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15.あー、美しい、僕の天使




レオハルスト・ラスティーノ王弟殿下。

病弱で、今は王家の領地で療養中だといわれている。

王宮の廊下に飾れている肖像画の彼は、金髪碧眼の儚げな方だった。



王弟殿下に会うために、王妃様を先頭に、エド様と私、アレクシス殿下を担いだゴンちゃんと、リドディア様でチョコの背中に乗った。



「竜の背中に乗るなんて……」


気を失いそうな王妃様を、私とエド様でしっかりと支えた。


「チョコはお利口さんな竜なので、一瞬で王弟殿下のもとへと送ってくれます。ね、チョコ、お願いね!」


『ノルンの頼みなら、どこでも行くよ!ここなら前に空からみたことがある。一瞬で行けるよ』


「ありがとう、チョコ。一瞬で行けるそうです!」



チョコに地図で場所を告げると、行ったことがあるところらしい。寿命の無い竜族だから、元気だったときには世界のあらゆるところへ飛び立ったのだろうか?


大きなチョコの背中に乗って、私たちは光に包まれたのだった。




◆◆◆



「ワー、スゴイ!」



光の中を抜けて、目を開けると、一面が麦の穂で金色の輝く耕作地だった。自然豊かな丘の上の建物が、王弟殿下の療養先らしい。


ゴンちゃんは嬉しそうに景色を眺め、その瞬間にアレクシス殿下が落とされそうになって焦った事件はあったが、何とか無事に辿り着いた。


王妃様の案内で建物の前に降り立つと、チョコはあっという間に人間の姿になり、王妃様はまた気を失いそうになっていた。



「……わたくしが、レオハルスト殿下へ取り次ぐわ」


気を取り直した王妃様が、大きな屋敷のベルに手をかざした。



「レオハルスト殿下、突然の訪問をお許しください。ソフィティアです」


王妃様が名乗ると同時に、勢いよく門が開いた。


「ティアが来るなんてっ!一体どうしたんだい!?奇跡……っ、ああああ、本物だ、どうしよう、すごい美しい天使が僕の家の前にっ……」



金色の腰まである髪をなびかせ、緑色の瞳に整った容姿。どことなくアレクシス殿下に似ている男の人が興奮したように飛び出てきた。



……?

あれ、この人がまさか……病弱な……王弟殿下……?



「殿下。落ち着いてください。大事な話が……」


「殿下なんてよそよそしく呼ばないで。昔みたいに、ハルって呼んでよ、ティア。君の願いなら何でも叶えるよ。そうだ、王都も一瞬で破壊できる魔方陣を作り上げたんだ。邪魔な奴がいれば僕が消してあげるよ。君のためならなんでもする、愛しのティア」



想像以上に王弟殿下はやばい人だった。

人として何かがおかしい気が……むしろ、王妃様への愛がとんでもなく重たくて大きいような……。


「そんな物騒なことを言ってはいけません、殿下」


「ハルって言って。じゃないと、新しく考案したこの魔法で……」


「っ……、ハル様、離してください!そして話を聞いてください!」



王妃様が大きな声で王弟殿下をたしなめると、キョトンとした表情になり、そのままデレーッと王妃様を見つめてウキウキとし始めた。


深いため息を吐き、疲れた表情をした王妃様が振り返る。



「ごめんなさい」


王弟殿下との対話に心が折れてしまったらしい。

わかります、王弟殿下は何を言っても今は、王妃様しか目に入ってないですもんね!と同情してしまった。


「あー、美しい、僕の天使。って、なんだ、他にお客人も連れてきたのかい?」


「……お久しぶりです。叔父上。エドワルドです」


「やあ、エドワルド!君はあのクソ兄貴とは似て無くて可愛く育ったようだね!でもティアを苦しめるようなら消すから覚悟しておくれ」


「殿下、なんてことを!もうこれ以上敵意を振りまかないでくださいませっ、わたくしがどれだけ苦労して穏便に過ごそうと苦労しているかっ……」



どうしよう。

あれだけ高圧な態度を取っていた王妃様が、今では不憫に思えて仕方ない。むしろ、困っている姿がちょっと可愛らしいような……。


「だって、僕の世界は君だけいればいいんだ。王族も貴族連中も関係ない。君を奪った兄上も、その派閥も、すべて消し炭にしたいくらいだ。いや、今の僕ならそれができる。ティア、今からでも遅くない。僕と共に生きよう。愛している、心から」



「ああああああ、もう、どうしたらいいのよっ!!!わたくしは、王妃よ、そんなこと出来ないわ。困るの。迷惑なの。わたくしの心をこれ以上乱さないで頂戴。あなたは、アレクシスを助けてくればいいのっ!」


プンプンと怒り出した王妃様に、王弟殿下は気分を悪くするどころか、高揚したように口元を押さえ、



「かわいいっ……」



と悶絶したのだった。





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