表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/151

第72話 難民政策展開 2019.9

世界は混乱の渦にあった。戦争、気候変動、経済崩壊、いろいろな要因が重なり合って、難民を生み出し、世界は難民で溢れ、豊かな国を求めて、人々はさまよっていた。移民が100万人規模で押し寄せた国は、疲弊し、崩壊しつつあった。


リリィ

「世界中の難民の数は、何人なのかしら?」


コモン

「難民の定義によるな。自国の中にいてろくに食えない者もいるらしい」


マモル

「同感だよ。ネット難民といって、住むところがない人が日本にもいるよ」


ジャック

「まずは、国を追われた、国を持たない者たちを救うのが先決だろうな」


リリィ

「そうね。環境の厳しい者から救っていきましょう。救って、子供を教育して、科学を学ばせるのよ。それが星の崩壊を防ぐ道よ。」


一同

「「「「おう」」」」


リリィ

「難民全てに衣食住を与えましょう。仕事も与えましょう。そういう体制をつくるのよ。」


・・・・・・・

異世界から来たリリィたちは、国連に働きかけ、新たな移民政策を打ち出した。衣食住の完全保障、VRを利用した遠隔労働、統一されたAIゴーレムの運用による人種差別の撤廃である。前代未聞の政策が今、世界を変えようとしていた。



「つまり、難民たちに全員VRゴーグルを通じてゴーレムを操作させて仕事させるってこと?」

マモルは額に汗を浮かべながら、リリィの説明を聞いていた。


「そうよ。それが最も公平で、最も効率的な労働環境よ」

リリィの声は冷静だった。


彼女は次々と難民たちへの支援策を国連事務総長・アンサに説明していた。


マモルは頷きながら言う。

「VRで操作されたゴーレムは、見た目は同じ、全部統一されるから、人種差別は発生しない。確かに理論的にはそうですね。でも・・」


「なにか、不安なことが?」リリィが静かに問いかける。


マモルは少し考えた後、肩をすくめた。

「いや、むしろワクワクしてるけれど、話が出来過ぎている感じがして」


ジャック

「やりながら、それを確かめる。それが俺たちのやり方だ。悩む前にやれだ」


◆難民町の建設

難民政策の中心となるのは、移動可能なコンテナゴーレムの町だった。


ゴーレム生成魔法陣を地面に置く。魔法陣を起動する。土が固まりコンテナ型の岩が出来ていく。薄い鉄板のようだが、材質は岩だ。下には車輪だ付いている。


コンテナはゴーレムだから、自ら動くこともできるが、命令するまでは動かない。人が押すと、ゆっくり動く。ボタンを押すと、泥のように溶けて人型になる。人型の胸にボタンがあり、押すとコンテナの形になる。そういう仕様だ。


難民町の建設予定地には、区画がされていて、難民の家族は、決められた場所に、人型のコンテナゴーレムを連れて行って、胸ボタンを押せば、コンテナに展開して、中に住むことができる。コンテナの中には何もないが、雨風はしのげる。水道の蛇口が付いた転移魔法陣から飲み水が出てくる。トイレには便座があり、水洗で流した汚物は転移魔法陣で、汚水場に貯められる。壁の液晶パネルにはテレビ番組が映る。


国連の職員達が難民の家族ごとに、コンテナゴーレムを渡していく。やり方を教えて、場所を教えると、家族は人型コンテナゴーレムを連れて、予定の場所に歩いていく。


ある家族が親戚のものと並べて、コンテナを置きたいと要望している。そういうときは、並んだ区画に変更していく。ジグソーパズルのように区画が埋まっていく。


この町にも、コンビニボーソンがある。コンビニボーソンには衣服、食事が提供される。手首にリストバンドを付けているので、そのリストバンドを認識させるだけで、コンビニボーソンを利用できる。


コンビニボーソンには、VRによる遠隔アルバイトが出来るサービスがある。最初は簡単な採集クエストから、初めて、徐々に難しいクエストに取り組む。報酬は仮想通貨ボンで支払われ、コンビニボーソンに売られているものを買うことができる。


コンビニボーソンの数は、100人にひとつの割合でコンテナゴーレム町に点在している。家に近くのコンビニボーソンを使うことになっている。


町の四方には、病院用の大型コンテナ並べられている。医師は少ないが、医者が遠隔で診療してくれる。医療診断AIも導入された最新の機能の病院である。ベッド数は少ないが病床はコンテナゴーレムを召喚すれば増やすことができる。


町の中央には学校がある。6~12才の子供が通い、教育を受ける。13才以上は、ここにはないが、遠隔で、上の学校に行くことができる。


難民たちを安全に受け入れ、居住地を提供する。


コモン

「よし、これでまずは衣食住は確保できたな。」

コモンが満足そうに言う。


「問題は、労働力に対する正当な対価だ。搾取するものがいないように取り締まる者が必要だ」

町の数カ所に、国際警察官の詰め所が置かれる。いわゆる交番である。出来たすぐの町の治安はすぐに悪くなる。たよりは、国際警察官である。各国から希望者が来たが、絶対数が足りないので、こちらもVR遠隔のAIゴーレムを国際警察官が動かしている。


「VRゴーグルを用いた遠隔操作で、難民たちに働いてもらう」

リリィは淡々と言う。


「彼らの労働は、AIゴーレムを通じて経済活動に繋がる。貿易、建設、清掃、あらゆる業種、これらすべてを担うことができる。やがて研究開発も」


クロシャ

「リリィ、盗難が発生した。銃をもった盗賊たちだ。」


リリィ

「あの程度は、大丈夫」


見ていると、町に銃をもった男たちが町にはいろうとした段階で、車が動かなくなった。ゴーレム魔法で、車をゴーレム化して、エンジンが止まったのだ。中からでようとするとドアが閉まったままで出られない。


フロントガラスを壊して、外に出ると、今度は銃がゴーレム化して使えない。玉が出ないのだ。ナイフを抜くと、ナイフの刃がポロリと落ちる。これもゴーレム化の魔法による。町の入り口付近で、武器を全て失った男たちを国際警察官が囲み、お花畑銃で撃って、拘束して、留置場用コンテナに詰めて終わりである。


クロシャ

「尋問したら、あいつらは、人身売買の悪党だった。アジトを急襲して、全員捕まえておくよ」


クロシャがこともなげに言う。相手が人間なら問題はないだろう。全員が納得している。


闇一族が、このプロジェクトを妨害しようとしているのか、気になるが、今のところ兆候はない。


マーガレットが小さく言う。

「まだまだ、町には足りないものがあるニャ。公園とか、食事のできるお店とか。休日に家族で出かけるショッピングモールとか」


リリィ

「そうね。そういう場所も必要ね。三田部長にお願いしましょう。」


リリィは三田部長にスマホで連絡している。


・・・・・・・

ニューヨークの拠点に転移した。


ここのところ、毎日、1個所ずつ避難民の町を作っているペースだ。同じことの繰り返しのようだが、避難民の人種や過去によって微妙に違う。それぞれに合った町づくりが必要だった。特に宗教の関係は難しい。教会の建設は、避難民に全面的にまかせることにした。宗教は生活に密着していて、強制はできないからだ。


リリィ

「さあ、ジャグジーに入ろうかな。明日も難民町作りだからね。」


リリィさんは明るく言う。


ニューヨークの拠点に転移し、連日の難民町の建設が続いていた。異なる文化、異なる宗教の人々に適応した町作りは一筋縄ではいかないが、リリィたちは着実に前進していた。


マモルは、避難民の人たちのことを思いながら、ギターを弾いた。

物悲しい曲になってしまった。


「避難民の生活は、死と隣合わせだ。もっと頑張ろう。」

マモルは小さくつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ