第47話 アフリカ サイクロン対策 その3 2019.2
【マダガスカルへ】
「マダガスカルに向かうわよ!」
リリィの一声が会議室に響いた。異世界の冒険者たちで結成されたグループ『虹色の風』の仲間たちが、次なる任務の地を見据える。
「やったニャ! 何が食べられるか楽しみニャ!」
マーガレットはいつもどおり食いしん坊ぶりを発揮して飛び跳ねる。
「お前は本当に食べ物のことしか考えてないな。」
ジャックが呆れたように眉をひそめると、
「まずは首都アンタナナリボに転移して、大統領と交渉だな。」
とコモンが冷静に方針を確認した。
「そうね。国として協力してもらうには、政府の理解が必要だわ。」
リリィがうなずく。既に国連事務総長のアンサが、マダガスカル政府との面会を取りつけてくれていた。
【アンタナナリボ -大統領官邸-】
転移魔法により、リリィたちは首都アンタナナリボにある菱紅商社の支社に到着。その後、待機していた黒塗りの車で市内を移動し、大統領官邸に足を踏み入れた。
執務室で彼らを迎えたのは、ラジャオナリマンピアニナ大統領と補佐官たちだった。
「リリィさん、ご足労いただきありがとうございます。我々の国にどのようなご用件でしょうか?」
「大統領、はじめまして。私たちは、サイクロン対策のための国際プロジェクトを推進しています。今年3月に発生する可能性がある“サイクロン・イ”に備え、マダガスカルと協力体制を築きたいのです。」
「サイクロン・イ、ですか。毎年の被害は深刻です。ですが、サイクロンを防ぐなど、本当に可能なのですか?」
「可能です。」
ジャックが一歩前に出て、資料を広げる。
「海面温度の上昇がサイクロン発生の一因です。私たちは、深海の冷たい海水を泡で海面に送り込む技術を持っています。それにより、海水温を数度下げることが可能です。」
「既に他地域での実験で効果を確認しています。」
コモンが追い打ちをかけた。
「ふむ……それが本当なら、国としても大いに関心があります。具体的には、何を協力すれば良いのでしょうか?」
「港の協力をお願いしたいのです。」
リリィが答える。
「高速艇を運用するための拠点が必要です。東海岸のトアマシナ港を拠点にしたいと考えています。」
「トアマシナ……確かに最大の港です。マハジャンガもありますが、被害が大きくなるのは東海岸。トアマシナに絞った方が良さそうですね。」
「艇の運用には燃料、整備施設、人員の確保が不可欠です。地元の協力が重要になります。」
「分かりました。我が国としても国家プロジェクトとして支援します。ただし、国民に理解を得るため、情報発信や説明会をお願いします。」
「もちろんです。私たちも力を尽くします。」
リリィは深く礼をした。
【トアマシナ港 -高速艇の拠点選定-】
数時間後、リリィたちは大統領の手配した大型ヘリでトアマシナ港へ向かった。広大な港には、すでに漁業関係者や港湾管理局のスタッフたちが集まっていた。
「ようこそ、リリィさん。ここが我が国最大の港、トアマシナです。」
港湾管理局長が出迎える。
「ここを拠点にしたいのですが、まず高速艇30隻分の発着スペースを確保したいのです。」
リリィが地図を指し示しながら説明する。
「サイクロンの兆候が見えたら、イルカ型の海洋作業用ゴーレムを一斉に出動させ、深海から冷水を噴出させます。」
「整備工場と燃料備蓄も必要です。緊急時の補給ルートも整えたい。」
ジャックが補足した。
「このあたりから20キロ沖に出れば、深海に届く水深2000メートルの地点があります。」
港湾局長が頷く。
「それならば、高速艇の機動力で対応可能です。」
「港の一部を借りて、対策拠点として整備させてください。」
「分かりました。我々も協力しましょう。」
一人の漁師が質問した。
「もしサイクロンを抑えられるなら、網も船も無事ってことだな?」
「その通りです。」
リリィが力強く答えた。
「毎年、サイクロンで船を失うのはもうごめんだ。賛成するよ!」
港湾局長が提案する。
「ならば、正式合意の前に、まず一度実験を行ってはどうです?泡を発生させるところを見せれば、国民の理解も深まります。」
「いい案ですね!数日後に実験を実施しましょう!」
リリィは満面の笑みで答えた。




