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第68話 核融合発電 実証プラントの完成 お披露目会 2019.9

国連総会の特別な日、ニューヨークの国連本部は世界中から集まった首脳陣や要人で賑わっていた。しかし、今日のテーマはただの国際会議ではない。核融合発電の実証プラント完成を記念したお披露目会が主題だった。


ホールには厳重な警備が敷かれ、最新の技術で設計された模型やディスプレイが展示されている。中央のステージでは、異世界からの勇者リリィが準備を整え、静かに時を待っていた。


「リリィさん、本当に今日は重要な日ですね。」

国連事務総長が微笑みながら声をかけた。


リリィは穏やかな表情で応じた。

「はい。これが多くの人々にとって、新しい希望の光となることを願っています」


「核融合発電が実現するとは、私たちの世代では想像もしていませんでした。異世界の魔法の力を改めて実感します」


リリィは控えめに微笑んだ。

「魔法そのものは道具に過ぎません。それをどう使うかが、人類の未来を左右します。今日はその第一歩です」


会場が満席になると、司会者が開会を告げた。

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。本日は歴史的な日です。核融合発電実証プラントの完成を祝い、未来のエネルギーについてお話しします。それでは、このプロジェクトを率いてくださったリリィ様をご紹介いたします!」


拍手喝采の中、リリィがステージに登壇した。その場の空気は一瞬で静まり、世界中の注目が彼女に集まった。


「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」リリィの声がホールに響く。


「核融合発電の実証プラントが完成しました。このプロジェクトは、持続可能な未来への重要なステップです。今日ここで、私は新たな提案を行います」


会場はざわめき、各国の首脳が身を乗り出して聞き入る。


リリィはプレゼンテーションを開始し、核融合発電の仕組みや環境への影響を説明した後、静かに語りかけた。


「この核融合発電システムを、どの国にも格安で提供する準備があります。建設資金の融資、施工、運用支援も含めてです」


その発表に会場中がどよめいた。前列に座っていたアメリカ大統領が隣の首席補佐官に小声で囁いた。


「信じられるか?核融合発電を格安で?リリィは一体何を企んでいるんだ?」


補佐官は眉をひそめた。

「大統領、これは単なるビジネスではないようです。国連が背後にいる以上、彼女の狙いはもっと広い視点にあるのでは。」


リリィはそのまま話を続けた。

「しかし、これらの莫大な利益は、いずれの企業や国家にも渡りません。全て、国連に委ねることを宣言します」


その言葉に会場は再びざわめき、今度は首相たちが互いに顔を見合わせた。中国の首相が手を挙げ、発言を求めた。


「リリィ様、それはつまり、核融合発電の経済的利益が一切国家には還元されないということですか?」


リリィは微笑みながら答えた。

「いえ、それは違います。利益は国連を通じて、全ての国に平等に配分される仕組みを作ります。これにより、資源の不均衡がもたらす紛争や貧困を減らすことができます」


ロシアの首相も興味深げに質問を投げかけた。

「では、我々が抱えるエネルギー問題や、インフラ整備の遅れにどのように対応するのか、具体的に教えてください」


「もちろんです。」

リリィはプロジェクターを使いながら答えた。

「このシステムは、どの国にも導入可能な設計です。さらに、建設資金の貸し付けには特別な条件を設けています。経済力に応じて柔軟な返済計画を立てることで、負担を軽減します。そして、導入後の運用に必要な人材の育成も含めて、全面的にサポートします」


その説明に、会場は納得したような雰囲気に包まれた。


会議の後半、大統領が発言を求めた。

「リリィさん、ひとつだけ気になることがあります。もしこのプロジェクトを管理する国連が腐敗したら、どうなるのですか?」


会場が静まり返る中、リリィは毅然とした表情で答えた。

「その懸念は理解できます。しかし、このシステムの運営は完全に透明性を保ち、国際警察による監視と運用を取り入れます。また、世界中の市民が情報にアクセスできるようにします。国連が腐敗する余地を限りなくゼロにする仕組みを構築します」


最終的に、リリィは締めくくりの言葉を述べた。

「私は異世界から来た者ですが、私の願いは、ここにいる皆様と同じです。持続可能で、平和な未来を作ること。その第一歩として、核融合発電システムを世界中に提供し、新たなエネルギーの時代を築くことを約束します」


大きな拍手とともに、リリィの演説は幕を下ろした。


会場を後にする各国の首脳たちは、興奮気味に議論を交わしていた。

「これは新たな時代の始まりだな。」

「私たちの国も早速導入を検討しなければ。」


・・・・・・・・・


リリィの演説が終わり、ホールの別室では各国の首脳や代表者たちが集まり、意見を交わしていた。全体的に熱気が漂う中、その議論は早くも賛否両論に分かれ始めていた。


石油産出国の代表たちの反応

「これは聞き捨てならないな。」中東の某石油大国の大臣が声を上げた。「核融合発電が普及すれば、我々の資源はどうなる?我々の国の経済は石油に依存しているのだ!」


隣に座る別の石油産出国の代表も頷く。「確かに!核融合が世界中で利用されれば、石油価格は暴落し、私たちの国民が大きな打撃を受ける。」


アフリカの産油国代表が静かに口を開いた。「しかし、核融合発電は環境にも優しい。我々もいつかは石油からの脱却を目指さなければならない。リリィ様の提案は、未来のために必要な一歩ではないのか?」


「未来のため?今現在の利益を失ってまでか?」中東代表が苛立ちを隠せない声で応じた。「我々は、エネルギー資源を武器にしてきた。それを失えば、国際社会での影響力も消え去る!」


天然ガス産出国の懸念

「石油だけでなく、天然ガスも同じだ。」ロシアの代表が低い声で言った。「我が国の輸出の大部分は天然ガスだ。もし核融合が普及すれば、ヨーロッパ市場への供給も縮小する。」


ヨーロッパの代表者が反論する。「だが、ロシアさん、我々もエネルギーの安全保障を考えねばならないのだ。核融合発電は、自給自足のエネルギーを可能にする。我々はそれを無視できない。」


「安全保障か。それはあなた方にとって都合の良い言い訳に過ぎない。」ロシア代表は冷ややかに笑った。


賛成派の意見

一方、リリィの提案を歓迎する声も多かった。


「核融合発電は、我々の国にとって天からの恵みだ。」アフリカの小国の大統領が嬉しそうに話した。「これで電力不足に悩まされることもなくなる。産業の発展にも繋がるだろう」


「我々も同感だ。」南米の代表が手を挙げた。「リリィ様が建設資金を融資し、技術支援までしてくれるのなら、導入しない理由はない。我々はこのプロジェクトに全面的に賛成する」


アメリカ大統領の懸念

一方で、アメリカ大統領は慎重な態度を崩さなかった。


「リリィの提案は素晴らしい。しかし、あまりにも完璧すぎる気がする。」大統領は首席補佐官に小声で話しかけた。「このプロジェクトが失敗した場合、我々の信頼も揺らぐ可能性がある。国連にすべてを委ねるというのも、少々危険だ」


「おっしゃる通りです、大統領。」補佐官は頷いた。「ですが、核融合発電の成功はアメリカにとっても大きな利益をもたらすでしょう。慎重に監視しつつ、導入を進めるべきかと。」


リリィの説得

議論が続く中、リリィは各国の代表者たちの意見を聞きながら、丁寧に対応していた。


「確かに、化石燃料産業に影響を及ぼすことは避けられません。しかし、私はその変革を支えるための対策も考えています。核融合発電の導入による利益の一部で、化石燃料を購入して、保管しておきます。化石燃料は、工業製品の原料として、今後も、長期に必要なのです。また、産出国の経済転換を支援する基金に充てることを提案します」


リリィが提案を終えると、ホールは一瞬静まり返り、その後、ざわめきが広がった。議場のあちこちから意見が飛び交い始めた。


石油産出国の代表たちの反応

「リリィ様、提案には感謝します。」中東の某石油大国の代表が手を挙げて発言する。「しかし、核融合発電によってエネルギー需要が激減すれば、我々の輸出量は大幅に減少します。それを単に工業用原料として保管することで経済を支えられるとお考えですか?」


別の産油国の代表も続ける。「我々の国では、石油収益が国家予算の大半を占めています。その収益が激減すれば、インフラ整備や社会福祉、国民の生活全般に深刻な影響を及ぼします。経済転換には数十年の時間が必要なのです」


リリィは静かに頷きながら応えた。「ご懸念は理解しています。そのため、この変革は急激なものではなく、段階的に進める必要があります。化石燃料が工業製品に不可欠である限り、その需要を安定的に維持する仕組みを導入します。また、経済転換を支援する基金は、各国の状況に応じて柔軟に運用されるべきです」


天然ガス産出国の懸念

ロシアの代表が鋭い目つきで発言する。「核融合発電が普及すれば、天然ガスの需要も同様に激減する。我々の主要な輸出先であるヨーロッパ市場も含め、エネルギー価格の崩壊は避けられないだろう。これを補填する基金で、本当に我々の損失をカバーできるのか?」


リリィは微笑みながら答えた。「天然ガスは短期的には重要な役割を果たします。特に、核融合発電の普及が進むまでの過渡期においてです。国ごとに異なる影響を考慮し、段階的なシフトを実現するための包括的な計画を構築します」


「それでは、その過渡期が終わった後はどうなるのか?」ロシア代表は追及する。


「その時には、各国が新たな産業を構築できるように、基金を活用して人材育成やインフラ整備を支援します」リリィの声は冷静だったが、議場の空気は緊張感を増していた。


賛成派の意見

一方で、アフリカや南米の国々からは賛成の声も挙がった。


「私たちにとって、これはまさに希望の光です!」南米のある国の大統領が声を上げた。「核融合発電が普及すれば、電力不足に悩む多くの人々が救われます。そして、基金があれば、貧困から脱出する道も見えてきます」


アフリカの小国の首相も続けた。「私たちが依存しているエネルギー源は高価で、不安定です。核融合発電による安定した電力供給は、教育や医療の発展にも繋がるでしょう」


アメリカの慎重な立場

アメリカ大統領が発言を求めた。「リリィさん、あなたの提案には共感する部分が多い。しかし、私は一つ懸念があります。それは、これほど大きな経済的変革が、世界の安全保障にどのような影響を与えるのかという点です」


リリィは大統領の目を見つめながら答えた。「ご懸念はもっともです。そのために、国際警察や監査機関を強化し、このプロジェクトの透明性を保つことが必要です。安全保障への影響を最小限に抑えるために、国ごとの状況に応じたアプローチを取ります」


反対派と賛成派の激突

議場は次第に熱を帯びていった。


「基金だけで問題を解決できると思うな!」中東の代表が叫ぶ。


「未来を見据えない者は過去に縛られるだけだ!」南米の代表が応酬する。


リリィは議場の喧騒を静かに見渡し、最後に再びマイクを握った。


リリィの締めくくり

「皆様、この議論が白熱するのは、それだけ大きな変革である証拠です。しかし、変革には必ず痛みが伴います。それでも私は信じています。皆様が力を合わせ、この新しいエネルギー時代を共に築けると」


リリィの言葉に、議場は次第に静まり返った。

「私は皆様に約束します。このプロジェクトは世界をより良い方向に導くものです。どうか、未来のために協力してください」


その言葉に、議場は再び拍手で包まれた。しかし、それは、表面だけのこと。その裏で巻き起こる反対の火種は、大きくなり、消える気配を見せていなかった。


最終的な流れ

最終的に、多くの国が核融合発電の導入に前向きな姿勢を示しつつ、石油・天然ガス産出国や一部の勢力からの反発は続いた。それでも、リリィは毅然とした態度で言葉を締めくくった。


「未来を築くのは、変化を恐れずに進む勇気です。皆様の英知と協力を得て、このプロジェクトを成功させましょう」


議論は尽きなかったが、国際社会は、核融合発電という新たな時代へと、ゆっくりと進み始めた。

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