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第60話 核融合発電 実証プラント建設計画 2019.5

アメリカ西海岸。紺碧の空の下、光り輝く高層ビル群の一角に、その企業はあった。フュージョンライト社本社。未来のエネルギーを担う技術集団として、世界中の注目を集める企業だ。


大きなガラス張りの会議室の扉が開き、リリィ、ジャック、ガルド、そしてマーガレットが足を踏み入れた。


出迎えたのは、まだ三十代半ばに見える、快活な男だった。


アレックス・コールマン フュージョンライト社の若きCEOが、満面の笑みで手を差し出した。


「リリィさん、皆さん、ようこそフュージョンライトへ!新素材の件、聞いてますよ。いよいよ、核融合発電の扉が開きそうですね」


リリィは柔らかく微笑み、握手に応じた。

「ありがとうございます、アレックス。素材の目処がついた今、次は実証プラント建設の話を進めたいと思います」


ジャックが静かに資料を広げると、机の上に鮮やかな赤色の結晶が現れた。

「これが、ルビーフィッシュの額から採取したルビーです。特殊な波長で安定的にエネルギーを増幅する性質を持ち、1億度のレーザーを維持できます」


アレックスの目が輝いた。

「そんな高出力に耐える素材が、実在するとは。理論上は可能だが、現実に手に入るとは思わなかった」


今度はガルドが腕を組んで口を開いた。

「さらに、容器には火炎ドラゴンの鱗をミスリル銀で強化した合金を使う。これなら、2億度の超高温にもびくともしない」


「2億度……!」アレックスは椅子から乗り出した。「信じられないが、あなた方なら可能なのかもしれない」


マーガレットがにっこり笑いながら補足する。

「燃料も心配いらないニャ。三重水素は、私たちが月から安定供給してるニャ」


「素材面は、ほぼ完璧に解決したということですね」アレックスは小さく頷いた。


ジャックがタブレット端末を操作し、会議室のモニターに映像を表示した。

「これが、先行して設置した実験施設のデータです。レーザー照射は1億度を安定維持しています。すでに成功の兆しは見えています」


アレックスは立ち上がり、ホワイトボードにマーカーで図を描き始めた。

「中心にレーザーシステムを設置し、その周囲に耐熱容器。冷却系統を構築し、熱交換システムで電力を取り出す設計でいきましょう」


リリィがすぐに応じる。

「熱交換には、日本の四菱重工のプラズマ発電技術が有効です。高温流体を扱うノウハウがあります」


ジャックも頷いた。

「四菱重工の制御技術は信頼できる。連携すれば発電効率が大きく上がります」


アレックスは満足げにうなずいた。

「異世界の素材、日本の技術、そして我々の発想。完璧な組み合わせだ」


ガルドが地図を広げ、指を置く。

「建設場所はアメリカ西海岸の砂漠地帯がいい。広くて安全、外部への影響も少ない」


リリィが静かに答える。

「土地の取得は既に菱紅商社に依頼しています。陽光発電も組み込めば、補助電力にもなりますね。環境負荷も抑えられる」


・・・


その後、フュージョンライト社と日本の四菱重工とのビデオ会議が始まった。画面に、プロジェクトリーダー・伊藤雅史が映し出される。


伊藤リーダーが、柔らかく会釈する。

「リリィさん、アレックスさん。四菱重工として、このプロジェクトに参加できることを光栄に思います」


アレックスが尋ねる。

「プラズマ発電の応用について教えていただけますか?」


伊藤リーダーは落ち着いた声で答えた。

「核融合で発生する熱で液体金属を作りプラズマ状態に変換し、それを磁場で制御する技術です。この制御されたプラズマをコイルに通すことで、発電効率を大幅に向上します」


ホワイトボードに描かれた模式図を見て、ジャックが感心したように呟いた。

「超伝導磁石を用いてパイプに垂直な方向に磁界をかけ、パイプに液体金属プラズマの流体を流すと、パイプ内に張った電極を通して横方向に電流が流れるという仕組みでしたね」


伊藤リーダーはさらに説明を続けた。

「以前は、電極の腐蝕が大きな課題でしたが、今回の新素材でその問題もクリアできました」


リリィは頷き、はっきりと言った。

「私たちの素材と月面の三重水素供給体制があれば、実証プラントの柱になりますね」


伊藤リーダーは柔らかく微笑む。

「ええ。技術と素材、そして資金。それらが一体となれば、核融合は夢ではなくなるでしょう」


会議の終わりに、リリィは静かに語った。

「この実証プラントが完成すれば、地球の未来は変わる。化石燃料に頼らない、新たな時代の始まりになる」


アレックスは力強く拳を握った。

「必ずやり遂げましょう。これは未来のための挑戦だ」


こうして、異世界と現代、東洋と西洋の知恵が結集し、核融合発電の夢が現実のものとして動き出した。


建設資金は、すべて『冒険者ギルド株式会社』が負担するという確認がなされ、開発の課題はすべてなくなった。会議室は静かな熱気が満ちていた。

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