13.わたくしに会いたいなど、一体何の用かしら?
チョコのお陰で、一瞬で王都の直ぐ傍の王家所有の小高い丘まですぐに到着した。
「チョコ!ありがとう。ここまで連れてきてくれて!」
『いいよ、ノルンの頼みだから』
王都に竜が現れたら大騒ぎになるため、ここからはチョコは子どもの人型になってもらいローブを着て同行する。
私たちは、エド様の転移魔法で王宮へと移動することになった。
アレクシス殿下は相変わらす眠っており、ゴンちゃんが担いでくれている。光る魔方陣の中に足を踏み入れ、次の瞬間には、もう王宮の中だった。
「父上や母上には、竜達のことやアレクのことは報告済みだ。王妃殿下との面会も取り付けてくれてある」
王都に着く前から動いてくれていたらしいエド様のお陰で、私たちはすぐに王妃様と面会できることとなった。
◆◆◆
「急にわたくしに会いたいなど、一体何の用かしら?第一王子殿下に、聖女様まで」
王妃様はエド様に冷たい視線を向けていた。
「急な訪問申し訳ございません。火急、王妃殿下へお力をお借りしたいことがあり参りました。アレクシス殿下が魔力を使い果たし、昏睡状態です。どうか、王妃殿下の魔力をアレクシス殿下へ注いではいただけませんか」
エド様がそう言って膝を折り頭を下げた。ゴンちゃんに抱えられていたアレクシス殿下を見ても王妃様は顔色一つ変えなかった。
「なぜ、アレクシスがこのような目に?」
「わ、私の所為ですっ、私に魔力を分け与えて、アレクシス殿下は魔力を使い果たしてしまって……!」
「そう。てっきり、アンリエッタ妃のこともあって仕返しにアレクシスがこうなったと思ったわ」
「っ………!」
王妃様の言葉に、エド様も私も息を呑んだ。
『仕返し』という言葉がでるということは……やはり、王妃様がアンリエッタ妃を眠らせたのだろうか。
幼いアレクシス殿下を使って──。
「結論から言うとね、無理よ」
「え………?」
「わたくしは、もう魔力を失ってしまったから。アレクシスに渡せる魔力はないの」
淡々と言う王妃様は、眠っているアレクシス殿下のことを一度も視界に入れていない。魔力を失うなど、あるのだろうか。王妃殿下は──。
「第一王子殿下ならわかるのでしょう?わたくしが嘘をついていないと」
「……そうですね」
そんな……。
王妃様には魔力が無い……?
「……魔女へ渡してしまったの。私の魔力は全て。アンリエッタ妃を眠らせるためにね」
「……っ!!」
ついに王妃様は、アンリエッタ妃に危害を与えたのは自分だと言った。アンリエッタ妃が眠り続けたのは、魔女の魔法?
だから解毒も解呪も効かなかった。
魔女だったらしい母の薬だからこそ、魔女の魔法を解いたってことなのか。
「魔女に裏切られた今、わたくしにはもう、なんの利用価値も無い。アルステディール公爵家の聖物も消え、我が公爵家は初代聖女様からも見放された」
以前会った時の、気高いオーラはなく、萎れかけの花のように、王妃様は力なく宙を見つめた。
「アレクシスも……わたくしから離れた。もう、わたくしに出来ることはないわ。裁かれ、朽ち果てるしかね」
「そうですね。あなたが母上を眠らせた犯人だとしたら、その罪を償っていただくしかないでしょう。しかし、母上はあなたを裁くことを望んではいません」
「え……?まさか、わたくしは、あの女を眠らせたのよ……あの女にも陛下にも恨まれて……」
王妃様の冷たい瞳に、動揺の色が走る。
エド様はそんな王妃様を気にせず言葉を続けた。
「あなたは母上を手に掛けることもできた。しかし眠らせるだけに止めた。母のお腹の中の子も無事だ。あなたは……母上を守ろうとしたのではないですか?」
「…………っ!?」
ハッと息を呑む王妃様は、カタカタと震え出した。
敵対していたはずの、王妃様と側妃様。
そう見せかけていた……?
王妃様は──
「母上が言っていました。何度もあなたに救われたのだと」




