第53話 インドネシアの火山資源工場プロジェクト その3 2021.4
~インドネシアから始まる資源革命~
【アナク・クラカタウ火山・工場群中枢区画】
それは、真っ赤な大地に築かれた工場群だった。
地熱と溶岩のエネルギーを直接吸収する中央炉、放射状に広がる精錬ライン、そしてマナセラミックで補強された巨大ドーム。リリィたちの構想は、1年の歳月を経て、ついに“火山資源工場群の中枢”部分を完成させた。
工場は鉄、チタン、アルミニウム、耐熱ガラスなどを高純度で精製できる最新設備を備え、地熱による発電と魔導循環炉によって、エネルギーの自立稼働も実現していた。
ジャックが稼働中のラインを眺めながら呟いた。
「見事なものだ。技術的に、現代のどの工場よりも進んでる」
コモンが資料をめくりながら言う。
「建設済みは12棟。来年には30棟以上に増える予定だ。だが、問題はこの先、“世界の目”が集まり始めている」
【ニューヨーク・国連本部】
季節が巡り、世界の主要国が集まる場。
ニューヨークの国連総会において、インドネシアの火山資源プロジェクトは、ついに正式議題として扱われることになった。
壇上に立つのは、リリィ。『虹色の風』のリーダーにして、異世界の技術をこの世界に伝える者。
スクリーンには、火山資源工場群の構造と実績、今後の生産予定が次々と映し出されていた。
リリィはゆっくりと語り始めた。
「火山は、かつて脅威であり、手を出せない存在でした。しかし私たちは、そのエネルギーと資源を制御し、新たな産業として確立しました」
会場に静かな緊張が走る。
「私たちは、インドネシアに続いて、工場群を希望する国を募ります。それは火山を持つ、例えば、フィリピン、パプア、ペルー、ルワンダ、アイスランドなどです。同様の火山資源工場を建設していきます」
その発言に、数カ国の代表がざわめいた。
「ですが、海外への資源の輸出は、ほとんど行わない方針です。輸出を希望するのであれば、その国と友好関係を築き、工場を立地してください」
議場が一気に騒然とする。
代表A(某大国):
「ちょっと待っていただきたい。我々はこのプロジェクトの恩恵に預かる立場のはずだ」
代表B(既得権益国):
「資源の供給網は国際秩序に組み込まれるべきだ。我々を排除する形になるのなら、国際的な摩擦を招きかねない」
だが、リリィは落ち着いた口調で言った。
「私たちは、利益のためにこの技術を発展させたのではありません。これは、火山を持つ国が自らの資源で立ち、自立するための技術です」
一部代表が立ち上がり、明確な反対を表明する。
「資源の囲い込みは容認できない!」「それは新たなブロック経済の形成だ!」
その瞬間、リリィの背後のスクリーンが切り替わり、次々と火山を持つ途上国のリーダーたちの姿が投影された。
彼らは、リリィの支援を受けた国々の代表たちだった。
インドネシア、エチオピア、コロンビア、フィリピン、アイスランド――。
「私たちは、“与えられる”だけの国ではない。」
「火山を制することで、未来を掴めると教えてくれたのがリリィたちだ。」
その声を受けて、リリィは最後の言葉を告げた。
「この考えに反対する国家には、私たちは今後、一切の援助を行いません」
沈黙が、会場全体を包み込んだ。
「搾取のための資源供給ではなく、尊厳のための自立。それが、私たちの方針です」
クロシャがリリィに小声で報告する。
「既得権益側のロビー団体が、情報戦で我々を包囲しようとしている。しかし、すでに情報源は抑えてある」
リリィは静かに笑った。
「ありがとう、クロシャ。なら、あとは前に進むだけね。」
世界の秩序が、静かに、しかし確実に揺れ始めていた。




