第51話 インドネシアの火山資源工場プロジェクト その1 2019.4
第23-1話 インドネシアの火山資源工場プロジェクト始動! 2019.4
~工場建設の準備と企業との契約~
【ジャカルタ・インドネシア政府庁舎】
熱帯の空の下、ジャカルタの政府庁舎では、重みのある会議が始まっていた。会議室の空気は張りつめていたが、リリィたちは落ち着いた表情を崩さなかった。
会議の中心に座るのはジャヤ大統領、隣にスジャナ内閣官房。その向かいに座るのは、異世界から来た冒険者たち『虹色の風』の面々だった。
ジャヤ大統領が言葉を発する。
「住民たちの同意が得られたと聞いて、安心しました。では、いよいよ工場の建設に進むのですね。」
リリィは微笑みを浮かべてうなずいた。
「はい。設計はすでに完了しています。あとは、信頼できる企業との契約を進めるだけです。」
「どの企業に依頼するつもりですか?」
スジャナ官房長官の問いに、ジャックがホログラムを展開しながら答えた。
「菱紅商社を中心に、日本とインドネシアの建設企業を協力体制に組み込んでいます。地元雇用の創出も考慮していますので、インドネシア国内の企業にも積極的に参画いただきます」
スジャナは眉をひそめながら尋ねた。
「しかし……溶岩を扱う建設など、前例がありません。技術的なリスクが高すぎるのでは?」
その言葉に、リリィたちは一瞬も動揺せず、コモンが笑みを浮かべて応じた。
「もちろん、想定済みです。高温への耐久設計だけでなく、火山活動の異常発生も含めて、すでに第2、第3の対策まで織り込んであります」
「え?」
スジャナの表情が驚きに変わる。
リリィは穏やかに言った。
「この地で火山を利用する以上、突発的な噴火やマグマの流路変化は予測に含まれると考えました」
ジャックが続ける。
「たとえば、ダンジョン技術による地盤安定化は、想定以上の揺れにも対応可能な多層構造です。加えて、マグマの急激な噴出に備え、魔法による圧力逃がし機構を複数設置済みです」
スジャナは目を丸くしながら言った。
「そ、そこまで? では仮に、火山活動が活発化しても?」
リリィは微笑んで立ち上がり、黒板に描かれた火山断面図を指差した。
「その場合、転移魔法による“逃がし口”が自動起動し、マグマを太平洋の深海噴出孔に送り出す設計になっています。実際、数日前に予備実験も行いました」
ガルドが腕を組んでうなずく。
「問題はない。オレが転移魔法陣の調整を担当してる。どんなマグマでも、俺が飛ばす」
スジャナが小さくため息をつく。
「心配のしすぎだったようですね」
「ええ。でも、慎重なご質問は歓迎です」
リリィは、スジャナに向かって頭を下げた。
【東京・菱紅商社本社】
日本に戻ったリリィたちは、東京の中心部にそびえる菱紅商社の本社ビルを訪れていた。
三田部長が満面の笑みで彼らを出迎える。
「よく来てくれました! 契約の確認に入りましょう」
大型スクリーンには、プロジェクトの全体像が映し出された。
◇ 建設地:アナク・クラカタウ火山周辺
◇ 設備:溶岩抽出施設、耐熱レンガ工場、高温精錬炉
◇ 主要資源:鉄・アルミニウム・チタン・二酸化ケイ素
◇ 協力企業:日本×インドネシアの共同体制
◇ インフラ:港湾・道路は政府協力下で整備
「当社としても全面的に協力します。すでに耐熱技術の専門企業や、地熱エネルギー関連のパートナー企業とも連携を始めています。」
ジャックが補足する。
「溶岩の処理には特殊な耐熱材が必要ですが、その研究も並行して進めています」
三田部長が笑って言った。
「何かトラブルが起きても、君たちなら大丈夫だと、上層部は信じていますよ」
リリィは軽く笑って答えた。
「ええ。火山も魔物も、慣れてますから」
【ジャカルタ・建設業界会議】
リリィたちは再びジャカルタに戻り、建設業界の代表者たちと顔を合わせていた。
「しかし・・、溶岩地帯での作業は危険すぎるのでは?」
ある建設会社の代表が慎重に言った。
コモンが答える。
「確かに、高温の作業環境は危険ですが、我々のゴーレム技術を使えば人間が立ち入る必要はありません。炎の中でも作業できる“耐熱型ゴーレム”を投入します。必要ならVRゴーグルで遠隔操作できます」
「基礎部分は、ダンジョン技術で溶岩の熱と揺れを吸収するよう強化しています。今後、同様の技術はインドネシアの他の火山地域にも応用可能です」
リリィが優しく言葉を添える。
「安心して下さい。これはただの建設計画ではなく、皆さんの技術の進化と、安全な未来を築くための挑戦なのです」
【火山を利用する未来へ】
こうして、火山資源工場の建設は本格的にスタートした。
◇ 地盤整備、インフラ構築の開始
◇ 日本・インドネシアの技術連携が稼働
◇ マグマ誘導対策・ダンジョン圧力逃し装置はすでに稼働状態に
コモンが報告した。
「火山の揺れ、明日には少し大きくなる可能性がありますが、既に転移圧力ルートが稼働中です」
リリィは落ち着いて言った。
「ええ。心配しなくてもいいわ。これからの未来は、この火山の力と共に歩いていくのよ」
そして、誰よりも先に、アナク・クラカタウ火山の稜線を見上げた彼女の眼差しには、確かな確信が宿っていた。




