断した。陳教授は中央政府にコネがあり、幸い行動は制限されていなかった。
監視ドローンには1体を収容した箱の中に、ごく小さな監視カメラを付けた100個の黄金虫型AIドローンを隠してある。この黄金虫AIドローンには、認識阻害と物理結界の魔法をかけてある。
博士達チームが中国全土を旅して監視ドローンを設置する際に、各箱に隠されていた黄金虫AIドローンが、周辺に散っていく。これは陳教授には話していない。この黄金虫AIドローンの設置が本来の目的である。
黄金虫AIドローンの映像と音声は、暗号化され圧縮されて、日本の熱海拠点に送られる。熱海拠点では、その映像と音声を分析するAIゴーレムが設置されている。こうして、2019年11月始めには、中国全土の監視網を完成させることができた。
少しして、中国全土の監視網に、気になる地域が複数発見できた。細菌研究所という施設である。3個所、見つかった。マーガレットに確認すると、武漢が怪しい気がするという。パンデミック対策して、武漢の細菌研究所を徹底的にさぐることになった。
リリィ
「クロシャ、君に武漢細菌研究所を探ってほしい。ここから、ウイルスが漏れるのか、ここがパンデミックの原因なのかを」
クロシャ、諜報部隊パーティのリーダー、認識阻害の魔法が得意。アストラル体を水に溶かして移動し、敵の情報を探る。敵アジトに潜入することも厭わない。闇一族にパーティのほとんどを殺されたという過去を持つ。闇一族を恨んでいる。現在のパーティの人数は不明、リーダー一人という噂がある。




