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第66話 バハマ ハリケーン対策 その5 2019.9

◆国連での報告


ハリケーン・ドリアンの発生を未然に防いだバハマでの作戦から数日後、リリィたち『虹色の風』はニューヨークへと降り立った。


目的はただひとつ、国連本部で開かれる災害対策特別会議にて、世界各国の代表を前に成果を報告することだった。


高層ビルが林立する摩天楼の中、厳粛な雰囲気が漂う国連ビルの会議室には、世界中から集まった防災・気象機関の要人たちの姿があった。

その中央、円卓状の席に囲まれるように設けられた演壇に、リリィたちが招かれた。


壁一面に設置された巨大スクリーンには、バハマ作戦の映像が映し出されていた。

泡を放出するクジラゴーレム、次々と出撃するイルカ型ゴーレム、浮島“ドーナツ島”でのメンテナンスの様子。魔法と科学が融合した、災害対策が映し出されている。


会場の注目が集まる中、国連事務総長・アンサがマイクを手に取った。


アンサ事務総長「リリィさん、あなた方のチームが成し遂げたことは、災害対策の歴史において革命的な出来事です。ぜひ、詳細をお聞かせください」


リリィは静かに立ち、壇上に上がった。

一度深く息を吸い、落ち着いた声で語り出す。


リリィ「私たちは、バハマ政府をはじめとする関係諸国と連携し、ハリケーン・ドリアンの発生海域にて、深海冷水を活用した気象抑制作戦を実施しました。クジラゴーレムを投入し、深海2000メートルから冷水を泡として海面に引き上げることで、海水温を目標の26.5度以下に下げることに成功しました」


会場内に映像と解析グラフが表示される。

泡の放出とともに急激に低下していく海面温度。

そこには、冷却効果の具体的な数値が記されていた。


続いて、コモンが補足する。

コモン「作戦初期段階では一定の成果が出ましたが、周辺の高温海水によって一時的に効果が打ち消される場面もありました。そのため、イルカゴーレムとコンテナゴーレムを追加投入し、作戦範囲を広域に拡張しました」


ジャックも前に出て、戦略的な調整について語る。

「さらに、熱帯低気圧の連続発生という異常気象に直面し、補給と運用拠点の確保が急務となりました。そこで我々は、魔法技術を活用し、洋上にダンジョンコアで生成した浮島、“ドーナツ島”を展開しました。これにより、ゴーレムのメンテナンスと再配置が可能となり、持久戦に対応できました」


場内には驚きと感嘆の声が上がった。

会議出席者たちは次々にメモを取り、スクリーンに映る技術に見入っていた。


ドイツ代表「つまり、魔法技術と人工衛星の監視、それにゴーレムの活用がこの成功の鍵ということですね」


フランス代表「この手法が実用化されれば、今後のハリケーンや台風による被害を劇的に抑えられる可能性がある。実に興味深い成果です」


アンサ事務総長が再び立ち上がり、厳かな声で告げた。

「この成果は、気候変動時代における新たな災害対策の礎です。国連としても、この技術を国際災害対策プログラムに組み込み、各国での活用を推進したいと考えています」


それを受け、満場一致で拍手が巻き起こった。


リリィは一礼しながら、最後の言葉を述べた。

「私たちは、ただひとつの災害を防いだのではありません。世界の海と空を守るため、これからも技術を磨き、命を守る行動を続けていきます」


静かに、しかし確かな決意のこもった声だった。


そしてその日。

クジラゴーレムと泡の作戦は、正式に国連の災害対策標準技術として認定された。


・・・・・・・・・・・・・


ニューヨークの拠点にて


秋風がビルの谷間を抜けるニューヨーク。

リリィたち『虹色の風』は、国連での報告を終え、拠点となっている高層タワーの一室に戻っていた。


作戦の成功の余韻に包まれるかと思いきや、会議室ではなんとも不思議な論争が続いていた。


ガルド「いや、ブルーがいいぞ。やっぱり海の色だし、見た目が強そうだ」


コモン「いやいや、警戒色でいくならイエローがベストだ。目立つし、安全確認にも役立つ」


ジャック「レッドだろ。やっぱり赤が一番、戦う感じが出ててかっこいい」


マーガレット「ピンクがいいニャ。ピンクの水玉ニャ!絶対に可愛いニャ!」


ジャック・ガルド・コモン「「「それは却下だ。」」」


マーガレット「リーダー、皆がいじめるニャ~!」


リリィは微笑を浮かべて、机の端に肘をつきながら首をかしげた。

「そうねぇ、どれも一理あるけど、決めかねるわね」


そこへマモルが控えめに部屋に入ってきた。

「リリィさん、何ですか? この騒ぎは・・・」


リリィはくすっと笑って、マモルの方に向き直った。

「実はね、クジラゴーレムを追加で千体、世界中の海に回遊させる計画を立てているの。その色をどうしようかって、みんなで決めてたのよ。」


マモルはなるほどと頷き、部屋をぐるりと見回した。

「みんな、好きな色が違うんですね。でも、世界は広いですし、エリアごとに色分けすれば、全部採用できるんじゃないですか?」


その一言に、空気がぴたりと止まった。


リリィ「それ、いい案ね!」


マモルの案に皆がうなずきはじめ、リリィは素早くマップを机に広げた。


リリィ「じゃあ、サイクロンの発生海域を三つ、ハリケーンの発生域を二つ、それに台風のエリアを加えて、六方面に分けましょう。私は白にする。マモル、あなたは?」


マモル「じゃあ、グリーンでお願いします。」


リリィはあみだくじを即席で描きながら、笑顔で言った。


リリィ「サイクロンの発生海域:

・アフリカ① レッド

・インド方面② ブルー

・オーストラリア③ ホワイト


ハリケーンの発生海域:

・バハマ方面④ イエロー

・アメリカ西海岸⑤ ピンクの水玉


タイフーンの発生海域⑥ グリーン!」


ジャックがやや不満げに問い返す。

「ピンクの水玉って、いいのか?」


リリィはきっぱりと微笑んだ。

「可愛いからいいのよ。視認性も高いしね。」


ガルド「そ、そうか。納得・・するしかないか。」


コモンは端末を操作しながら、落ち着いた声でまとめに入った。

「それじゃあ、アーロンに連絡しておく。クジラゴーレム千体追加発注。各方面に配置し、海中に新たな“基地局”を設ける。クジラゴーレムが自力で魔石電池を交換できる設計に改良してもらう」


ジャック「それならメンテナンスの頻度も減るな。北半球と南半球で半年交代で回遊させれば効率的だ。」


コモン「さらに海中基地にはイルカゴーレムを常駐させておけば、港の拠点から毎回高速艇を出す必要もない」


ジャック「高速艇の増産を抑えられるのは助かるな」


コモン「そうだ。イルカゴーレムの色も、方面別に分けておくか?」


リリィ、ガルド、ジャック、マーガレット、マモル「「「「「賛成~!」」」」」


こうして、世界中の海を守るための“カラフルな守護者たち”が着々と準備されていった。

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