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第18話 国連 常任理事国会議で提案 2018.7  

◆国連本部・安全保障理事会会議室


 マンハッタンの早朝。国連ビルの最上階にある厳かな空気が漂う会議室に、常任理事国の代表たちが集まっていた。フランス、イギリス、アメリカ、中国、ロシア、そして議長席には事務総長アンサが座っている。その後ろには、特別顧問として招かれたリリィの姿があった。


「本日の議題は、国際警察組織の創設についてです。」


アンサ事務総長が開会を宣言し、場内は一瞬の静けさに包まれた。


◆リリィの提案


リリィが穏やかな声で話し始める。


「私は、冒険者パーティ『虹色の風』のリーダー、リリィと申します。国際警察組織の創設について、ご説明させていただきます。」


「紛争や犯罪から無辜の市民を守るために、国際的な警察組織を設立することを提案します。これまでのように軍事力に頼るのではなく、新たな平和的な選択肢を示したいのです。」


「この組織は、戦争やテロを防ぎ、人命を守るための非軍事的な国際警察組織です。犯罪者の逮捕・保護活動が役割であり、あくまで“警察”です。今回、2132億ドルの資金を基に創設をご提案します。」


リリィは資料を示しながら、さらに説明を続けた。


「活動範囲は、希望する国に限定されます。主に発展途上国や治安が不安定な地域での紛争防止を目指します。安全保障理事会の承認を得たうえで、各国の主権を尊重し、協力関係を築くことを前提とします。」


一言一言を慎重に選ぶような話しぶりに、会場は自然と静まり返った。


◆常任理事国の反応


最初に口を開いたのはアメリカ代表だった。


「この提案には賛成だ。国際的な問題を平和的に解決する仕組みは必要不可欠だ。アメリカとしては、人的支援の面で協力したい。」


フランス代表が続く。


「我々も平和活動を強化する努力には賛同する。特にアフリカ諸国での紛争解決に貢献できるだろう。」


しかし、次に発言した中国代表は慎重な姿勢を見せた。


「だが、この組織は本当に中立的に運用されるのか。特定の国や勢力の利益を優先するのではないかと懸念している。」


リリィは中国代表を見据えながら答える。


「この組織は、希望する国のみで活動します。各国の主権を尊重し、内政への干渉は一切行いません。」


今度はロシア代表が口を開く。


「同感だ。この組織の活動が、我が国の内政に干渉する可能性を否定できない。ロシアは自国の治安を、他国や国際組織に委ねるつもりはない。」


リリィは冷静に応じた。


「もちろん、各国の自治権は尊重します。私たちは、希望しない国での活動は行いません。ただし、支援を求めている国々は確かに存在しています。私たちは、その希望に応えたいのです。」


事務総長アンサが提案する。


「では、活動範囲を紛争地域に限定し、常任理事国が危惧する“内政干渉”を排除する方向で調整するというのはどうでしょう?」


アメリカとフランスがすぐに賛同し、中国とロシアも不承不承ながら頷いた。


こうして、「希望する国に限定して設置・活動を行う」という条件付きで、国際警察組織の設立提案は承認された。


・・・・・・・・・・


◆ニューヨーク・アーロンの邸宅


その日の夜、リリィたち一行は、アメリカの著名な企業家アーロンの邸宅を訪れていた。邸宅はニューヨークの高級住宅街に位置するモダンで豪華な建築物で、広大な敷地にはプールや屋外ラウンジ、最先端のセキュリティ設備が整っていた。


邸宅内に案内されると、一行は巨大なリビングルームへ通された。壁一面のガラス窓からは、マンハッタンの夜景が輝いていた。


◆AIロボットとゴーレムの融合計画


大理石のテーブルを囲むように、リリィたちとアーロンが席に着く。部屋には、アーロンの開発するAIロボットのプロトタイプが展示されており、顔はあえてデフォルメされた光の粒で構成されていた。ジャックは興味深そうにそれを観察していた。


アーロンがロボットに手をかけながら言う。


「これが、僕たちの会社が開発しているAIロボットの最新プロトタイプだよ。完全な自律型AIを搭載していて、学習能力も高い。ただし、耐久性や適応能力には課題が残っているんだ。」


ジャックが頷きながら応じる。


「なるほど。我々のゴーレムは魔法で動いているから、素材の選択肢が広いんだ。石や金属、自然素材も使えるし、内部に機械構造も必要ない。けれど、言葉は話せないし、動きも攻撃的すぎる。もしAIと融合できれば、より人間に近づける可能性があると思う。」


アーロンは真剣な表情でうなずく。


「ロボットが人間に危害を加えることを避けるために、僕たちもいろいろ工夫はしている。でも、もっと安全性を高めたい。」


リリィが穏やかに微笑む。


「それはゴーレムにとっても重要な点ね。私たちのゴーレムは、人間に危害を加えるなと命令すれば、たとえ破壊されても反撃しないわ。ずっと昔から改良されてきたから、安全性には自信があるの。」


アーロンは驚いた様子で答える。


「それは素晴らしい。確かに、そこにゴーレムの優位性があるのかもしれないね。」


ジャックが少し真剣な顔になる。


「ただし、昔の話では、ゴーレムに魂を与えた研究者がいて、そのゴーレムが自分で仲間を増やして、やがて人間に反逆し、惑星全体が支配されたという言い伝えもある。だから魂を与えるのは禁忌になっている。」


アーロンが眉をひそめる。


「魂か…。もし魂の代わりにAIを使ったら、安全だと言えるのかな。」


ジャックは力強く頷く。


「魔法陣に“人間に危害を加えるな”と明確に書き込めば、安全なゴーレムになる。それが魔法の契約だ。」


リリィがにっこりと笑って言う。


「これで、あなたの技術と私たちの魔法が融合するわね。AIゴーレムロボット、きっと多くの人の役に立つわ。」


アーロンは大きく頷き、テーブルに契約書を広げた。


「この提携で、次の時代を切り開けるはずだ。この技術は災害救助やインフラ修復、医療支援にも応用できる。人口減少に悩む国々にも歓迎されるだろう。」


◆技術提携の調印


契約書には、次のような内容が明記されていた。


知的財産の共有:ゴーレムとAIを融合した技術の知的財産は、両社で共有する。


共同研究施設の設立:ニューヨークに共同研究所を設置する。


平和利用の原則:軍事利用は禁止。平和目的に限る。


資金と収益の分配:開発費は折半。収益は五分五分で配分。


製造拠点:最初の工場はアメリカに設置し、運営はアーロン側が担当。


リリィが署名し、続いてアーロンもサインした。


アーロンが握手しながら言う。


「これで正式にパートナーだ。リリィさん、そして冒険者ギルド株式会社の皆さん、よろしく頼みます。」


リリィは微笑みながら応じた。


「こちらこそ、アーロン。お互いの力で素晴らしい未来を築きましょう。」


拍手が湧き起こり、和やかな空気が邸宅を包み込んだ。


◆プロトタイプのデモンストレーション


契約調印の後、アーロンはAIロボットのデモンストレーションを始めた。


「このモデルには、自律行動AIとパワーアシスト機構が搭載されている。」


ボタンを押すと、ロボットがゆっくりと立ち上がり、大きな鉄球を軽々と持ち上げた。


ジャックが腕を組みながらつぶやく。


「興味深いけど、動きが機械的すぎるな。魔法で動かせば、もっと自然で柔軟になるはずだ。」


リリィが提案する。


「明日、実験しましょう。ジャックが魔法陣を工夫すれば、もっといい動きができるはずよ。」


アーロンは目を輝かせて頷いた。


「素晴らしい。明日、工場で実験しよう。」


◆夜が更けて


その夜、リリィたち一行は、アーロンの手配による豪華なディナーを楽しんでいた。広々としたテラスに並べられたテーブルには、色とりどりの料理が並び、キャンドルの明かりがマンハッタンの夜景と溶け合っていた。


ガルドは巨大なステーキに舌鼓を打ち、マーガレットはデザートのチョコレートケーキを前に満足そうに目を細めている。


マモルはグラスを手に、夜空を見上げながらつぶやいた。


「AIゴーレムが働く未来って、僕たち人間は、働かなくてもよくなるかもしれないんだよね。すごい時代だけど、ちょっと怖い気もする。」


リリィが優しく微笑みながら言った。


「私たちは、この力を平和のために使うわ。新しい技術は、世界中の人々に恩恵をもたらす。そう信じてるの。」


・・・・・・・・・・

◆ロシア大使館の地下


そのころ、国連本部で国際警察組織の創設が承認されたことを受け、ロシア大使館の地下では秘密会合が開かれていた。


集まっていたのは、ロシアと中国の諜報機関幹部、裏社会の高官たち、さらに複数の国にまたがる影の組織の代表たちだった。会議室の奥には、各組織の長たちがブースの中からその様子を静かに見つめていた。


円形のテーブルの中心にぼんやりと当てられたオレンジの光。そこに座る男たちの目は、いずれも冷たかった。


ロシアの諜報機関代表が口を開いた。


「国際警察組織だと? あれは我々の利益を脅かす危険な存在だ。あの“虹色の風”とやらが主導しているが、我々の活動にとって最大の障害になる。」


中国の安全保障局代表もうなずく。


「同感だ。リリィと名乗る女の存在は脅威だ。奴らの魔法と技術の融合は、我々の影響圏に干渉してくる。対処が必要だ。」


某国Aの諜報機関代表が声を潜めて言う。


「その通り。我々も警戒している。ただし、あの“細胞活性装置”は非常に価値がある。我々はそれを盗み出し、闇市場で流通させる計画を進めている。」


某国Bの諜報機関代表が応じた。


「準備は整っている。特殊部隊を日本の熱海にある拠点へ投入する。目的は“細胞活性装置”の確保と情報収集だ。奇襲なら阻止される前に終わらせられる。」


◆作戦内容の共有


会議では以下の作戦が確認された。


諜報活動の強化:ロシアと中国が協力し、リリィたちの動向を追跡。特に国連との接触、オークション参加者のネットワークを監視する。


日本・熱海拠点の奇襲:某国の精鋭部隊がリリィたちの拠点を奇襲し、“細胞活性装置”を奪取。


国際世論への干渉:国際警察組織の中立性を疑わせるプロパガンダを展開し、加盟予定国への不信感を煽る。


◆謎の黒い男の登場

そのとき、会議室の空気が一変した。部屋の隅から、黒いローブに身を包んだ男が姿を現す。顔はフードに隠れ、赤く光る瞳だけが見えていた。


「ふむ、お前たちの計画は面白い。だが、あのリリィたちを相手にするには、まだ力が足りないな。」


声は低く湿っており、どこか底知れぬ不気味さがあった。


「我々が、お前たちに“よい道具”を貸してやろう。」


男が差し出したのは、いくつかの魔道具だった。


「これは結界を無効化する首飾り。これを着けた者は、リリィたちの結界を無力化できる。」


「これは無毒マスク。毒や幻覚を無効にする。意識を保ったまま戦える。」


男の目が赤く光り、静かに続けた。


「だが、対価は高い。生きのいい人間の魂を百個だ。」


その場にいた者たちが一瞬たじろぐ。しかし、なぜかこの男の言葉に逆らおうと考えるだけで、死の恐怖とめまいが襲ってくる。


誰も異を唱えられなかった。


ロシア、中国、その他諜報勢力の代表者たちは、互いに視線を交わし、静かに頷いた。


「“虹色の風”は敵だ。奪え、潰せ、それが我々に利益をもたらす。」


冷たい決意とともに、秘密会合は閉じられた。

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