14.全てはわたくしの所為。
「ま、まさか……。だって、わたくしは……」
「母上を害そうとしたのは、あなたではない。母上と腹の子ごと闇に葬ろうとした者から、あなたは母上を眠らせることで守ったのでは?眠りについた母の身辺警護はかなり強固なものになり、父の監視も常にある。あなたが敵対すると見せかけて、ずっと、母上を守っていた」
「ち、ちが……」
「黒幕は……王弟殿下ですね」
エド様の言葉に、王妃様は目を見開いた。
そして俯き、先ほどよりも強く震え出した。それが何よりの答えだった。
「王弟殿下は、王位を狙っていたのでは。しかし父が王位を継ぎ、その願いは果たされなかった。だからあなたとの間にアレクをもうけ、国王の子として育てさせ、王位につけ、実権を握ろうとしていたのではないですか?そのためには、母上がこれ以上子を産むのを阻止したかったはずだ」
「……っ、アレクシスの出生も調べたのね」
「ええ。アレクも自身で調べ、知っています。国王とは血は繋がらず、自分の父親は王弟殿下では……と打ち明けられました」
「そう……」
やはり、アレクシス殿下は……国王陛下の子どもでは無かった。
王妃様は虚ろな目でエド様を見つめ返した。
「違いますか……?」
「……そうよ、アレクシスは……彼の子よ。でも……殿下は……彼は、王位など興味はなかった。ただ……わたくしが彼を変えてしまったの……」
弱々しく言う王妃様は、やっとアレクシス殿下へと視線を向けた。
「彼は、わたくしを愛していると言った。だけど、わたくしは王の妃になるべく生まれ、育てられた身。彼の愛を受け入れずに国王へと嫁いだの。けれども、国王にはもう唯一愛する女性が居た。見向きもされずお飾りの王妃になった私を見て、彼は変わってしまったの」
王弟殿下は、嫁ぐ前から王妃様を愛していた?
けれども、王妃様は兄である国王へと嫁ぎ、幸せになれたのなら諦めもつくだろうけど、そうじゃなかった。
だとしたら──。
「彼は、私のために色々と手を尽くしてくれた。血筋に重きを置く王族派を味方に付け、彼との間に……アレクシスを授かり、国王の子と偽り第二王子に据えた。私の地位を築くために彼は無茶をし始めた。敵になる者は排除して、私とアレクシスが幸せになるようにと……」
苦しげに言う王妃様の瞳からは、耐えきれず涙が零れ落ちた。
「彼は優しい人だったのに。手を染めさせてしまったのはわたくし。全てはわたくしの所為。せめて最悪の形にならないよう手を回すしか……わたくしには出来なかった。彼のアンリエッタ妃の殺害計画を知り、魔女と契約し、魔力と引き換えにアンリエッタ妃を眠らせて、計画を諦めさせた。アレクシスの地位も盤石にすれば、これ以上犠牲は出ないと……アレクシスへも厳しく当たってしまった……」
みんなが、それぞれの想いのために動き、すれ違い、絡まっていった。
王弟殿下は王妃様とアレクシス殿下のために。
王妃様は王弟殿下とアレクシス殿下のために。
アレクシス殿下は──。
「王妃様は、アレクシス殿下を血筋だけの跡継ぎではなく、息子として愛していましたか?」
「……たった一人の息子ですもの。アレクシスには恨まれているでしょうけど」
ああ、アレクシス殿下に聞いて欲しい。
あんなにも、傷つき、愛されることを諦め、いい子を演じながら母親への思いを閉ざしてきた。
でも、アレクシス殿下はちゃんと愛されていたのだと、伝えてあげたい。
力なく言う王妃様は、眠り続けるアレクシス殿下を見てどう思ったのだろう。
アンリエッタ妃を眠らせれば、殺害されることはない。けれども、愛する人を眠らされたら、辛くて悲しくて、どうにかなってしまいそうになる。その気持ちを理解したのだろうか。
「彼に、アレクシスを助けて貰うようお願いするわ。全て終わったら、彼と共に、罪を償う。彼の元に……行きましょう」




