第70話 核融合発電の受注の喧噪 2019.9
冒険者ギルド株式会社シンガポール支部
シンガポールにある冒険者ギルド株式会社は、以前は菱紅商社の会議室を借りてたが、現在は、8階建てのビル1棟を新社屋としていた。そこに、核融合発電の受注窓口が設けられ、世界各国からの受注が入ってきていた。連日、世界各国からの使節や企業担当者からの連絡で賑わっていた。
広々としたフロアでは、スタッフがそれぞれの国や企業からの依頼に対応している。日本の四菱重工、アメリカのフュージョンライト、そして菱紅商社のスタッフたちが手分けして受注の受付に追われていた。
会議室でのやり取り
会議室の一室では、冒険者ギルド株式会社の責任者であるコモン(分身体)がスタッフたちと各国からのオーダー内容について議論を進めていた。
「次の案件は、サウジアラビアからのものです」四菱重工の佐藤が資料を手渡した。「彼らは国内に3基の核融合発電所を建設したいと考えています」
コモンは資料に目を通しながら頷いた。「サウジアラビアの件は重要ですね。既存の石油産業との調和をどう取るかが課題ですね。彼らの希望をもっとききましょう。予算的に出来る要望には答えていきます」
「了解しました」フュージョンライトの担当者、エミリーが続けた。「核融合発電の導入で得られるクリーンエネルギーを、石油化学の製造プロセスに組み込む案を盛り込めば、彼らの関心を引けるはずです」
「では、現地のエネルギー大臣との次回会議で提案してみます」菱紅商社の田中がメモを取る。
別のフロアのやり取り
ロビーでは、イタリアからの使節団が来ていた。通訳を介しながら、彼らのリーダーが熱心に語っている。
「我々は、ヨーロッパ全域にこの核融合発電技術を広めるため、イタリアをハブとして活用する提案を持ってきました。輸送網やインフラ整備には強みがあります」
受付スタッフの一人が笑顔で答えた。「興味深いご提案ですね。ぜひ詳細を伺わせてください。こちらの会議室でお待ちください」
その横では、アフリカ連合の担当者が、低コストでの建設スキームについて問い合わせていた。
「我々の多くの国は、経済的な制約を抱えています。しかし、この技術がアフリカに導入されれば、多くの国が大きな恩恵を受けることは間違いありません」
四菱重工のスタッフが親身に応える。「その点については、柔軟なファイナンスモデルを用意しています。建設後のエネルギー収益で返済していく仕組みを提案していますので、具体的に検討してみましょう」
主要会議室緊急ミーティング
その日の午後、コモンは各国からの要望が集中している状況を受けて緊急ミーティングを招集した。
「現在、受注の集中が激しいです」コモンがホログラムで進行状況を示す。「特に、中東、アフリカ、南米からの受注が急増しています。このままだと建設スケジュールが圧迫されます」
「建設スケジュールの調整が必要ですね」佐藤が提案した。「優先順位をどう設定するか、ガイドラインを明確にする必要があります」
「ただ、優先順位をつけると反発も出る可能性がある」エミリーが口を挟む。「すべての国に公平性を保つように見せる必要があります」
「その通りです」コモンが頷く。「このプロジェクトの信頼性は、透明性と公平性にかかっています。国連とも連携して、スケジュールと資源配分の調整を進めます」
「さらに、施工人材の確保も急務です」田中が続けた。「各国の技術者を巻き込んで、現地で育成するプログラムを早急に開始しましょう」
「了解しました。それでは、次のステップとして、現地との具体的な調整を進めます」コモンは全員を見渡して言った。「これから忙しくなりますが、よろしくお願いします」
忙しい日々の中で
その後も、受注窓口には多くの国々からの問い合わせが殺到し、スタッフたちは対応に追われ続けた。
・・・・・・・・・
反対勢力の攻撃
冒険者ギルド株式会社のビルも、昼間の喧騒が収まり、業務終了後の静けさを取り戻していた。だが、その静寂の中、ある者たちの邪悪な計画が進行していた。
「今日は疲れたな」
菱紅商社のスタッフである田中が、書類を片付けながら同僚に話しかけた。
「毎日これだけの受注が来ると、嬉しい悲鳴ってやつだな。」
「確かにね」四菱重工の佐藤が苦笑しながら応じる。「でも、これが新しい世界を作る一歩だと思えば、やりがいもあるさ」
その頃、責任者であるコモン(分身体)はオフィスの中央で、スタッフ全員が帰宅した後も、明日の会議資料を整理していた。
「明日のスケジュールは過密だな。受注対応だけでなく、現地での建設開始式典の準備もある」
すると、フュージョンライトのエミリーが彼女に声をかけた。
「コモン、休まなくて大丈夫?」
「私の役目はここで終わらない」コモンは淡々と答えた。「この技術を広めるためには、今が大事なんだ」
◆不穏な兆し
その頃、警備室では、セキュリティチームが監視カメラの映像をチェックしていた。シンガポールの夜景が広がる中、何の変哲もない映像が続いていたが、ある警備員が眉をひそめた。
「ん?あれは、?」
彼が指差したモニターには、通常の輸送用ドローンとは異なる、不審な大型ドローンがビルへ接近してくる様子が映っていた。
「警戒レベルを上げろ!緊急事態かもしれない!」警備責任者が指示を出す。
一方で、ビルの外では、通りを行き交う人々が、その不気味なドローンの存在に気づき始めていた。
「何だ、あれは?新しい配達用のドローンか?」
「いや、何か大きすぎないか?」
その疑念が広がる中、ドローンはビルに向かって速度を上げ始めた。
攻撃開始
ギルドビルの警報が鳴り響く。
「警戒レベルを最大に!全員避難を開始!」コモンがスタッフに指示を出す。
「何が起きているんだ?」田中が慌てて声を上げる。
「不審な大型のドローンが接近中です!」警備チームの一人が息を切らしながら説明する。「おそらく自爆攻撃かもしれません!」
「自爆攻撃だと?!」エミリーが驚愕の表情を浮かべる。
「全員、避難経路に従え!地下の避難所に逃げろ」コモンが冷静に指示を続ける。
「私が防御措置を起動します」
彼女はビルの防御システムを操作した。結界の魔法陣が起動して、ビル全体を結界で覆った。
一方、警備チームは緊急対応部隊に連絡を取っていたが、ドローンはますます接近してくる。
◆衝突の瞬間
「衝撃に備えろ!」コモンの声が響く直後、ドローンがビルの3階付近に激突。爆発音が夜空に轟き、火の手が上がった。
「結界をやぶって、ビルに激突して爆発した」コモンがいう。
「くそっ、やられた!」田中が床に伏せながら叫ぶ。
「全員無事か!?」コモンが状況を確認する。
「怪我人は出ていますが、命に別状はありません!」佐藤が答える。
「ビル内部に設置している結界が機能しているようだな。ビルの崩壊を防いでいる」コモンがいう
しかし、爆発の衝撃でビルの一部が損壊し、火災警報が鳴り続ける中、コモンは即座に次の指示を出した。
「消火システムを作動させて。負傷者を安全な場所に避難させろ。」
数十体のAIゴーレムが召喚起動し、ビル全体への侵入を警戒した。
反対勢力の意図
その頃、ドローンを操縦していた犯人グループは遠隔地で通信を続けていた。
「成功したか?」
「一部の損害を与えただけだ。思ったよりも防御が堅い」
「だが、これは警告だ。あの核融合技術を反対する意思を示めせればいい」
「目的は達成した。撤収する」
混乱が収まった後、コモンはスタッフたちを見渡して静かに語りかけた。
「今回の攻撃で分かったことがあります。これは反対勢力の警告です。これからも多くの妨害があるでしょう。うろたえてはいけません」
「もっと、防御を固めないといけませんね」エミリーが続けた。
田中も頷く。「そうだ。この程度のことは、想定内だ」
コモンは深く頷き、最後に静かに宣言した。
「これが私たちの戦いの始まりです。彼らの攻撃に屈することなく、自分たちの道を切り開きましょう」
その夜、ギルドビルは修復作業を開始し、攻撃を受けたにも関わらず、スタッフたちの決意は揺るがなかった。
コモンは、ニューヨークの研究所にいるリリィたちパーティに、シンガポールの拠点に攻撃があったことと、スタッフ全員が無事であること、規模が大型ドローンの自爆攻撃1回であったことから、反対勢力の警告であると、また、ドローンは結界を破ったと報告した。




