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第20話: 熱海拠点への襲撃    2018.7

◆嵐の前触れ


日本・熱海。夜の海風が静かに吹き抜ける中、拠点ではいつもと変わらぬ時間が流れていた。


広々としたダイニングルームでは、マモルがコーヒーを淹れ、マーガレットが猫耳をぴこぴこ動かしながら、デザートのケーキをフォークでつまんでいる。


その時、警報音が静かに鳴った。ジャックが眉をひそめ、警報装置のディスプレイを確認する。


「リーダー、外に不審な動きがある。小型飛行体が多数。これはドローンの大群だ!」


リリィが立ち上がり、即座に声を張った。


「全員、配置について! コモン、施設内の避難ルートを確認して! ジャック、防御システムを起動して。マモル、私のそばを離れないで!」


マモルがうなずき、リリィのそばにぴたりと寄る。


外の空を見上げると、星明かりを覆うように数百機のドローンが接近していた。そのうちの一機が爆発し、濃いガスが周囲に広がっていく。


ギルスが素早く手をかざし、目を細めた。


「鑑定! これは、ただの煙じゃない! 毒ガスだ。吸えば即死レベルのものだよ!」


リリィは目を閉じ、静かに深く息を吸い込み、両手を広げると、魔法が発動した。拠点を包み込む結界が展開され、毒ガスはその外側で弾かれた。


「これでガスの侵入は防げる。でも、数が多すぎる!」


その瞬間、空間に異変が起きた。結界がぐらつき、周囲の空気がねじれ始める。


「誰かが結界を無効化している!」ジャックが叫ぶ。


「リーダー、これはただのドローン攻撃じゃない! 魔法対抗手段を持っている!」


結界が完全に崩れると、ドローンが次々に自爆攻撃を始めた。爆風が建物を揺らし、火災が発生。炎が廊下を包み始める。


リリィは全員を中央ホールに集め、再度結界を展開しながら叫んだ。


「ジャック、ゴーレムを大量召喚して! 拠点を守りきれない。ガルド、転移の準備をお願い!」


ジャックは庭に召喚陣の紙をばらまき、膨大な魔力を注ぎ込む。ゴーレムが次々と地面から出現し、拠点の周囲に散開。石や金属の巨体が自爆ドローンを叩き落とし始めた。


ガルドは上空に向かって転移陣を展開し、次々とドローンを別空間に転移させていく。


「上空の奴らは片付けた! でも、低空のやつらが厄介だ!」と叫ぶ。


木々の間をすり抜けるように飛び込んでくるドローンが、次々と建物を攻撃。さらに、毒ガスが建物の通気口を通じて内部へ侵入し始めた。


「錬成魔法・展開!」ギルスが叫び、手から放った光が毒ガスに触れ、ガスが無害化されていく。


「お花畑魔法・展開ニャ!」マーガレットが両手を上げると、拠点周辺にバラの茂みが一斉に広がった。


◆傭兵の突入


しかし、その直後。窓ガラスが破られ、黒い装備に身を包んだ傭兵たちが突入してきた。ガスマスクを着け、機関銃を構えた彼らは、無言で室内に向けて弾をばらまく。


「こいつら、火炎放射器でバラを焼き払ってるニャ!」マーガレットが叫ぶ。


「やばい! こっちに来る!」マモルが身をかがめながら叫んだ。


リリィは即断した。


「ガルド、全員を転移させて!」


「了解!」と叫ぶと同時に、ガルドは転移陣を発動。光が一行を包み、彼らは1km離れた森の中へと瞬時に移動した。


◆転移先でも続く襲撃


しかし、息をつく間もなく、ドローンの音が再び上空に響いた。どうやら転移先も特定されていたらしい。


再び、毒ガスが霧のように周囲に広がってくる。


「ガルド、もう一度転移を! 10km先の山腹、例の洞窟へ!」リリィが叫ぶ。


ガルドはポーションを一気に飲み干し、魔力を絞り出して転移陣を展開した。


「行くぞ!」叫ぶと同時に、光が再び一行を包み込む。


彼らは無事、山の中腹にある隠し洞窟へと逃れた。


◆山腹の洞窟にて


夜の山中。冷たい風が静かに吹き抜ける。避難先の洞窟の中で、リリィは魔法で光の玉を浮かべ、一行を集めていた。青白い光が岩壁に揺らぎ、メンバーの顔が不安げに照らし出される。


「今回の襲撃、ただの敵対勢力ではないわ。魔法を無効化する術を持ち、私たちの動きを完全に追跡していた。異世界の者が関与している可能性が高い。やっかいな相手ね。」

と、リリィが冷静に語る。


ジャックが腕を組みながらうなずく。

「ドローンの数、毒ガス、そして傭兵たちの装備と動き。これは明らかに国家レベルの攻撃だ。」


ガルドが腕を組みながら、静かに言った。

「ホー博士がアメリカにいてよかった。あのまま熱海にいたら、やつらに連れ去られていたかもしれん。」


すると、コモンが隣で深くうなずきながら呟いた。

「確かにな。あいつら、博士の細胞活性装置も狙ってた可能性は高い。今ごろ殺されていたかもな。」


マーガレットが首を傾げながら口を開いた。

「でもニャ、どうして私たちの転移先までわかったニャ? 何か追跡魔法かニャ」


マモルが考え込む。

「もしかしたら、人工衛星からの映像を解析してるのかも。」


リリィは表情を引き締めた。

「そんなことができるのは、限られた国だけね。やはり、ロシア。絶対に正体をあぶり出してやる。お返しは十倍よ。」


◆三田部長への報告


リリィは洞窟の外に出て、スマホを取り出した。そして菱紅商社の三田部長に連絡を入れる。


「三田部長、熱海拠点が攻撃されました。状況は最悪ですが、全員無事です。」


「こちらでも情報は入っています。すぐに新たな拠点を手配します。熱海拠点の対応は官房長官に連絡済みです。次の襲撃もあり得る。どうか油断しないでください。」


電話を終えたリリィが洞窟に戻ると、仲間たちの目には疲れが浮かんでいた。それでも、誰ひとり諦めた者はいない。


リリィは一同を見渡し、力強く言った。


「この程度、大したことじゃないわ。私たちは、どんな攻撃を受けても、負けるわけにはいかない。」


◆熱海拠点の調査と捕虜の確保


数時間後、三田部長から報告が入った。内閣調査室のスタッフが熱海拠点を調査した結果、敵はすでに撤退したとのことだった。


リリィたちは慎重に拠点へ戻った。そこはすでに半壊状態。建物は焼かれ、壁は破壊されていた。中を荒らされた形跡もあり、何かを探していたのは明白だった。


ガルドが顔をしかめながら笑う。


「リーダー、やつら何人か、転移陣の罠にかかって古井戸に落ちてる。コンクリートの蓋で固めてる。無線も通じず、逃げられなかったみたいだ。びしょ濡れで、さまあみろだな。」


リリィは微笑み、頷いた。


「ナイス、ガルド。よし、そいつらを締め上げましょう。」


マーガレットが古井戸の中にお花畑魔法を展開し、バラの蔓で捕らえられた傭兵たちを拘束。ガルドが転移魔法で一人ずつ引き上げると、リリィが結界魔法で封じ込めた。だが、結界が一部効かない者がいた。


「このネックレスのせいね。魔法を中和する仕掛けが施されているわ。」


リリィはネックレスをすべて取り外し、再度結界を張った。


◆尋問と真実


ゴーレムに囲まれて目を覚ました傭兵の一人に、リリィが問いかける。


「あなたたちは、誰の指示でここを襲撃したのかしら? 正直に答えなさい。」


男は黙り込み、目を逸らした。リリィはマーガレットに目配せする。すぐにお花畑魔法が展開され、傭兵の意識がぼんやりと揺らぎ始める。


リリィがもう一度問う。


「誰の指示で私たちを襲ったのか、教えなさい。」


「俺たちは、ただの雇われ者だ。背後はロシアだ。『殺して奪え』と言われた」


リリィは鋭く言った。


「やはり、ロシアね。」


「このネックレスは? 誰から支給されたの?」


「ロシアのやつらだ。首にかけていれば、魔法を防げるって」


リリィは冷たく笑った。


「ふん、防げる魔法は結界魔法だけよ。」 


◆再び、三田部長へ報告


傭兵の尋問結果をもとに、リリィは再びスマホを手に取る。


「三田部長、敵はロシアでした。傭兵十名を拘束しています。内閣調査室に引き渡しますので、手配をお願いします。」


「了解しました。官房長官経由で調査室に依頼します。」


リリィはマジックバッグから細胞活性装置を二つ取り出し、無事を確認した。


「敵の狙いは、やっぱりこれね。次のネットオークションは明日よ。」


彼女は、ビバリーヒルズのマクラレン氏にも連絡を取った。マクラレン氏は無事で、襲撃も受けていないとのことだった。


「私の家は地下にある核シェルターです。軍隊でも入れませんよ」と彼は軽く笑っていた。


「流石ね。」リリィは感心し、ふと呟いた。


「私たちも、核シェルターに住もうかしら。熱海の温泉施設、移設できるかしら」


誰にともなくこぼされたその独り言に、メンバーたちは静かに笑った。


マーガレットがぽつりと言う。


「ここは危険すぎるニャ。次の拠点を早く決めたほうがいいニャ。」


リリィは静かに立ち上がり、皆に告げた。


「場所を変えましょう。」


◆新たな拠点へ

 幸い、地下の転移陣は無傷だった。傭兵たちを内閣調査室の職員に引き渡したあと、リリィたちはニューヨークの研究所へと転移した。

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