第33話 定例会議 2018.10
ニューヨーク拠点、秋の朝。
リビングルームの大きな窓から柔らかな日差しが差し込み、部屋には落ち着いた空気が流れていた。
リリィが一同を見渡し、
「定例会議を開くわよ。進捗管理ね。じゃあ、ジャック、司会して。」
ジャック「了解。まず、始めに、改めて目的を確認しておこう。
科学と魔法と融合させた力は、星の破局、崩壊を止められる可能性がある、そのために、
この星が、人災で滅びるのを止める必要がある。科学力を高めるように導いていく。
そのための順序は、まず、資金を作る。できるだけ多く集める。次にその金で平和の組織を作る。警察がいい。戦争や紛争をやめさせる。人を増やして、教育して、科学者を増やす。科学研究施設を増やす。科学と魔法の融合を研究する。そして、星の破局を防ぐ研究もすすめる。という計画だ。
今は、資金を集めて、平和の組織を作っているところだ。今後は、人を増やすのが、次のステップになる。もちろん、順序が前後してもかまわない。
勇者ギルド長から、与えられたクエストの期間は、わずか5年だ。」
コモンが引継ぎ、資料をもとに説明を始める。
「それでは、現在の進捗について報告する。意見があれば都度、言ってくれ。」
「当面の資金稼ぎは、菱紅商社へ金塊を販売する。月間、5億円程度、
原子力発電所の廃炉事業が当面の目標だ。プルトニウムが錬成魔法でミスリルになるからな。原子力発電所の廃炉問題が、宝の山発掘だから、有望な事業だ。福島の廃炉作業は順調、アメリカから、1件廃炉の申し込みがあった。スリーマイル島だ。それから、ウクライナのチェルノブイリ1件だ。」
それから、細胞活性装置をネットオークションに出して販売している。細胞活性装置の2個目がネットオークションで落札されたとの知らせだ。3458億ドル手に入った。後1つ販売する予定だ。これで、当面の活動資金を得ることにする。」
コモン「その3458億ドルで国際警察官を国連主導で維持、増員することにした。世界平和で人が死なないように守るためだ。」
コモン「惑星崩壊跡地の魔素だまりを利用して、人工魔石を量産するプラントを建設した。もう、魔石に困ることはないだろう。ギルスのお陰だ。」
リリィ「コンビニボーソンの試験店舗が東京にオープンして、シノブが現場監督として指揮しているわ。いずれ、世界展開を目指しているわ。」
ジャックが会議を進行しようとしたそのとき、リリィが軽く手を挙げて皆を見渡した。
「その前に、重要な人事報告があるわ」
ざわつく場に、リリィの声は静かでありながらも確かな力を持って響いた。
「今回の定例会議をもって、冒険者ギルド株式会社に2名の新たな重役を任命します」
リリィは一瞬、マモルに視線を向けた。
「まず一人目は、マモル。あなたには、広報担当役員をお願いしたいと思います」
マモルは思わず目を見開いた。「えっ、僕が?」
「SNSや動画配信を通じて、私たちの活動を正確に、わかりやすく、そして魅力的に世界へ伝える。それは、今後の戦略上とても重要な任務になるわ」
マモルの肩に手を置きながら、リリィは柔らかく微笑んだ。
「年俸は2000万円。YouTubeなどでの収益が伸びれば、それに応じて増える仕組みを用意しているわ」
「う、うん、ありがとう!が、頑張ります!」
マモルは顔を真っ赤にしながら、思わず背筋を伸ばした。広報戦略という重大な任務が、自分の手に託された責任の重さをひしひしと感じていた。
続いて、スクリーンに東京の映像が再び浮かぶ。画面の向こうで、シノブが軽く頭を下げた。
「そしてもう一人、シノブ。あなたには、店舗管理責任者としての役員任命をお願いしたい」
リリィの声に、シノブは一瞬目を見開いたが、すぐに頷いた。
「光栄です。リリィ様の信頼に、必ず応えてみせます」
「年俸はマモルと同じ2000万円。今後、店舗の拡大と売り上げの増加に応じて、業績連動で加算する仕組みにするわ」
「店舗戦略と接客AIの改善を進めます」
シノブの冷静な声に、会議室の空気がまた一段と引き締まった。
「以上、新たな二人の重役を迎えて、冒険者ギルド株式会社は、ますます発展させるわ」
リリィの言葉に、会議室には一斉に拍手が起こった。マモルはやや照れたように、シノブは落ち着いた笑みで応えていた。
ジャック「さて、ほかに意見がある者は言ってくれ」
会議の終盤、追加の意見を求めたジャックの呼びかけに応じて、メンバーたちが次々に口を開いた。
「人工魔石の量産体制が整ったのはありがたいな。今後は、防衛施設の強化にも魔石を活用できる。ニューヨーク拠点や熱海拠点の結界や迎撃装置を、今の倍の規模に拡張できるぞ。敵がまた来た時の備えとして、魔石を一定量確保しておいた方がいい」
ガルドが腕を組み、拠点全体の防御強化を提案した。
「あとニャ、防災系の準備も忘れちゃダメニャ。未来の自分からのメッセージが来たら、すぐに対応できるように常に準備しておくニャ」
マーガレットがしっぽを揺らしながら、メモ帳を抱えて言った。
「僕からもひとついいですか? 最近、国際警察組織についてのSNSの反応を見てると、まだ誤解している人も多いです。『軍隊じゃない』ってちゃんと伝えるために、分かりやすい広報動画やパンフレットを作るのはどうでしょう? 僕がナレーションでもいいですし」
マモルが遠慮がちに手を挙げ、メディア戦略の必要性を訴える。
「それと、人工魔石の応用研究を始めたい。ただの魔力供給源としてだけじゃなくて、たとえば電気と共用にするとか。エネルギー変換装置への応用も考えられる。科学との融合をさらに進めるために、研究チームを設けてもらえると助かる」
ギルスは資料端末を広げ、魔導工学の応用計画を提示した。
「こちら、東京のボーソン試験店舗です。シノブです。リリィ様の案で導入した接客AIゴーレムのバージョン2、現在テスト運用中です。評判は上々ですが、高齢者のお客様には少し声が聞き取りにくいというフィードバックがありました。音声応対の最適化を検討中です」
映像に映ったシノブは落ち着いた口調で現場の様子を報告した。
「俺からもひとつ。国際警察組織が正式に承認された今、敵対勢力の動きが活発になる可能性が高い。特にロシア、中国、そして一部の中東組織。すでに裏社会の通信で『魔法資源の確保』や『細胞活性装置の追跡』といったキーワードが出ている」
クロシャの声は低く、鋭さを帯びていた。
「次の襲撃が来るとしたら、輸送ルートの可能性が高い。いずれにせよ、情報収集のため、影ゴーレムを3倍に増やしているところだ」
彼の言葉に、場の空気が引き締まった。
メンバーたちはそれぞれの分野から意見を出し合い、会議はますます活気を帯びていた。




