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第0話 プロローグ また星が崩壊した

勇者ギルド星のグループ、『虹色の風』のリーダー、リリィが宇宙を救うという壮大な物語を書いていこうと思います。

第0話 プロローグ また星が崩壊した


 ある宇宙、ある銀河の枝の一つ、ある星系の世界で、ある惑星が崩壊の危機にあった。


「ガルド、結界したブロックをどんどん転移陣に送って。遅れてるわよ!」


「ジャック、ゴーレムをもっと増やして! 人の誘導が遅いわ」


「コモン、ゴーレムにもっと指示を出して。分身だってもっとできるでしょ?」


「マーガレット、嫌がって暴れてるやつは眠らせなさい。時間がないわ」


「この星の崩壊まで、あと1時間。できるだけ多く救うわよ!」


 この星から、太陽のある隣の星系までわずか4光年。そこで起きた超新星爆発の衝撃波が、今まさに迫っていた。星の表面はすでに揺れ、内部構造が崩れ始めている。


 リリィたちは、住人と主要な動物たちを土地ごと「ブロック化」し、他の宇宙域へと転移させる作業を進めていた。勇者ギルドから発注された「10万人を救出せよ」というクエスト。今日がその最終日だ。


 リリィのパーティはすでに100万人を救出していたが、彼女の表情に満足の色はなかった。


(もっと強ければ、もっと救えたのに)


 避難した人々が今後も生き延びられるよう、星の残骸を集めて大地ブロックを再構築し、結界で大気を閉じ込める。人工太陽を設置し、天動説ベースで昼夜を再現する。


 こうした救助のノウハウは、太古からマニュアル化されていた。勇者ギルドは大量の魔法陣・魔石・ポーションを支給し、各パーティがアレンジを加えて活動している。救った民たちが1000年は自活できるよう、資源のある広い平面大地が用意されるのだ。


 やがて、超新星の衝撃波が到達。星の崩壊が始まった。


「さあ、引き上げるわよ! クエスト報告にギルドへ行くわ!」


 リリィが声を張り上げ、パーティは即座に転移陣で退避した。


 銀河の中心部にある「勇者ギルドの星」。


 リリィたちは拠点へ転移し、直ちにギルドの受付へクエスト完了を報告。約束された勇者ポイントが加算されたが、まだまだレベルアップには足りない。


 受付嬢から、ギルド長との面談を告げられた。


「さすが『虹色の風』。よくやってくれたな」


 ギルド長は竜種の血を引く存在であり、太古の勇者の家系。上層部にも竜種が多いとされている。


 リリィはうつむき気味に答える。

「ありがとうございます。でも……まだまだ力不足です」


 パーティの面々も晴れない表情だった。


「10倍の成果を上げたのに、浮かない顔だな」


「他のパーティを合わせても、救出できたのは全体の1%にも満たないと聞きました。悔しいです」


「そうか。でもな、救えた者たちは新しい星に移住できる。その数だけで文明を再建するには十分だ。魂も散らないよう保存されている」


「魂の保存? ああ、竜種のスキル、それなら、少し安心ですね」


「復興が進めば、いずれ輪廻の中で蘇るさ」


「そうですね。何千年か先には、また文明が」


「次のクエストまで休暇をとっていい。しっかり心と体を休めてくれ」


「ありがとうございます。100年ぶりに記憶のアーカイブを行おうと思います。最近、昔の記憶が干渉して思考効率が悪いので」


「アーカイブか、いいな。悩みは減るし、若返るからな」


「では、失礼します」


 ギルド星の拠点。リリィたちは次の休暇先を相談していた。


「リーダー、記憶アーカイブですか。いいですニャ。ついでに慰安旅行も行きましょうニャ」


「そうね。事件や事故に巻き込まれない平和な星がいいわ。マーガレット、予知でどこか見つけて」


「わかりました。でも、その条件は、フラグですニャ」


「え? じゃあ、美味しいものがある星にして」


「賛成!」とパーティ全員の目が輝いた。


「この星、なぜか気になるニャ。未来の私が行ってたみたいですニャ」


「それなら決まりね! ジャック、どう?」


「この宇宙は魔素ゼロのパラメーター世界。現地人は魔法が使えない。面白いと思うよ」


「コモン、資金は大丈夫?」


「金塊、たんまりありますから心配無用」


「ガルドは?」


「どこでもいいぞ」


「よし、決定! 旅行サイトに行くわよ!」


 彼らは旅行サイトのスキルを使い、地球――日本・東京へと転移した。


 旅行パックスキルにより、地球人の姿に擬態し、言語スキルも取得済み。マーガレットだけは猫耳と尻尾が完全には隠れていないが、限界らしい。


「きれいなところね。東京っていうのね。武器所持率が極端に低い場所だから、安全なのね。じゃ、皆それぞれ美味しいところ探してきて。私はここにいるわ」


 メンバーは四方に散っていく。リリィは全員の位置を把握しているので、迷子の心配はない。


「じゃあ、私は記憶アーカイブを始めるわ」


 リリィはベンチに座って瞑想を始めた。記憶の整理、圧縮、外部記憶化。不老種族にとって必須の作業だ。


 太陽フレアで崩れた星。


 巨大地震で沈む大陸。


 氷の彗星で死んだ星、大氷河期で凍りついた星。


 地磁気異常で大気が失われた星。


 大気が地面に吸収され干上がった星。


 ブラックホールの接近で引き裂かれた星。


 強大な魔法でも星そのものの崩壊は防げない。


「ここ百年で、たくさんの星の最後を見てきた。全て忘れたい。でも悔しさだけは忘れないわ。私が何とかする。それが、生涯の目的であり、パーティの使命」


アーカイブ中は、記憶が薄れていく。

リリィは歌詞も思い出せないから、風の音に倣って、静かにハミングを始めた。

以前から書き溜めていた物語を掲載していきます。

「お盆のような平面の大地を作り、結界で大気を閉じ込める。天空には人工太陽をセットする。その仕様は太陽が動く、天動説の世界である。」ペリーローダンシリーズを参考にしました。

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