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6.すみません。甘いお菓子も食べたいです


神殿からの依頼は、街の大聖堂で祈りを捧げて欲しいとのことだった。


聖女が祈りを捧げると、街全体に加護が宿り、災いを遠ざけてくれるとか。



「準備ができたら、さっさと行くぞ」


「はい!」


「ワカッタヨ!」



急な任務で一気に慌ただしくなる。アレコレ準備をしていると、


「聖堂で祈りを捧げたら、街を散策できるよう計らってやる。……外出する暇もなかっただろうからな。お前はあの眼鏡忘れずに持ってけよ!」


「えぇ……!?は、はい、どうも……」



もしかして……。聖女教育で頑張っていた私たちに気を遣って……街の散策を予定に入れてくれた……?


まさか。でも聖女宮でこもりっきりだったから、街を散策できるのは正直嬉しいし楽しみだ。ゴンちゃんにも沢山案内してあげたいところがある。


意図はわからないけど、ここは有難く厚意だと思って受け取っておこう。



ルンルンと支度をする私を、アレクシス殿下がぶっきら棒な顔でみつめていたのに、気が付かなかった──。




◆◆◆



大聖堂での聖女ポティとしての祈りは成功し、その後こっそりと街人の服装に着替えた。聖女の遺物である眼鏡をかけると、黒髪・黒目は、平凡な栗色の髪と瞳に変化する。メイドのノルンだとわからないように、帽子を深くかぶり、そばかすメイクも入念に行い、パッと見だとわからない変装が完成した。


ゴンちゃんも服装を変え、カツラを被り、聖女ポティの護衛から陽気な街人に変装している。


リドディア様やアレクシス殿下も、それぞれ変装しているが、高貴なイケメンオーラは隠しきれていない。


そんな怪しい?四人組で街を散策すると、やっぱり目立ってしまうわけで……。



「あの……別行動にしませんか?」


「はぁ?何でだ」


「だって、皆に注目されています。お二人はどう見ても高貴な方が変装して街を歩いてますって感じで……。私とゴンちゃんなら注目を浴びずに街に溶け込めるかと……」


「却下だ!四人が目立つならば、俺とお前、リドディアとゴンザレスで別れた方が無難だ。おい、別れるぞ」


「えぇぇぇぇ……!?な、なんでっ……!!」



まさかの、アレクシス殿下と二人きりでの街の散策になってしまった。まあ、ゴンちゃんは初めての街で大興奮で目立ってしまっているから、リドディア様がつきっきりになった方がいいのかもしれないけど……。


私とアレクシス殿下が二人になるなんて想定外だ。


気まずい。これ周りにはどう見えているのだろう。貴族の坊ちゃまとお付きのメイドが妥当か。


「そこのカップルのお二人~!安くしておくよ、これはどうだい?」


お店の人にそう言われ、目玉が飛び出そうになった。


「カ……カップル……っ!?」


アレクシス殿下と私が……!?

畏れ多すぎて……隣のアレクシス殿下の反応が怖い。お店のおじさん、いきなり消されたりしないよね?と心配になった。



「……二つくれ」


「まいどありーっ!!」



否定することなく、アレクシス殿下は串焼きを二つ買い、その内の一つを渡しに差し出した。


「毒見だ。食え」


「は……、はい」


ポカンとしながら、串焼きを受け取る。そうか、否定しても怪しいと印象付けてしまうのか。さすがは第二王子。お忍び慣れているのかもしれない。


無理矢理納得させて、私は串焼きを頬張った。



「おいしいっ!美味しいですよ、でん……」


「黙れ。バレたいのか、馬鹿が……」


殿下と言いかけて、思いっきり制された。危ない……と真っ青になる私を見て、アレクシス殿下は呆れた様にため息を吐いた。


「行くぞ……。何処が見たいんだ」


「は、はい……すみません。甘いお菓子も食べたいです」


気まずさもあるが、今度はいつ来られるかわからない街だ。甘いものは譲れないと、勇気をふりしぼってお願いしてみた。


「……あっちだ」


「は、はい!」



歩き出したアレクシス殿下を必死に追いかける。意外とこちらの希望もきいてくれるのか。いつもみたいに撥ね返されるかと思っていたから、すこし拍子抜けしつつ、少し嬉しくなる。


アレクシス殿下が連れて行ってくれたのは、おしゃれなカフェだった。




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