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第85話 ホムンクルスの培養技術    2019.11

勇者ギルド星

リリィ、ジャック、そしてギルスたちは、勇者ギルド星の拠点へと転移した。

この星は、星々をつなぐ中継点として知られており、数多くの冒険者たちが集まる場所だ。情報や資源が日々交換され、ギルド内は常に賑わいを見せていた。様々な種族が行き交い、それぞれの目的で活発に動いている。


転移ゲートの近くでは、日頃から博物館と図書館に通い詰めているホー博士が、彼らを出迎えてくれた。


リリィ

「ホー博士、お元気でしたか?」


ホー博士

「ええ、おかげさまで。こちらの生活にもだいぶ慣れてきましたよ」


ジャック

「最近も、図書館に入り浸ってるって噂を聞いたけど?」


ホー博士

「図書館だけでなく、博物館にもよく足を運んでいます。珍しい資料や古代の魔道具が多くて、時間を忘れてしまいますね」


そのやりとりを微笑ましく聞いていたギルスは、一行と別れ、妹・グネルの家へと向かった。


グネルは研究に没頭していたが、兄の突然の訪問に目を丸くし、すぐに笑顔になった。


グネル

「ギルス!? どうしたの、こんなところまで来るなんて、珍しいじゃない」


ギルス

「グネル、久しぶりだ。実は頼みがあってきたんだ。君の新しい魔法、鑑定解析を使って、

この火炎ドラゴンの鱗を大量生産したいと思っている。力を貸してくれ」


グネルの目が輝いた。

「火炎ドラゴンの鱗を大量生産するには、ホムンクルスの培養技術しかないわね。太古の昔に失われた技術ね。」


ギルス

「そうだ。だから、ホムンクルスの培養神器を借りてくるから研究してくれ。おまえの新しい魔法、鑑定解析を使って調べてくれ。」


グネル

「ホムンクルスの培養神器!素晴らしいわ。前から研究したいと思っていたのよ。ホムンクルスの培養技術の全ての仕組みを解き明かせてみせるわ。」


ギルス

「ありがとう。じゃあ、俺たちと一緒に勇者ギルドまで行ってくれ。ギルド長を説得して、博物館からホムンクルスの培養神器を借りるようにしよう。」


グネルは強く頷いた。

「分かったわ」


リリィとグネルは拠点で合流した。

リリィ

「グネルさん、よろしくね。私がリリィよ。今回は、引き受けてくれてありがとう」


グネル

「リリィさん、兄からお噂は聞いています。研究ばかりの毎日で勇者の方々と行動をともにするのは、久しぶりです。こちらのホー博士とは博物館や図書館でよくお会いしました。」


リリィ

「ああ、ホー博士と既にお知り合いでしたか。なるほど、研究者としての意見交換ですね。良かったです。ホー博士が異世界に慣れてきたということかな。」


ホー博士が頭をかいている。

「グネルさん、奇遇ですね。また、よろしくお願いいたします。」


グネルが頷いた。

「こちらこそです。ホー博士。」


リリィ

「それでは行きましょう」


リリィ達一行は、パーティの所属する勇者ギルドの事務所へと向かった。事務所の中に入ると、カウンターに立つ受付嬢が明るい声で迎えてくれた。


受付嬢:

「リリィさん、ようこそお戻りくださいました!地球でのクエストは順調ですか?」


リリィは軽く笑みを浮かべて応じる。

「ただいま戻りました。少し問題があって、ギルド長に直接報告したいの。」


受付嬢は真剣な顔になり、すぐに手続きを進めた。

「かしこまりました。ギルド長は現在、執務室にいらっしゃいます。ご案内します。」


勇者ギルドの執務室に通されると、ギルド長が笑顔で待っていた。。

「リリィさん、お疲れ様、報告とは何かな?」


リリィが一歩前に進み、冷静な口調で報告を始める。

「ギルド長、クエストは順調に進んでいます。その中で、いくつか問題が発生していますが、火炎ドラゴンの鱗が大量に必要になってくるんです。そのため、ホムンクルスの培養技術を使って、火炎ドラゴンの鱗を生産できるようにしたいと考えています。」


ギルド長「ほう、ホムンクルスの培養技術といえば、かなり高度な魔法だ。再現できた者はいなかったはず。」


リリィは真剣な表情で言った。

「はい、でも、こちらのグネルさんが協力してくれます。グネルさんは神器の研究者として有名ですよね。彼女の新しい魔法、鑑定解析を使って、ホムンクルスの培養技術を研究してもらいます。」


ギルド長

「なるほど、あなたがグネルさんか。神器の研究者として確かに有名だ。いくつかの神器を修理したと聞いている。」


グネル

「はい、何点か神器を修理しました。補助脳作成装置とか重力制御せいぎょ装置とか空間拡張装置とかです。魔法陣が解析できたので。今では一般普及しているものもあります。」


ギルド長

「なるほど、それで博物館に保存されているホムンクルスの培養神器を借りて、研究したいという訳だね。地球のクエストに必要だと。しかし、ホムンクルスの培養神器を入手して、その技術を分析して、うまく行くのか?」


ギルスは意を決して言った。

「確かに問題は研究してから出てくるかもしれない。しかし、前進していかないと、何も解決しない。」


ギルド長

「分かった。協力しよう。博物館にあるほとんどの神器は、勇者ギルドの所有だ。ホムンクルスの培養神器も、勇者ギルドの所有だから問題ない。貸出を許可しよう。博物館に連絡しておく。なお、神器の貸出は貢献ポイントを使う。リリィ達パーティの貢献ポイントから5点を引いておくよ。」


リリィ

「貢献ポイント5点マイナス、了解です。よろしくお願いします。」


・・・・・


その足で、一行は、博物館に向かった。

博物館から太古の神器であるホムンクルスの培養神器を借り受けた。神器は古びた外観をしているが、その表面には微細な魔法陣が刻まれていた。


グネルの目が輝いた。

「ホムンクルスの培養神器。これが本物なのね!解析は私に任せて。新しい魔法、鑑定解析を使って、全ての仕組みを解き明かしてみせる。これの仕組みが分かれば、応用できる分野も相当あるわね。」


彼女は、ホムンクルスの培養神器を彼女の家兼研究所に移動させて、鑑定解析魔法で、詳細に調査し始めた。グネルの研究室には無数の魔法書や古代の魔道具が並んでおり、彼女の情熱が感じられる場所だった。

リリィ

「それでは、研究の邪魔になるから、私たちは引き上げるわね。」


グネル、

「任せておいて!」

もはや、グネルはホムンクルスの培養神器を舐めるように見ながら返事した。


・・・・・・

時は遡り、ホー博士が勇者ギルド星に来て間もない頃、


勇者ギルド星の博物館――

そこは、宇宙の果てから採取されたありとあらゆる珍品が、所狭しと並ぶ異質な空間だった。整然とした陳列とは無縁で、展示物は採取された星域ごとに雑多に分けられ、まるで学術研究と宝探しが混在したような雰囲気を醸し出していた。


ホー博士は「宇宙の端」とラベルが貼られた一角にいた。

彼の視線は、そこに無造作に立てかけられていた黒く細長い筒状の装置に釘付けだった。


ホー博士

「これは……望遠鏡? いや、違う。反射構造がない……それに、この魔法陣は複雑すぎる?座標?」


彼は、装置のレンズに目を当てて覗き込む。だが、見えるはずの何かは、そこにはなかった。ただ静かに沈黙を保つ異物。それでも、彼は諦めきれずに何度も角度を変え、焦点を探していた。


そのとき、背後から軽やかな声がした。


グネル

「それは“次元望遠鏡”よ。」


ホー博士は驚いて振り向いた。

そこには、茶色の髪をポニーテールに結い、白衣の裾を翻す女性が立っていた。彼女は装置に歩み寄り、その表面を優しくなぞる。


グネル

「宇宙を、神の視点で俯瞰できる道具。空間だけじゃない。時間すらも拡大縮小して“観測”できたらしいわ。」


ホー博士

「まさか、過去や未来までも?」


彼女はにこりと笑った。


グネル

「伝承によれば、未来予測の魔術と一部の干渉魔法を組み合わせていたらしいけど、今はもう動かないわ。この次元望遠鏡、太古の大戦で中枢部分が破損してるの。」


ホー博士は興奮を抑えきれず、装置の脚部に刻まれた文字を指でなぞった。

「信じられない。もしこれが直せたら、宇宙の起源すら覗けるかもしれない!」


彼女は彼の横顔を一瞥し、少し微笑んだ。


グネル

「いずれ、私が直してみせるわ。興味があるなら、一緒に研究してみる?」


ホー博士は少し間を置いて、手を差し出した。

「ホー博士です。元・地球の科学者で、今はここで学ばせてもらってます。」


グネル

「グネル。神器研究者よ。……科学者と名乗る人に会ったのは久しぶりだわ。」


ホー博士は小さく笑った。

「こちらこそ、“神器”という言葉を聞いてわくわくしたのは初めてです。」


博物館の薄暗い照明の中で、次元望遠鏡のレンズが微かに煌めいた。


・・・・・・・・・・・・・・

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