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第45話 アフリカ サイクロン対策 その1 2019.1

ニューヨーク拠点の朝。広々としたリビングに冬の陽が差し込み、朝食後の静けさが室内を包んでいた。


その空気を破るように、マーガレットがリリィの元に駆け寄った。


「リーダー、また未来の自分からメッセージが来たニャ。今度は2カ月先からニャ」


リリィは息をつき、頷いた。

「またこのパターンね。みんな、会議を開くわよ。すぐにリビングに集合して」


数分後、メンバーたちがソファに腰を下ろすと、マーガレットが中央に立ち、手元のメモを見ながら語り始めた。


「2019年3月、モザンビーク、ジンバブエ、マラウイをサイクロン・イが襲って、1000人以上が死亡、数百万人が被災するニャ」


ジャックが腕を組んで眉をひそめた。


「国が3つも被災って、相当な規模だな。これは放置できない」


リリィは真剣な表情で頷く。


「被災後の救援も大事だけど、根本的にはサイクロンを発生させないのが一番ね」


「海水温が上がるとサイクロンが生まれやすくなる。つまり、海水温を下げれば、抑えられる可能性があるな」 ジャックが分析する。


「南極から氷山を転移させるのはどうだ?」 ガルドが口を挟む。


「それは生態系に影響が大きすぎる。海水の塩分濃度が変われば、海洋生物にも打撃だ」 コモンが冷静に否定した。


ギルスが考え込みながら提案する。


「じゃあ、宇宙空間に反射膜を持ったドローンを浮かせて、日射を遮る。日陰を作るってのはどうだ?」


「アイデアはいいけど、地球の技術では制御が難しい」コモンが小さく首を振った。


そこで、マモルが手を挙げた。


「僕も一つ思いついた!泡を使うんだ。深海で泡を発生させて、冷たい水を海面に引き上げるんだよ!」


リリィは興味深そうに振り返る。

「泡で?それって、どうして海水温が下がるの?」


「水深2000メートル付近の海水温はおよそ4℃なんだ。そこで泡を発生させて、冷たい水を上昇させれば、海面の温度が下がるよ!」


コモンは眼鏡を押し上げながら頷いた。

「それは理にかなってるな。コンテナゴーレムを沈めて、転移魔法で空気を送り込む。確かに、理論上は海水の対流を生み出せる」


「じゃあ、実験ね」 リリィが立ち上がった。 「マンガン団塊を取りに行くついでに、深海で泡を発生させて、温度変化を観測しましょう」


◆深海実験とマンガン団塊の採掘


「準備は任せろ」 ガルドが立ち上がり、転移陣を展開した。


黄金虫ゴーレムが転移され、マンガン団塊があるとされる日本の南の海域に展開される。それに続き、複数のコンテナゴーレムが次々に転移されていく。


「これで海上に連結させて、浮島を作る」 ジャックが言い、命令する。


その数分後、コンテナゴーレムが繋ぎ合わされ、波間に浮かぶコンテナの浮島が完成した。


ガルドが戻ってきて報告する。


「現地の準備完了だ。さあ、行こうぜ」


リリィたちは地下のガレージから、転移魔法陣を使って現場へと向かった。


波に揺れるコンテナの上、リリィは足元を見て小さくつぶやく。


「かなり揺れるわね。コモン、ダンジョンコアで安定させられる?」


「任せてくれ」 コモンがダンジョンコアを床に設置し、見えないタッチパネルを操作する。


やがて浮島は静まり返り、波に揺れることなく安定する。


「直径300メートルのドーナツ型の浮島にした。中心が作業スペースだ」


リリィは笑顔で頷いた。

「ありがとう。結界と認識阻害も同時に展開するわ」


彼女の周囲に魔法陣が浮かび上がり、透明なバリアが浮島を包む。これで、海上からも空からも、存在が認識されなくなる。


「さあ、泡の実験を始めましょう」


・・・・・・・・・


◆海底調査と新たな資源戦略


リリィたちは、モニターの前に並び、ジャックの操作を見守っていた。画面には、海中の温度データがリアルタイムで表示されていた。


「現在の海水温は20℃だな。冬だからかなり低いな」 ジャックがタブレットを指でなぞりながらつぶやく。


「今、水深500メートル。ここで一度、海水を採取する」 ガルドがモニターの数値を確認しながら、バケツに転移させた海水を指さす。


ジャックが温度計を手に取って測定する。 「10℃か。かなり冷たいな」


さらに、コンテナゴーレムを深く沈め、次は水深2000メートルへ。 転移されたバケツを見て、ジャックがもう一度測る。


「4℃だ。やっぱり、深海の水は冷たい」


リリィが頷く。 「一旦、ここで止めて、泡を発生させてみましょう」


◆泡の影響の検証


コンテナゴーレムから空気を送り込む仕組みが作動し、深海に大量の泡が送り出された。海流の流れに乗ったのか、20分後、海面の東側に泡が現れ始める。


「泡が出てきたな。ここだ」 ジャックが泡の近くの海水を採取し、温度を測る。


「6℃だ。ほとんど深海の温度のままだ」


「成功ね。この方法なら、サイクロンの発生を抑制できるかもしれないわ」 リリィの声に、みんなが頷いた。


◆マンガン団塊採掘の開始


「続いて、マンガン団塊の採取を始めましょう」 リリィの号令と共に、コモンがコンテナゴーレムの内部にダンジョンコアを設置し沈めた。


2時間後、モニターに映るのは、広がる黒い海底。写真で見た通り、球状の鉱物がびっしりと広がっていた。


「見えた。あれがマンガン団塊だ」 コモンが操作するコンソールの前で、ゴーレムたちが次々に作業を開始する。


「この海底に、ゴーレムの待機場所とマンガン団塊の保管場所、転移魔法陣をダンジョンに作っておくよ」 コモンの提案に、リリィが笑みを浮かべた。


「いいわね。ここは私たちのマンガン団塊採掘拠点よ」


ゴーレムたちは次々にマンガン団塊を集め、満杯になったコンテナはリリィたちの前に転移されてきた。


「うわ、すごい数ニャ」 マーガレットが目を輝かせながら覗き込む。ソフトボール大の黒い球が、コンテナにぎっしり詰まっていた。


◆菱紅商社との取引


「三田部長、マンガン団塊を5つのコンテナに詰めて採取しました。どこに送ればいいですか?」 リリィが通信を開き、報告する。


「ありがとうございます!すぐに指定の倉庫の場所を連絡します」 三田部長の声には高揚感がにじんでいた。


ガルドが腕を組んだままうなずいた。


「指定倉庫の場所、了解。転移するぞ」


ガルドの魔力が転移魔法陣を展開し、5つのコンテナが、次々に指定された倉庫へと転移されていく。


その隣で、コモンがダンジョンコアの端末を操作していた。


「転移魔法陣の送り先を、指定倉庫に固定。これで明日からは、毎日直接納品できる」


「マンガン団塊の件は、これで完了ね」


リリィが締めくくると、一同が深く頷いた。


「次はサイクロンの対応ニャ」


マーガレットがメモ帳をめくりながら呟くと、ジャックが軽く時計を見た。


「でも、それはまた明日にしよう。今日は、ここまでだな」


リリィが最後に告げる。


「資源は確保した。引き揚げましょう」


リリィ達は、ダンジョンコアとコンテナで作った浮島を消して、マジックバッグに収納して、ニューヨーク拠点に転移した。


・・・・・・・・

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