第11話 定例会議で、今後の方針 2018.4
2018年4月。熱海の拠点、リビングルーム。リリィが一同を見渡して口を開いた。
「株式会社って、たまに会議をして進捗を確認しないといけないらしいの。それと年に一回は“総会”っていうのを開く必要があるみたい。詳しくは知らないけど。じゃあ、ジャック、あとはお願い」
「了解」
ジャックが頷き、司会の立場で話し始めた。
「まず、いろいろなことが日々起こっているから、改めて“我々の目的”を確認しておこう。
科学と魔法を融合させた力は、“星の破局”や“崩壊”を止められる可能性がある。そのために、この星が“人災”によって滅びるのを食い止めなければならない。地球の科学力を高める方向に導いていく必要がある。
そのための順序としては——
・まず資金を集める。できるだけ多く。
・その資金で、平和の組織を作る。警察組織が適任だ。
・戦争や紛争を止める。
・人を増やす。教育する。科学者を育てる。
・研究施設を増やし、科学と魔法の融合を研究する。
・そして最終的には、星の破局を防ぐための技術を開発する。
今はその初期段階で、資金を集め、平和の組織を作っているところだ。次のステップは“人を増やす”ことだが、順序が前後しても問題ない。
勇者ギルド長から与えられたクエストの期間は、たったの五年。すでに一ヶ月が経過している。
何か、“破局を防ぐ知見”につながる成果が求められている。もちろん、星の破局を本当に止められるようになるには、おそらく千年はかかるだろう。しかし、まずは何か“見える成果”を手に入れる必要がある」
ここでコモンが話を引き継ぎ、資料を手にして説明を始めた。
「では、現在の進捗について報告する。途中で意見があれば、どんどん言ってくれ。
まず、当面の資金源は金塊の販売だ。菱紅商社を通じて、月間で約5億円を目標にしている。
さらに、有望な収益事業として“原子力発電所の廃炉事業”がある。プルトニウムを“錬成魔法”でミスリルに変換できるからな。原発の廃棄物が文字通り“宝の山”になる、有望なビジネスだ。
それともうひとつ、“細胞活性装置”をネットオークションに出品して販売する計画がある。これは貢献ポイントを使って入手する予定だ。これらによって、当面の活動資金は確保できる見通しだ」
そこへ、マーガレットが小さく手を挙げた。
「リーダー、先日テレビで見たんだけど、“ホー博士”っていう人がいるニャ。この人、難病だけどすごい科学者ニャんだ。未来の私からのメッセージで、仲間になる人って分かったニャ」
「えっ、そうなの?」
リリィが驚いたように反応する。
「それは絶対に会いに行かなきゃ。どこにいるの?」
「その番組、俺も観てた」
ジャックが頷く。
「ホー博士は“イギリス”って国にいる。難病で、医者も驚くレベルの状態だった」
「そうなのね。急いで会いに行きましょう。“細胞活性装置”も持っていってあげて。仲間になるなら、まず健康になってもらわないと」
一同はうなずき、異論はなかった。
「じゃあ、そういうことで、本日の定例会議はこれで終了とする」
ジャックがまとめた。
「簡単ね」
リリィが軽く微笑む。
「冒険者ギルド株式会社は、まだ始まったばかりだからな。これからが本番だ」